表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Time Trip to Another World ~東雲~  作者: 蒼穹の使者
第二章 もう一度
80/114

第15話 能力の変化

京都出張後から体調がいまいちだった

戻って直後は悪夢を見ていたし

最近はあの時ほどの夢は見なくなったけど

あの嫌な声だけが夢で聞こえる日もある

「ゆっくりと痛ぶってやる」

「必ずや俺の物にしてみせる」

そんな日は決まって体の何処かの調子悪い


今朝は胃が痛い

引っ越しの件とか、仕事の事で忙しいから

そのせいだと思いたい

私って意外とメンタルが弱いのかもしれない


「朝飯食わねえのか」

「うん、胃の調子がいまいちで」


そう言うと、歳三兄さんはすぐに眉間に皺を寄せた


「大丈夫ですよ、ちょっと痛いだけです」


兄たちは病気もしない強靭な身体の持主だ

おかしいな、私もみんなと同じ半神人はんじんびと

違いは性別くらいだと思っているんたけど


「不公平ですね、皆どうしてそんなに丈夫なんですか?男か女かの違いしかないのに・・・」


つい愚痴るように言ってしまう


「お前が弱いからじゃねえよ、優しいからだ」

「・・・?」

「俺達の分まで請け負ってしまってるんだろ」


そう言って、歳三兄さんは優しく笑った

自分は癒やしの能力者なのに自分の事となったら

どうも上手くいかない なぜだろう

以前はそんなことなかった気がする おかしい


「でも、最近おかしいんです。治癒と再生の能力を持っているのに、何故か自分の事となると上手くいかないんですよ。今朝も起きてすぐ掌を当ててみたんですけど、力が入らないというか」


「・・・あれだろ、昔もぶっ倒れた事があっただろ。その時は斎藤や俺たちがお前を助けた。お前は他人は治癒できるが、お前自身は俺たちじゃなきゃ駄目なんだ。なんでも自分で出来てしまったら、お前一人で生きなきゃなんねえぞ。世の中上手い具合に出来ているんだ。ほら、来い」


そう言うと、歳三兄さんは私をソファーに座らせて

痛む胃に掌を当ててきた

歳三兄さんの蒼の気がじわりと中に入ってくる

すると徐々に痛みは退いて行った


「あ、痛み止まりました」

「な?」


薄々気づいてはいたが、瑠璃の能力は以前と違っていた

体調を崩すことも増えてきた気がする

瑠璃は自身を含め全てにおいて再生と治癒が可能なはずだ

何かが狂いだしたとしか思えない

やはりサターンの転生が影響しているのだろうか


(早く奴の存在を確かめなきゃならねえな)


瑠璃に聞こえないよう、心の中でごちる歳三だった


一日無事に仕事も終わり、いつものように一さんとロビーで待ち合わせた


「お疲れ様です」

「ああ」

「お部屋の片づけ進んでいますか?」

「もともと荷物は少ないからな、なんとかなるだろう。そっちはどうだ」

「私の分は目途はついています。でも歳三兄さん書籍が多いから、どうなることやら」


引っ越し当日にバタバタしないよう願うばかりだ

いつものように駅の改札を抜けてホームに向かっていると

突然、男の人に声を掛けられた


「土方瑠璃さん?」

「・・・は、い。あっ、えっと京都でお会いした」

「はい。覚えてくださっていたんですね。光栄です」

「どうして此方こちらに?」

「此方に支店が出来ることになりまして、その手続きで」

「そうでしたか」


相変わらず冷たい空気を運んでくる人だと思った

首の回りがぞくりとする


「では、また」


軽く会釈をすると男は駅の外へ消えて行った


「瑠璃、さっきの者は」

「あっ、えっと。京都出張の時に社長と挨拶を交わした関西の貿易会社の人です」

「そうか」

「・・・はい」


うっ、また胃が痛くなってきた それに寒気まで

嫌な汗がこめかみを伝った


「瑠璃、どうした。顔色が悪いが」

「すみません、ちょっと気分が悪くて」


私はホームの空いたベンチに腰かけた

隣で一さんが背中を擦ってくれている 


「すまん、公共の面前では強い気を送ることが出来ん」

「大丈夫です。さっきより楽になりましたから」


こんな場所で一さんの朱の光が出たらパニックになる

私は自力で呼吸を整えた


「次の電車に、乗ります」

「分かった」


なんとか自宅マンションまで帰ることが出来た

一さんは歳三兄さんが戻るまで居てくれると言った


「すみません、仕事帰りに」

「気にするな。俺がしたくてしているだけだ」


横になった私に一さんは自らの気を流してくれた

一さんの気はぽかぽかして気持ちがいい

いつの間にか眠っていた


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ