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Time Trip to Another World ~東雲~  作者: 蒼穹の使者
第一章 一さんに会いたい・・・
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第51話 覚醒した能力

左之兄が女の人を助ける為に、飛び込んだ

激しいブレーキ音がしたけど止まらなかった


「嫌ぁぁ!左之兄ぃ!!」


私は夢中で叫んだ、そして走った

ホームの端から飛び降りて、反対の線路を走る


何処っ!お願いっ、生きていて!


たくさんの人が線路を見下ろしていた

緊急停止ボタンを押す人

手で口を押さえて、座り込む人

駅員が走ってくる

でも、全てがスローモーションに見えた


「左之兄ぃ!!」


線路の真ん中に人の塊が見えた


「左之兄!」

「うっ、くっ…瑠璃っ」

「はぁ、はぁ、左之兄」


私はだだ、兄の名前を呼ぶ事しか出来なかった


「俺は大丈夫だ、この女を先に上げる」


左之助は若い女を抱え、ホームに上げた

気絶しているようだったが、外傷は見当たらなかった


瑠璃は立ったまま動けずにいた

驚きと恐怖と安堵で精神がぐちゃぐちゃだった


「瑠璃、取り敢えずここを出るぞ」


左之助は瑠璃の腕を取ると、高く跳躍し

ホームから逃げるように去った

駅を駆け抜け、人の少ない通りを走り公園に辿り着いた


「大丈夫か?」

「あっ、うっ、うわぁぁ!」


言葉が上手く出ない瑠璃は左之助に飛びついた

全身を震わせて、泣いている

左之助の背に腕を回し、シャツを強く握りしめて


「瑠璃、ごめんな。驚かせた、俺は大丈夫だ生きている」


イヤイヤと首を横に振り、怖かったと訴えている

左之助は大丈夫だと瑠璃の体を強く抱きしめ返した


どれくらい、そうしていたのか

耳に左之助の規則正しい心音が聞こえてきた


ドクン、ドクン、ドクン、


瑠璃はゆっくりと腕を外し、左之助の顔を見た

泣きそうな顔で自分を見つめる兄がいる


「瑠璃」

「・・・左之、兄ぃ」

「悪かった、無茶しちまった」

「私っ、怖かった。左之兄がもし、もしっ」

「大丈夫だ、死なない。俺は死んだりしない」


瑠璃は、「うん」と一言だけ返した

ふと左之助の腕を見ると、僅かに傷があった

瑠璃は無言で左之助の腕を確かめる

右手を添えて、目を閉じた

黄金色の淡い光がふわりと広がり、腕を包み込む


「折れてる」

「えっ」

「動かないで下さい」


温かい物がじんわりと、傷口に染み込んで行く

断裂した細胞を再生し、骨を

瑠璃の額から汗がぽたりと落ちた


「終わりました。ちょっと久しぶりだったので、呼吸を上手くコントロール出来なっ・・・」


瑠璃はそのまま左之助に寄りかかるように倒れ込んだ


「瑠璃!」


左之助は瑠璃を抱えたまま歳三に電話をかけた


「兄貴、悪いが山崎の電話番号を教えてくれ」

「何があった」

「説明は後でする、瑠璃が倒れた」


歳三は直ぐに山崎に連絡を入れると

会社の医療部にあるクリニックを開けた


ーーーーーーーーーー


「かなり体力を消耗していますが、その他に異常はありません」

「そうか、よかった」

「おい、左之助。いったい何があったんだ」


左之助はさっき起こった事を二人に話した

歳三は激しく不快感を表す


「ばか野郎!無茶するんじゃねえ!お前に何かあったら、こいつも自分を責めて生きていけなくなるだろぅ!」


「それは悪かったと思ってるよ。けどよ、頭より体が先に動いたんだ。止められなかったんだよ・・・」

「・・・」

「再び覚醒したんですね。瑠璃さんも治癒能力を躊躇なく使ったようですし、まだコントロールが出来ていないようですが」

「覚醒?あの能力は消えてねえのか」

「無意識に使っちまったって事か」

「はい」


ちょっとした事がきっかけで能力が出てしまう

脳ではなく身体が覚えているからだ


「まずいな」

「何がまずいんだ」

「そんなもん誰かに見られたらどうなる」

「・・・大騒ぎ、じゃ済まねえよな」


特殊な能力を見られたらきっと騒ぎが起こる

マスコミに取り上げられ、追い立てられ世間の晒し者になる

好機な目で見られ、恐れられ

自分たちは社会の敵と見なされるかもしれない


「総司を呼べ」


歳三は左之助と瑠璃に起きた事を総司に話す


「そんな事があったの。この時代は平和だから、そうしょっちゅう能力が出る事は無いと思うけど、今日見たいな事は無いとは言えないよね」

「ああ、出来るだけ抑えるしかねえ」

「コントロール出来るようにならないと、抑えるものも抑えられないと思うんだけど」

「だよな・・」


この国を守る為に命懸けで能力を使ってきたのに

この時代では能力を隠さなければならない


「ちっ、厄介なもん授けやがって」


歳三はここ一番の皺を眉間に寄せた

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