第6話 京都出張
今回は京都へ1泊2日の旅行!ではなく出張です
新幹線に乗って2時間とちょっとで、京都に着いた
「うわぁ、懐かしいって言いたい所ですが外国人だらけですね」
「はははっ、京都は外国人が訪れたい場所No.1だ。しかし、我らがいた時代とは考えられんな。その辺を歩けば攘夷、攘夷と騒いでおったのだがな」
「おい、勇さんくれぐれもレセプションでは攘夷なんざ口にしないでくれよ?」
「大丈夫ですよ。私、攘夷って言葉は訳しませんから」
「ははははっ!!」
大久保のご機嫌な笑い声とともに京都出張が開幕した
レセプションは夕刻から始まる
先にホテルでチェックインを済ませた
「まだ時間があるから、観光してきてもいいぞ」
「いいんですか!あっ、でも」
社長がいいと言うならいいのかな?
でも、今夜の為に予習をすべきなのかもしれない
やっぱり止めると言おうとしたら
歳三兄さんが付き合えと言ってきた
「何処かに用でもあるんですか?」
「まあ。黙ってついて来いよ。勇さんまた後でな」
「ああ」
にこにこ笑顔の大久保さんに見送られ外に出た
歳三兄さんは直ぐにタクシーを拾うと
「青蓮院まで」と、告げた
タクシーを走らせること、約20分
お庭がとても綺麗でため息が出る
そして向かった先は展望台だった
「あっ、京の街だ!」
「よく見えるだろう?」
「はい!」
近代的な建物と古代より残る建物が散りばめられている
碁盤の目のような街の作りは変わっていない
目を閉じると、あの頃の京の街が目の前に広がる
「懐かしい」
「お前はどの辺で拾われたんだったか?」
「そう言えば知らないです。町外れだった記憶しか」
「斎藤がお前を背負って帰ってきたんだ、小さな子どもが捨て猫を拾って親に怒られやしないかって顔してな」
「捨て猫って」
「どこで拾ったって聞いたら、空から降ってきたって言いやがる。とうとう、斎藤もイカれちまったかと思ったぞ」
「ひどっ」
私たちの出会いは空から降ってきた私を一さんが拾った
(正確には平成から幕末に飛ばされたんだけど)
そして、新選組と共に屯所で過ごした
「そのうち斎藤と来いよ。私何処に落ちてたんですかって、その時はちゃんと聞いとけよ?」
歳三兄さんは笑いながら「戻るぞ」と言った
「歳三兄さん」
「ん?」
「ありがとうございます!」
「おう」
記憶のせいで落ち込んだり、期待したり
でも、もう大丈夫!
私たちは何処にいようと、私たちなんだからっ!
受付を済ませ会場に入ると、かなりの外国人がいた
大久保さんの知り合いの会社は全て挨拶をする事になっている
外国語が話せない割には、海外の企業を良く知っている
「勇さんはな感覚で仕事するんだ、相手から好かれやすい」
「へぇ、感覚で」
「その皺寄せが全部、俺に来るんだけどな」
ああ、なるほど。そう言われると昔もそうだった気がする
今回、上手く話がまとまれば
中国企業とも仕事が出来るかもしれない
よかった、多少怪しい部分はあったけど良しとしよう
そんな事を考えていた時
「瑠璃くん、ちょっといいかね」
大久保さんの隣には2名の男性が立っていた
「こちら関西地区で一番大きい貿易会社だ。挨拶をしておくといいと思ってな」
「初めまして、誠の土方と申します」
名刺を交換した、すると相手方の一人がこう言った
「土方瑠璃さん。一生忘れないような名前ですね」
その言葉と男の笑みに、体中が凍りつくような寒気を覚えた
なに、この人・・・怖い
大久保さんは気づかずに、もう一人の男性と雑談をしている
「貴女とお会いしたのは、今日が初めてではないのですよ」
「えっ」
「覚えていませんか?昨年の台風の日、確か駅前で」
「申し訳ございません。よく覚えて・・・はっ」
何処かで会ったか?と知らない男性に話しかけられて
私、逃げたんだ
「思い出していただけましたか」
「あの時は失礼いたしました」
「いえ気にしていませんよ、今日ここでお会いできましたしね」
男はあまり抑揚のない口調で、僅かに笑みを浮かべている
しかし彼から出ている気は恐ろしく冷たく重い
「では我々はこれで、失礼します」
大久保さんとその場を去ろうとした、その時
(神も面白い事を考えるものだな、お前は俺の物にする)
えっ!
振り返るとその男はもう居なかった
この声、どこかで・・・
微かに指が震えていた
「瑠璃、どうかしたか。顔が青いが」
「へっ、あ、大丈夫です。頭使いすぎた、だけです」
名刺を見ると、榊聖と書いてあった
榊聖、この男が今後彼らを振り回すのです。
この男の正体は・・・!?
そのうち明らかにされますので記憶に留めておいてくださいまし。
*早速誤字修正しました




