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Time Trip to Another World ~東雲~  作者: 蒼穹の使者
第一章 一さんに会いたい・・・
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第53話 大久保と瑠璃

翌朝出勤すると、えりと眞子が何かに釘づけになっていた


「おはようございます。朝から何を見てるんですか?」

「あっ!瑠璃、おはよう。見た?これ私たちが飲み会した近くの駅」


インターネットのニュースを指さされ、隣から覗き込んだ


”特急電車から女性を守ったヒーロー、姿を消す!!”


え!!これって、夕べのやつじゃ・・・


「瑠璃たちと別れた後の事故みたいなんだけど、見なかった?」

「ううん、み、見てないよ」

「なんかねツイッターとかに上がってたんだけど、写真全部ぶれてるの。めちゃくちゃ動きが速くて撮れなかったって人もいて、凄いよね。人間じゃないみたい」


もうニュースになってる・・・

しかも写真を撮ろうとしていた人がいたなんて

世の中、誰でも簡単にSNSに投稿したり情報を売り買いできる

しかも拡散が恐ろしく早い

歳三兄さんの心配していた事はこういう事なんだと、実感した


少し動揺はしたものの、変わりなく仕事をする

そんな自分にけっこう強くなったなと自惚れてみる


一瞬湧いたあの事件も午後になれば

新しいニュースに塗り替えられた

こういう移り変わりの早さも現代社会なのだと感じる

私と歳三兄さんが天に放った龍を見て

竜神様だと拝んだ伏見の人たちは純粋だったんだなぁ


少し残業をして会社のロビーを出ようとした時

外出先から戻った歳三兄さんと会った 

隣には社長の大久保さん


「今帰りか」

「はい、キリの良い所まで終わらせたかったので」

「それはご苦労だったね!どうだ、今から一緒に食事でもしないか」

「あんた家はいいのか」

「ん?ああ、今日は家内たちは出かけていてな」


社長と副社長という2大トップとの夕食を

他の社員が聞いたら何と言うだろうか


「では、私たちも負けない様に美味しいものを食べに行きましょう」

「まったく、おまえは呑気でいいな」


そんな私たちを大久保さんは温かい笑顔で

うん、うんと頷いて見ていた

相変わらず忙しい歳三兄さんは時々、スマホを持って外に出る

落ち着かない人だなぁ


「すまないね、歳にばかり負担を掛けてしまって」

「いいんですよ、歳三兄さんは暇だと死んでしまいます。性分なんですから」

「ははは、総司と同じことを言うんだな」

「え?・・・兄妹ですから」

「双子だったのに、今は兄と妹か、不思議で仕方がない」

「そうですよね。今となってはどっちが正解なのか分かりません。でも兄妹として、また出会う事が出来て嬉しいです」


そう言って瑠璃は大久保に満面の笑みを見せた

大久保の単純な疑問にいつも癒されている


「最近はどうだね。歳から話を聞いたが、昨日は大変だったね」

「いえ。でも少し考えて行動しないと、こちらの時代では大事件になりかねません」

「そうだな。何かあればいつでも力になる、遠慮しないで言いたまえ」

「はい、ありがとうございます」


大久保は瑠璃の変わらない笑顔と

今を生きていく覚悟を感じ取っていた

あの時代でも慣れるのに苦労をしただろうに

この時代でも多くの葛藤があることだろう


「斎藤くんに、早く会わせてやりたいのだが。なかなか、な」

「そんな大久保さんが気に病む事ではありません。会えるか、会えないかは運命ですから。私はそれを受け入れます。それに、一さんはいつも私の此処にいますから」


そっと胸を押さえながら笑顔でそう返す

斎藤はいつも自分の心の中に居ると

だから大丈夫だと言っている


「そうか」


大久保はその一言しか返せなかった

なぜならば、彼女はまだ斎藤の存在を知らない

本当は4月の人事で斎藤は戻ってくると言うつもりだった


だが、今はまだ言う時期ではないのかもしれない

開きかけた口を再び閉じた

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