第33話 四神獣
その頃、歳三は乾と連絡をとっていた。
サターンが動き出した事と、瑠璃に堂々と接触してきた事が原因だった。そう遠くない時期に対戦する事になると見たからだ。
「それで、俺たちは能力こそあるが武器がねえんだ。俺たちの刀はこっちに来てるって事はないだろ」
「はい、もともとサターンとの対戦は予想していなかった事ですから、皆さんの刀と槍はあちらの時代で眠ったままです。あなた方の父上は戦のない時代に送ったつもりだったので」
「だよな・・・」
「少し調べてみます。もしかしたら刀を呼び寄せる方法が有るかもしれませんので」
「伝手はあるのか」
「時空の神に尋ねてみます。私たちをこちらの時代に送った本人なら、もしかしたら」
「話せるのか」
「神は気まぐれですから、いつ接触できるか分かりかねますが何とかするつもりです」
「申し訳ないが、その件は任せる。悪いな本当は左之助に仕えるお前を俺が使ってしまっている」
「いえ」
刀さえ手に入れば何とかなるだろう。いや、何とかしなければならないんだ。今度こそ終わりにしたい。
悩んでも仕方がない、だがやれる事はやる。瑠璃だって自分の身を自分で守ろうと頑張っているのだから。
「あっちに飛ばされたり、こっちに飛ばされたり。一番苦労しているのは瑠璃なんだ。女の身でありながら抱えきれない能力と運命を背負わされているんだからな。今度こそ幸せにしてやりたい」
そんな時、外で気配がした。そっとドアを開け廊下を見ると、
左之助と総司の幻獣じゃねえか!なんで本人は居ねえであいつらたけで動いてるんだ?
すると目の前を朱雀が横切った。
それに刺激されたのか歳三の体が僅かに揺れた。
「おいっ、お前まで出る気かよ」
ズンっと一瞬軽くなった途端、歳三の背から青龍が現れ、お前も来いと言うように一度振り向き行ってしまった。
なんなんだ・・・
リビングに下りると瑠璃以外は揃っていた。勿論先ほど見かけた幻獣たちも一緒に。異様な光景だ。
「あ、歳三さんも来たんですか」
「どうなっているんだ。なんで幻獣まで出てきてるんだ」
「瑠璃ですよ」
「瑠璃がどうした」
「瑠璃さんが呼び出したようです」
「すまん、分かるように説明してくれ」
山崎がこれまでの経緯を歳三に説明する。瑠璃は自分たちの幻獣を操る事が出来るらしいと言う事を。
「歳三さんが難しい顔して通り過ぎて行ったあの時ですよ。そう言う話をしていたんです」
「あ?ああ、あの時か」
「で、俺らの幻獣は何か言いたい事でもあるのか?なんか不気味だな、こうやって改めて並んでるのを見ると」
朱雀(瑠璃を守らねばならない)
「誰だ!」
玄武(瑠璃を手籠めにさせる訳にはいかん)
白虎(瑠璃は大事な妹だからね)
青龍(サターンを葬らねばならない)
「こ、これは!?幻獣が喋っています」
山崎の細めな目が大きく開かれている。
他の3人も驚いてそれぞれの幻獣を見上げた。
「話せるのか!」
玄武(瑠璃にも言ったが我々は言葉を発することは出来ない。お前たちの脳と交信しているだけだ)
「瑠璃は何と言っていた」
斎藤が玄武の方を見て問いかけた。
玄武(瑠璃は我々に力を貸して欲しいと言った)
白虎(瑠璃の願いには勿論応えるつもり)
「そうか、助かる。俺たちにはサターンの術を解けない故」
玄武(しかし、瑠璃を守れてもサターンを倒すには我々の力だけでは不可能だが)
青龍(主が乾にその件を話している。暫し待て)
白虎(刀、何とかなるのかな)
朱雀(もう一度、聖剣を蘇らせる事が出来ればよいが)
もう一度言うが、此処には5人の男と4体の幻獣がサターンについて話しているのだ。これを誰かが見たらどう説明するのだろうか。
「ところで、何時までそうやって姿を現しているつもりだ。此処ではいいが、仕事中に出てきてりしねえだろうな」
青龍(大丈夫だ、我々もそれは心得ている)
白虎(仮に出てしまっても、普通の人間には見えないよ)
「僕たち以外には見えないの?なら安心だね」
「そういう問題じゃねえだろ」
「目の前をふわふわされていたんじゃ、仕事に差し支える」
朱雀(承知している。だが、瑠璃に危機が迫った際にはこちらの判断で動かせてもらう)
玄武(その際は了承願う)
「君たちは僕たちの守護神じゃないの。随分と瑠璃に入れ込んだね」
幻獣たち(瑠璃は特別なのだ!)
取り敢えず、瑠璃のサターン対策は当面は問題ないだろう。
あとは、どう倒すかだけに留まった。
取り敢えず幻獣さんが守ってくれるらしいので、一安心です。
2015.08.27誤字修正しました




