第4話 総司にハメられる
彼女からの問いに返答後、資料を添付しメールを送信した
土方が4人もいると皆混乱しているのではないか
想像しただけで顔が緩む自分がいた
それにしても皆タイプが異なる珍しい兄弟だな
彼女が総司に似ていないことを祈る
暫くすると、彼女から返信が来た
斎藤様
お疲れ様です。
先程はありがとうございました。
資料を旅行部に転送しお客様より検疫所にお問い合わせ
いただくように申し伝えました。
株式会社誠
運輸部運営課 旅客担当 土方瑠璃
MAKOTO LIMITED
Transport Department,Operator
RURI HIJIKATA
e-mail adress:[email protected]
社内メールもきちんと署名添付している事が微笑ましかった
「土方瑠璃か・・・る、り・・・!?」
瑠璃という響きは間違いなく俺の脳の中にあった
口にすると瞬く間に体中に痺れが走った
以前も似たような感覚に陥った事があった
俺は未だ彼女の顔を見たことがない
総司に連れられ運輸課に出向いたものの、彼女は不在だった
電話での声はあの心に響く声に似ているような気もする
「くっ、----」
心臓を誰かに掴まれたように、ズクンと疼いた
プルッ、プルッ 斎藤の内線が鳴る
「!?」
考え事をしていたため、肩をビクリとならす斎藤
「・・・はい、斎藤です」
「一くん?今日のお昼、社食で食べようよ。けっこう美味しいんだ。左之さんも来るから」
「ああ、分かった」
総司からだった、今日は在社しているらしい
俺は終日このデスクに向かい合うのが基本だ
週に2度決まった時間に税関へ行くくらいだった
そして、昼休みになった
全社員が来るわけではないだろうが
かなり混み合っていた
そんな中、こちらに向かって手を振る人物がいる
「はじめくーん、こっち、こっち」
総司と左之がすでに席を取っていたのだ
「すまない、待たせた」
「ここ、12時ちょっと前に来ないともう座れなくなるんだよね」
「さぼったのか」
「人聞きの悪いこと言わないでほしいな。これも営業の特権だよ」
「斎藤、久しぶりだな元気だったか」
「ああ、変わりない」
ふと席を見ると自分を入れてもあと3つ空いている
まだ他に誰か来るのだろうか
「早く買ってきなよ、僕待ってるから。左之さんいつものやつ」
「おお」
総司のニヤついた顔が気になって仕方がない
あの笑みは何か企んでいる時と同じだ
嫌な予感がしてならんが・・・
二人が行列に消えた頃
「こっち、こっち」
「総司ありがとう、あれ今日は6人なんだ」
「うん」
え・・・。そのニコニコ顔は何?
すごく嫌な予感がするんだけど
「ほら3人とも買ってきなよ、僕は左之さんに頼んであるから」
「土方くん、いつもありがとー」
「瑠璃、いこっ」
何か絶対に企んでいる、そういう顔するよね?
でも左之兄もいるから大丈夫よね、なんか怖い
席に戻ると総司は相変わらずな表情だった
「あ、もうちょっと待ってて。もう揃うから」
「総司、あんた何か企んではいないか?」
「お?そうなのか総司?」
「酷い言いようだね、いつものメンバー待ちなだけなんだけど」
「なんだ、じゃあ待ってようぜ」
左之の反応からすると大した事は起きなさそうだ
久しぶりの再会だ素直に受け入れるとしよう
「お待たせー」
「意外と早かったな」
「うん、はぁ。お腹空いたぁぁ・・・!?」
待っていたのは3人で、総司と左之兄とその向かいに一人
その人は静かに席を立ちゆっくりと振り向いた
「はじっ(一さん!?)、は、初めまして!」
不意を突かれた驚きに、かなりの大声でそう言っていた
「そっか、瑠璃はまだ挨拶してなかったんだよね。斎藤さんいつもこのメンバーなんですよ。ご一緒宜しくお願いします」
えりの素敵すぎる対応に口を開けてパクパクするだけの私
眞子は手で口元を押さえていた 笑っている
「ああ宜しく頼む」
私だけ動揺しているみたいで恥ずかしい
総司めぇ!!キリっと総司を睨むも効き目はない
分かってはいたけれど
左之兄は眉を下げ申し訳なさそうにしているってのに!
「なに突っ立てるの、早く座りなよ。外で待ってる人たちも居るんだからさ」
もし私が歳三兄さんだったら
ここで盛大な舌打ちを披露しただろう




