幕間2 予算審議会中継
幕間2 予算審議会中継
「平賀浩二君」
指名されて壇上に登った男は国土交通大臣だった。彼は、政権を握る与党「主権自由党」所属の政治家だ。
災害時の医療費国庫負担の改正案を審議中、救急活動の交通状況について質問され答えていた最中の大臣だったが、唐突にこんな話を始めた。
「――そこで皆さん、あまりご存じない方も多いかとは思われますが、最近ですね、死体が……死亡の確認された筈の方が、起き上がって活動されると、心停止し、呼吸もない、死体のままで、各方面でそういう報告が上がっているという事がありまして」
質問をしていた野党の議員も怪訝な顔を浮かべる。
議席のあちこちからざわめきが上がる。
「何だよその話、今の議題と関係あんのか?」
「というか、死んだのに動いているって、何だい」
ざわめきや野次に動揺する様子もなく大臣は話を続ける。
「その起き上がられた方には、生前と……と言うべきか、心停止前と同じ意識があり、ただ生命反応はないままで、これは一体どういう事なのかとなりまして――」
「てめえっ! 何喋ってやがんだ、ええごるぁああああああ!」
野次と呼ぶにはあまりにも殺気に満ちた声が、大臣の発言を遮った。同時に、声のあった方から数人の議員が大臣に向かって駆け出していた。
野党ではなく、大臣と同じ与党側の席からだった。他の席の与党議員も立ち上がり、こちらは、大臣に詰め寄ろうとした議員達に立ち塞がった。
壇上周辺では、与党議員同士での壮絶な揉み合いが始まっていた。
掴み合い、殴り合い蹴り合っている。壇上によじ登ろうとして投げ落とされた議員が宙を舞っている。
「35$%”$&%”&’&-bbyh!」
「232`**>`=>>*=`i@vi!」
「速記止めろおっ! 書かせんなあっ!」
「``{}??`??`?*?`*?P+P?+!」
「静粛に! 席へお戻りください!」
かつてと比べれば少なくなった野党議員達も、蚊帳の外からその騒ぎを呆然と見つめていた。
大臣が数人にガードされて降壇した後も、揉み合いは続いていた。大臣を追おうと議場出口に殺到する議員に別の議員達が詰め寄せる。
「審議を中断し、暫時休憩とします!」
議長の声。
映像はその直後に途切れ、テロップの付いた風景映像に切り替わった。
『国会中継は審議が始まり次第お伝えします』
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