第50話 友達の幸せは私の幸せ
永倉さんは律儀な人だ
本当にお礼だと言って御馳走してくれるらしい
しかも、その日のお昼休みに言われた
「え、今日ですか?・・・たぶん大丈夫だと思います。兄にひと言言えば」
「兄って、左之も来るからその必要だねえだろ」
「え?ああ、違います。私、歳三兄さんと一緒に住んでいるので」
「げっ、まじか!」
「その”げっ”って、聞いたら怒りますよ?」
「それにしても、あの人と住んでるってすげえな」
「いや昔はみんな一緒にっ・・・(住んでいたけどね)」
「瑠璃いいな、永倉さんの奢りなんだ」
「えりちゃんも来るか?女の子が増えるのは大歓迎だ」
と言う流れで、えりも参加が決定 めちゃくちゃ嬉しそうだ
だったら眞子もと私が言うと、快く承諾してくれた
歳三兄さんにLINEで今夜の事を伝えたら
「たらふく食って来い」と返事が来た
午後もそつなく仕事をこなし、定時での退社が成功
駅の近くの居酒屋だったけど、とってもお洒落
「永倉さんよく知ってましたね。勝手なイメージだけどもっと居酒屋って感じのお店かと思っていました。女性の心、鷲掴みですよっ」
「そうかぁ、いや照れちまうぜ」
とてもご機嫌で照れ隠しか頭をガシガシ掻いていた
それを見ていた、えりの顔が赤い 本当に好きなんだ・・・
左之兄、まさかの敗北
私は左之兄に心の声でこう伝えた
(えり、永倉さんが好きみたいです)
(まじかっ!)
左之兄の驚いた顔、そうだよね一般的には左之兄がもてるんだけど
えりは永倉さんの男気とか底なしの明るさとかに惚れたんだよね
そして、少し遅れて眞子が合流した
驚いた事に藤堂くんも一緒だった
「悪りぃ、遅くなって」
「あれっ、なんで一緒?」
「駅前で偶然会ったの、声かけたら目的地が一緒だったの」
「へぇ、すごい偶然」
左之兄が私にこう言ってきた
(もしかして眞子ちゃん、大助のこと気に入ってるんじゃねえか)
(なんで、聞いたことないけど)
(そうか?ま、見てろよ。間違いねえぞ)
気付けば、この空間は合コンのようにテンションが高くなっている
私と左之兄は蚊帳の外 なので飲み食べに集中した
もうお腹がいっぱいだったのと、ちょっと酔っぱらっていた所為もあり
ちょっかい出したくなって
「ねえ、みんな気が合うみたいだから連絡先交換したら?また集まれるように」
「それいいな。俺の番号は・・・」
「よし、次は俺のだ」
いいなぁ、すごく楽しそう 見ているだけで幸せになる
だからもっと、ちょっかい出したくなる
「ねえ、私のは聞いてくれないの?・・・寂しいなぁ」
「あっ、悪い!左之や総司がいるから、つい聞きそびれちまって」
「なんだよ新八、俺らのせいかよ」
「ふはは、嘘、嘘。私に用がある時は兄たちに連絡くれれば直ぐだから」
「ってか左之さん、なんで新一さんが新八さんなんだよ」
「あ?何となくだ」
「はっ?」
「そのうち分かるって。因みにお前は大助じゃなくて平助だな」
そんな古臭い名前は嫌だと喚く藤堂くん
左之兄もえりちゃんたち前にして、よくもまあ大胆に
これまた良く出来た話だけれど
えりと永倉さん、眞子と藤堂くんの帰る方向が一緒だった
「見えなくなったら手とか繋いでそう」
「ありえる」
私は左之兄と並んで駅に向かった
「良かったですね。はぁ、とっても幸せな気分です」
「ああ、俺たちも腹一杯、ただ飯食ったしな」
「はいっ」
「おまえ本当に嬉しそうだな」
「だって、大好きな友達の笑顔がキラキラしていたから」
「お前はこっちでもそういう役割なんだな」
「え?」
「何でもねえよ」
他人の事で本当に嬉しそうに笑う瑠璃
特別な能力を使う事のないこの平和な時代でも
瑠璃はこうして皆を温かい気持ちにさせることが出来る
「早く、斎藤に会わせてやりてえな」
左之助は聞こえなように小さな声で呟いた
「左之兄!あれっ!」
「ん? っ!?」
駅のホームを覚束ない足取りで歩く若い女性
白線の内側に入ったり、出たり
その時、フォーン! と列車が通過する合図が鳴った
音に驚いたのか、その女性がホームから
落ちた!!
「危ねぇっ!!」
隣にいた左之兄が線路に飛び込む
「左之っ、兄ぃー!!」
ギィギギギギ、キイー 激しいブレーキ音
線路からは火花が散る
無情にも列車は、ホームを通過した
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