幕間6 ねのくに ③
幕間6 ねのくに ③
みんな辛いし、みんな悲しい。
そんなこと何百回言われたって、それで私がいい子になれる筈もない。
今日も、また言ってしまった。
味方面しないで。
救い主面しないで。
気持ち悪い。
そんなに私を大事にしているつもりなら
私の代わりに死んでよ。
そんな事を言われても、私の大事な人達は笑っている。
どうして?
どうせ、『あと僅かの辛抱』だから?
それが悲しいし、そんな風にしか考える自分が悲しい。
私がいなくなったら、この人達は泣くのだろうか。
悲しみを乗り越えて、今みたいに笑うのだろうか。
私のことは忘れてしまうのだろうか。
私はそれを悲しむ事さえないだろう。
きっと来年の春が来る前に。
だから、もっと酷い言葉を探して、優しい人達に投げつける。
怒ってほしいのか。
冷たくしてほしいのか。
それでもなお、優しく笑ってほしいのか。
自分でも分からないまま。
私があなた達を大好きなこと。
大事に思っていること。
どうすれば伝わるのか。
抱きしめられて、笑っていればそれで伝わるのか。
違う様な気がする。
でも、あなた達が私にした様に、私があなた達を愛する事はもう出来ない。
無数のチューブの先で、私の好きなリンゴジュースを少しだけ口に含ませようと持って来たあなた。
大丈夫、大丈夫と、怖くないよと囁いてくれるあなた。
それを伝える事は、出来ないままになりそうな気がする。
その先に、何もない。
私はとてもわがままで嫌な子だった。
そして皆からとても愛されていて、そして、皆を愛していた。
でも、もうすぐ静かな空白が全てを覆ってしまう。
どうか、どうか、もう一度
今度は、私からあなた達へ




