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Time Trip to Another World ~東雲~  作者: 蒼穹の使者
第一章 一さんに会いたい・・・
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第47話 社会人剣道大会ーお断りしましたー

私の怒りが届いたのかは分からないけれど

試合は真面目に真剣に行われた

言うまでもなく、総司が圧倒的に優勢

でも甲斐陸曹も押されながらも、一撃はなんとか躱していた


そして、「一本!」


総司の面が甲斐陸曹に見事に決まった


本当は総司が勝った事で、胸をなでおろすべきなのだろう

でも心のもやもやは取れなかった

私の意思はそこにはなく

勝手に二人が勝負に持ち込んだだけ

勝とうが負けようが私の心は決まっている 

だから・・・


「瑠璃、どこに行くの?」

「ごめん、すぐ戻って来るからタオル総司に渡しておいて」


えりにそう言い残し、気づいたら私は駆け出していた


人に好きだと伝えることはとても勇気がいること

甲斐陸曹は曇のない真っ直ぐな気持ちで私に伝えてくれた

総司が勝った事で、それを私の返事にしてはいけない

彼の気持ちに逃げたり、隠れたり

誰かに任せたままではいけない

自分の気持ちは自分で伝えないと


体育館から出て行く甲斐陸曹を見つけた


「甲斐さん!」

「瑠璃さん?どうして此処に」


彼の中では負けたことで終わっていたのかもしれない

不思議そうに私の顔を見ている


「あの、私は一度も自分の気持ちを言っていなかったので、聞いて頂けますか?」


「はい、聞かせてください」


爽やかな笑顔で甲斐陸曹は返事をした

その笑みから彼の誠実さや

他人を思いやる心が見えた気がした


「私は甲斐さんのお気持ちにお答えする事は出来ません。あなたがどんなに強くなってもです。私にはずっと好きな人がいます」

「その人が瑠璃さんの心に居る限りは無理と言う事ですね」

「その人が私の心の中からいなくなる事はありません。例えその人と結ばれなくても・・・」

「結ばれなくても、ですか」

「はい、結ばれなくてもです。その人以外は私の心に入れない」


何が起きても変わる事はないと伝えたかった

伝わっただろうか 

私は一さん以外を愛する事はないと


「分かりました。本当は分かりたくないのですが、貴方の答えを受け入れます」

「ありがとうございます」

「俺の信念は屈しない事です。自衛官ですからこの国を守る為にもそれは絶対です。でも、時には線を引くことも必要なのでしょう。ここから先は二度と踏み入れないと」


そう言って、甲斐陸曹は笑いながら私の目の前で線を引いて見せた

そして一歩後ろに下がった


「俺、初めてですよ。同じ女性から二度も大声で怒鳴られたのは。一生忘れません」


軽く頭を下げた後、笑顔で敬礼をし颯爽と去った甲斐陸曹

私はその後ろ姿が見えなくなるまで見送った



「おい、総司。おまえ瑠璃を試しただろ」

「左之さん、人聞きの悪いこと言わないでよ。僕は瑠璃の気持ちを後押ししただけ」

「次は俺とだな。手は抜かねえぞ、いい加減万年三位から脱したいからな」


20代の部の優勝は今回初めて左之兄が勝ち取った

総司は私にずっと文句を言ってくる

僕の知らない癖を左之さんに教えたって

準優勝は全然嬉しくないって子供みたいにいじけた総司

30代は圧倒的な力差で歳三兄さんが優勝した


「もう、いじけないでよ。美味しいご飯作るから機嫌治してよ」

「ご飯だけじゃ治らないよ」

「じゃぁ、どうしたらいいんですか」

「今夜は僕のうちに泊まりに来て、至れり尽くせりお世話してくれたら許すよ」

「てめぇ、なんで瑠璃がお前ん家に行かなきゃならねえんだ。お前は負けたんだろ、負けたやつが良い思いをするって可笑しな話だろうが」

「歳三さんには関係ないでしょ」

「関係あるんだよっ。俺はこいつの保護者でもあるんだ」

「兄貴それは違うだろ、瑠璃はもう大人だ。保護者はいらねえだろ、なあ瑠璃」

「なんだとっ」


始まったよ、私は子供でもないし家政婦でもないですからね

大の大人が何の言い合いをしているのか呆れます


「瑠璃、お兄さんたち・・・」

「放っておきましょう」

「でも」

「じゃあさ、二人の家に兄たちを振り分けるから面倒見てあげてよ」


二人はいろいろ想像したんだと思う

顔を真っ赤にして今日三度目のフリーズ状態


あの人たち存在そのものが、女たらしだよなぁ

と莫迦なことを考えながら、撤収準備をしたのです


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