第64話 合宿終了です
私はようやく全ての記憶を取り戻した
この時代に来る直前に父である神に会った事も
父は申し訳なさそうに謝り、私が愛したものを一緒に送ると
そう言っていたような気がする
「いつか、函館に行ってみたいかも・・・」
「何その、かもって」
「まだちょっと怖いから」
「その怖い場所で一くんは働いてるんだけど」
総司の話によると、一さんは函館支店で通関の仕事をしている
3年が過ぎ、支店も軌道に乗ったという事で本社転勤が決まった
総司は時々連絡を取っているらしい
「瑠璃が連絡取りたいなら、教えるけど?」
「え・・・っと。遠慮します」
「なんで!」
1年近く、一さんの存在を知らなかったし
たぶん私の事は覚えていないと思う
「あんたは誰だ」って言われたら、分かっていても落ち込む
何から話せばいいのか、「はじめまして」なのか
「覚えていますか?」でもいいのか・・・
考えただけでソワソワして、なにも手に着かなくなりそう
「瑠璃は百面相するの上手だね」
「え!」
「赤くなったり、眉間に皺よせたり、眉下げたり。ぷっ、ふはは」
「もうっ!」
そう、今日は総司と猟をしている
あれから能力のコントロールは充分過ぎるほど上手くいっている
今日はお昼までで終わり
午後から地元住民と猟友会の人たちが御馳走してくれるらしい
「もう十分でしょ。戻ろう!」
白虎の背に仕留めた獣たちを乗せ、私たちは戻った
すごい便利だな、幻獣さん!
歳三兄さんたちもちょうど戻ってきていた
同じように左之兄の幻獣さんが背負って
これ、誰も居ない山の中だからいいけど
誰かに見られたら腰抜かすよ
「よし、着替えが終わったら行くぞ」
お待ちかねのお食事会です
「うわぁ、いい匂い!鍋ですか?」
「ああ、イノシシ鍋やけど味噌味やけん美味しいと思うよ」
地元のおばちゃんたちが作ってくれた
このイノシシやシカの肉は昨年取ったもので冷凍ものだ
「たくさん食べなよ?あんた痩せちょるけん」
気さくな人たちでほっとした
お肉は臭くないのかって恐る恐る口にしたけど
「美味しい!」
味噌とに生姜が利いていて体も温まる
「あんた達どっから来たん?日本語上手やねぇ。よかったぁ、私たち英語やら喋った事ないけん心配しちょったんよ」
「え!私たち全員日本人ですけど」
「へぇぇ!!あ、あれねハーフね」
「・・・ハーフ?(まあ、神と人間とのハーフではあるけれど)ですかね」
なんだかよく分からない返答をしてしまった
おばちゃんが言うのも仕方がない
特に左之兄は赤茶色の髪で瞳は琥珀色、ようは色素が薄いのです
普段はカラーコンタクト入れているみたいだけど
今回は持ってきていないらしい
他の兄も背は高いし、ちょっと瞳の色が日本人とは違うしね
私と山崎さんは日本人そのものなんだけど
「左之兄、外国人だと思われいますよ」
「ん、俺がか?はははっ」
自覚がないようです
「女の子一人で大変やったろ、どの人が彼氏ね」
「彼氏はいません。あそこの山崎さん以外は私の兄ですから」
「そげなこつね!!」 ← 驚いているようです
おばちゃんたち(婦人会)は男前の若者を久しぶりに見たと言い
お酒注いだり、食事を取り分けたりと大忙しだ
また、いつでもおいでと優しい言葉も掛けてくださった
自然に感謝をしながら、命の尊さを噛みしめながら
この合宿は幕を閉じたのです




