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Time Trip to Another World ~東雲~  作者: 蒼穹の使者
第二章 もう一度
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第5話 あなたの右側、君の左側

考えてみれば、いつまでも逃げ隠れするわけにはいかないし

一さんの事は今でも変わらず誰よりも慕っている 

総司にはハメられた感が否めないけれど

感謝すべきなんだろうな


向かいには左之兄と総司、その隣に眞子

左之兄の正面が一さん、そして私、えりの並びになった

面と向かうより隣の方がいいのかもしれない

一さんは左利きだから、肘もぶつからないし


(総司のばかっ、でもありがとう)


そう心で呟けば


(ばかは余計だけどね)


と返事が返ってきた


隣に一さんがいる、そう思うと胸がいっぱいになる

そう言えば昔もこういう並びだったな

利き手側を空けておく為と刀を露骨に見せない為

今思えば物騒な時代だった


「あ、犬の件助かりました。あの後旅行部からもお礼がありました」

「それは良かった。ああいう手続きは誰かが間に入るよりも、本人にさせたほうがいい。ペットとなれば尚更の事だ」

「そっか、そうですよね。言った、言わないって一番もめますからね」

「ああ、何かあれば遠慮なく聞いてくれ」

「はい、ありがとうございます」


俺に向けられた笑顔に心臓が跳ねた

いつもこうして右側には温もりがあったような気がする

それに落ち着くのだ

函館に居た頃は常に俺の左に橘がいた

彼女は俺とぶつからないよう箸だけ左に変えた

しかしそれを穏やかに受け入れることは出来なかったのだ

利き手側は誰も置きたくないと思うのは

あの時代を生きた所為だろうか



一さんはやっぱり私の事は覚えていないようだった

それでもいい。会えたもの!

やっとスタート地点に立てたんだもの!


「なぁんだ、もう仕事で絡んでたんだね」

「絡んだって・・・ちょっと教えてもらっただけだよ」

「で、はじめくんは瑠璃の事なんて呼ぶの。うち土方4人もいるし?」

「・・・そ、そうか。皆はどうしているんだ?」


斎藤はえりや眞子に話を振った


「えっと、私たちは土方さんが土方左之助さんで、土方くんが土方総司くん。彼女のことは瑠璃って呼んでいます。年下だから瑠璃でいいんじゃないですか?うちグローバルな会社だし」

「名前、で呼ぶのか?」

「だな、名前で呼ばねえと逆に混乱するぜ」

「そうか」


そう言って一さんが私の方を見た


っ・・・、そのタイミングで見ないでぇぇ、顔がっ


ボッ と音がしたように瑠璃は赤面した

それを見た斎藤も同じように、しかも耳まで赤く染めた


「っ、す、すまん」

「い、いえ」


左之助は片手で顔を覆っている

総司はにこにこ笑顔で二人を眺め

眞子は両手で口元を隠す


「どうしたの?ねえ、あれ瑠璃?顔っ・・・」


勘の鋭いえりは最後まで言わなかった たぶんバレたと思う

その後は再び他愛のない話で昼休みが終わった


昼休みに体力使ってどうするの!

歳三兄さんに呼ばれているのに

お手洗いで両頬をパンパン叩いて気合いを入れる


いざ、副社長室へ!!


「運輸部、土方瑠璃です」

「入れ」

「失礼します」


いつもの如く、通訳の話だった

パティーに大久保社長と副社長の歳三兄さんと参加する

今回は英語じゃなくて、中国語だった


「あぁ!京都じゃないですか!」

「そうだ、懐かしいだろ」


ん?和菓子の歴史とお茶・・・


「和菓子とお茶、ですか?」

「ああ、中国のある企業が和菓子に興味を持っていてな」

「へぇ。ちょっと勉強が必要ですね」

「ああ、頼むぞ。・・・おい」

「はい?」

「おまえ熱があるんじゃねえのか?顔が赤いぞ」


歳三兄さんはそう言うと、机の向こうから手を伸ばし

私の額に手の甲を当ててきた

すこぶる元気なのですが・・・あっ、まだ赤いの!?


「だ、大丈夫です。はい、問題ないです」

「・・・何かあったな」


そう言って腕組みをした歳三はニヤリと笑う


「!?、な、何にもないですよっ。大した事じゃ・・・あ」

「くくっ、隠せねえよなぁ。まあ聞くまでもないがな」

「えっ」

「ああいうやつだ慌てるんじゃねえ、ゆっくりやれよ」


そして瑠璃の頭をポンポンと2回撫でる

瑠璃は瞳をうるうるさせてコクリと頷いた


瑠璃が出て行くのを見送った歳三は


「手を貸してやりたいが、こればっかりはな」


瑠璃の顔を見ればだいたい想像がつく

言えるものなら今すぐにでも言ってやりたい

しかし斎藤が自ら思い出さない限り駄目なんだ


「瑠璃の事だ、そんな事したら臍を曲げちまうだろう」


歳三も面映おもばい気持ちで見守っているのだった

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