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エルフの森へようこそ  作者: やゃや
3章「ラビ-LA-DI・ラビ-LA-DA」
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エピローグ


 日付が変わって時刻は9:00、場所は朝の警察署。


「それではオルグレンさん、もう一度復唱をお願いします」


 わたしはエルフの国のロボポリスにいたずらし、マザーコンピューターに余計な負荷をかけました。

 心より反省し、これからはこの国に貢献する立派な市民として頑張ります。


「はいありがとう、この宣誓によって術式と契約は完了です、お疲れ様」


 ウサ耳さん送還の船から帰還して数時間後。

 あの船で好き勝手した俺は、当然その後無罪放免となる訳もなく、翌日の朝には警察に連行されることとなった。


 ただ、"無かったこと"になった密入国者を運ぶ、"存在しない"船での行動を罪に問うわけにもいかなかったようで……


「今回は、ロボポリスへの"いたずら"ということでこの程度で済みますが……次はないものと思ってください?」


 はい、すみません…… 


「それと非公式ではありますが、これから一か月の間は保護観察に近い状態となりますので、くれぐれもご注意くださいね?」


 もし、そこで問題を起こしたら……?


「ロボポリスの中の人として永久就職することになります」


 絶対に問題は起こしません!! 肝に銘じます!!!


「はい、いいお返事です、それではこれを持ちまして貴女は釈放です、ご自宅までお送りしますね」


 婦警さんが個室の出口のドアに手をかける。

 数秒、そのまま動かず何やら呟いていたが、やがてゆっくりとドアを開いた。

 ドアの先は警察署の廊下、ではなく、俺の住む孤児院の玄関に繋がっていた。


「はい、空間が繋がりましたよ、早くドアを通って下さい?次の犯罪者の方が控え室で待ってますので」


 はい! お世話になりました!


「もうここに来たらダメですよー」


 絶対にきません! 絶対に!!!


「はい、前回とは違っていいお返事です、それではさようなら」


 婦警さんに見送られてドアをくぐり、馴染みの孤児院に足を付ける。

 孤児院の玄関は、相変わらず"帰ってきた"ことを実感させる匂いに満ちている。


「エリちゃんエリちゃん!! お帰りお帰り!!! 大変だよ!!! ルナちゃんがちら見えでテレビでワイシャツで笑ってたの!!!」


 わかったわかった、クリス落ち着け、捲し立てるな、何を言ってるかわからないよ。


「あ、エリちゃんさんお帰りっす! 大変っすよ! テレビ! テレビ見て!!」


 テレビ?CMしか映ってないけど……?


「あー!! もう終わっちゃってるっす!!」

「ルナちゃんが映ってたんだよ!!! ちょこっとだけだったんだけど!!」

「なんか獣人の国との交渉がどうのこうのって奴で端っこの方にルナさんがいたんすよ!」


 へぇ昨日の今日でもうお姫様の仕事してるんだ……


「いやいや! 重要なのはそこじゃなくて!」

「ルナさん、昨日のあのYシャツ来てたんすよ! それも胸ポケットにあの兎さんが顔覗いてて!」


 え?と、いうことは……


「エロ本とチケットの受け渡し作戦はバッチリ成功したってことだよ!!」


 おお!……ってそんな作戦計画してたっけ?


「……あれ? 計画してなかったっすか?」


 いや、ほとんど勢いに任せた行き当たりばったりだったと思うけど……


「あれ? ミシェルさんから聞いてなかったすか?」

「あ!? ルーちゃんだめ! しーっ! しーっ!」

「あ、ああ! そっか! あの時はエリちゃんさんは……」


 おいちょっと待て! あの時ってまさか俺がいつの間にか樽に入ってた時か!!?

 やっぱりなんかの魔法使ってたな!?


「いや、違うんすよ! エリちゃんさんああいう無茶苦茶は絶対嫌がってグダグダになるからって……」

「ルーちゃん!! 全部しゃっべちゃってるよ!?」


 ほうほう……それはいいことを聞いた……


「おっはよー!! 遊びに来たわよーー!!」

「アリエルちゃんまた逮捕されたんですって? 元気してるー?」

「ああああ!! 最悪なタイミングでミシェルちゃんが来ちゃったよ!!!」


 そういうのは無しって前に言ったのにね! やらないって決めたのにね!!!


「あーいや違うんすよ! ミシェルさんもウチらの事を思っての事だったんすよ! 悪気はないんすよ! それにほら! 今回ミシェルさんが助けてくれなきゃウチら伝説のエロ本屋に行くのもあの船への潜入も……」


 それはそれ、これはこれ。

 というわけでちょっと悪戯してくるわ!!!


「ミシェルちゃーーーーん!!!!! 恩知らずがそっちに向かってるーーー!!!!」



 雪解け水がアスファルトを濡らす、3月下旬のエルフの国。

 季節は春。馬鹿が活発になる季節。



「あらあら、随分楽しい歓迎ね!」


 嘘だろ!? 完璧に死角から襲ったはずなのに!


「こういう悪戯でミシェルに勝つのは厳しいと思うわよー」

「とりゃあ!!」


 ば、馬鹿な!! 二重三重にしかけたトラップがこうも容易く……ッ!?


「そーれ倍返しよー」



 今日もまた、馬鹿の叫びが木霊する。

 難しいことはよくわからないが、確かに言えることが一つ。

 ここにいるのは皆、馬鹿ばかりだ。自分も含めて。


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