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Time Trip to Another World ~東雲~  作者: 蒼穹の使者
第一章 一さんに会いたい・・・
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第44話 玄武、白虎の目覚め

相変わらず予定のない週末は道場に通っていた

今日は総司が来ていた

珍しく指導ではなく、自身の鍛錬で


「ねえ、瑠璃。大会出ないの?」

「大会?」

「前に言ったでしょ。全国社会人剣道大会」

「出ませんよ」

「なんで、瑠璃が出たら絶対に優勝出来るのに」

「うーん、そう言うのは苦手だから」

「勿体ないよ」

「ふふ、大久保さんと同じこと言ってる」


総司と左之兄は出なくてはならないらしい

年齢ごとに分かれていて、二人は20代の部だ

歳三兄さんは30代の部に出るらしい


「なんか意外です、みんな真面目に試合するんですね」

「勇さんの顔が掛かってるからね」

「なるほど」


ちなみに、ここ2年は総司が優勝しているらしい

歳三兄さんは仕事の都合で出たり出なかったり

決勝はいつも兄弟対決になる事で有名だとか


「決勝はまさか歳三兄さんと?」

「うん、今年からは30代の部だからね。よかったぁ、あの人の剣はやり難いんだよね、ま、試合では僕の方が上だけど」

「なんかわかる気がします。歳三兄さんは実戦で力を発揮するタイプだったから」

「そういう事」

「左之兄には不利ですね。本職は槍だから」

「そうだよね、だから万年三位止まり」


とは言え、普通の剣士より強いのです

お分かりと思いますが、1〜3位は土方家で独占なのです


「可哀想ですね」

「何が」

「一般の社会人が。だって私たちって、ハーフだから」

「ははっ、イイねそのハーフって言い方」


神と人間のハーフだから強いんだよね

みなさん、ごめんなさい


一さんがいたら試合はどうなっていたのだろうか

試合形式でも強い筈だから総司にはいいライバルかな


「一くんがいたら、僕の優勝は怪しいかもね〜」

「えっ!・・・今、心読みましたね」

「ははっ。瑠璃は相変わらずだよね、顔に書いてあるから読む必要ないんだよ」

「もぅ、嘘ばっかりぃ」


最近は一さんの事を思っても悲しくない

一さんはきっと元気にしている 会える、そう思った


そんな事を話していると、万年三位の左之兄が来た


「お前らも来てたのか」

「左之兄も試合に備えて鍛錬ですか?」

「まあ、そこそこ体を慣らしとかないとな。気を抜いたら総司とする前にやられちまう。けっこう強いんだぜこの辺の奴らも」


何度も見てきた筈なのに、現代の剣道着姿の二人は恰好いい

えりたちが見たら卒倒するかもしれない

これだけでも妹としては誇らしい


「左之兄、総司と打合いしてみて下さい。私が左之兄を勝たせてあげすからっ」

「どうやって勝たせてくれるんだ」

「いいから、心の耳を澄ませておいてください」


そして二人の立会が始まった


総司と左之兄はもともと流派は異なる

左之兄が同じ道場に通い始めて、天然理心流をかじった

槍を使うせいか少しだけ間合が遠い

勿論、一般の剣士たちには対しては影響はないけれど

相手が総司だとかなり不利になる

総司が得意の三段突きをするのに、丁度いい距離だから


ほら、左之兄が一歩下がった

槍ならあの距離がベストなんだろうけどね


(左之兄っ!下がっちゃ駄目です。詰めてください)

(!?)

(ほらっ)

(分かった)


あの大きな体が一歩前に出ただけでも威圧感がある

攻めに入っていた総司は無意識に一歩下がる

ほら、攻めだったのに受け身になった


(左之兄、そのまま!総司が竹刀を握り直したら、面か突き)


左之助は瑠璃が言うままに攻め立て

総司の竹刀を左に流し、面を打った


「一本!」


「左之兄!やったね、総司に勝ったぁ!」

「おお!久々にまともに勝ったな」

「ちょっと!瑠璃、左之さんに何か言ってたでしょ?」


ううん、とすかさず首を横に振る

でも笑いを堪えきれなくて 


「ぷっ。ふははっ」


総司のあんな必死な顔、初めて見たかもしれない

負ける事が大嫌いだもんね


「瑠璃、覚えておきなよ」

「ふふっ、ごめん。でもこれで平等だと思うよ?左之兄は槍と同じ感覚でやってたから、それを刀用に修正しただけ。だから、あれが左之兄の実力でもあるんだよ?」

「なるほどな、ありがとな」


左之助は瑠璃の頭をよしよしと撫でる

不満そうな総司だったが、逆に火がついたようだ


「瑠璃、なんで僕の弱点知ってるの?」

「ん?・・・秘密!」


兄たち相手にかなりしごかれた経験をもつ瑠璃は

それぞれの癖や弱い所は知っている

だからといって、自分が勝てる訳ではない


「もしかして、根に持ってるの」

「え?」

「三人で瑠璃をしごいた事」

「覚えてるの」

「歳三兄さんが目覚めたのに、僕たちが目覚めないわけないでしょ」


瑠璃は総司と左之助の瞳を覗き込む

白い炎の中に白虎が、濃紺の気を放つ玄武が見えた


「本当だ」


あの日、瑠璃が「一さんに会いたいです!」と叫んだ声が

二人にも届いていたのだ


「瑠璃の気はでかいからな、目が醒めた」

「一くんにも届いているから、頑張りなよ」

「はい!」


みんなが、一さんは此方に居ると言ってくれた

だからそう信じることにした

いつか会える、だからその日までもっと強くなる


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