第38話 兄の名誉の為に
あの新入社員研修以来、部署を越えた同期との仲が深まった
旅行部からの団体名簿や建築部からの輸出資料など
メールだったり、書類を持って来たり行ったりと
お互いの知識をもって支え合っている
ただ、その度に彼らは
事あるごとに瑠璃姉さんを連発する
この間、建設部からの私宛のメールが
歳三兄さんから転送されて来て驚いた
そうメールアドレスを間違えていたんです
基本的に個人のアドレスは 姓@makoto.co.jp
えりは結城だから yuki@〜
同じ姓の人もいるのでその場合は名前の一部を入れて区別をしているんです
因みに、私はru.hijikata@
左之兄はsa.hijikata@ 総司はsou.hijikata@
なのでhijikata@は副社長の歳三兄さんのです
どうして歳三兄さんが私宛のメールだと分かったのか
それは、〜瑠璃姉さんお疲れ様です〜から始まっていたから
「だぁぁ、また間違えてるし。嫌だぁ」
「どうしたの?何があった」
「えり、私宛のメールが副社長に行ってて、また転送されてきた」
「げっ、マジで!」
「その人誰?命知らずだわ」
「命知らずって、さすがに命は取らないよ」
泣く子も黙る副社長らしいけど
「ねえ、そんなに副社長って怖いの?」
「あんたには分からないのよ、副社長の迫力が。笑った顔なんて見たことがないし、命令されたら逆らえない威圧感。黒も白に変えられる唯一の男なんだからっ」
「命令された事あるの?」
「ない!」
だったら何で?歳三兄さん、すごく優しいのに
「今度、うちに来る?」
「行きたいっ、お兄さんと住んでるんだよね?」
「うん(歳三兄さんだけど)」
「どっちと?土方さん(左之助)?土方くん(総司)?」
「それは来てのお楽しみかな」
という事で、土曜日のランチに招待する事にした
歳三兄さんに話したら、ものすごい勢いで眉間に皺を寄せられた
「左之助か総司の所に行けばいいだろうが」
「それじゃ意味がないんです。嫌なら私に一人暮らしをさせてください!」
「ちっ」
久し振りに舌うち聞いた気がする でもこれは負け惜しみでしただけ
了解を得たという事だと解釈した
そして、土曜日
仕事に行こうとする歳三兄さんを全力で阻止し
何も知らない、えりと眞子が我が家にやって来た
「いらっしゃーい」
「お邪魔します」 「失礼しま・・・立派すぎる・・・」
二人はこの部屋の造りと広さに驚いていた
私も最初はとても驚いたのでその気持ちはよく分かる
歳三兄さんは、部屋で息を潜めて籠っています
お茶を飲み他愛のない話をしながらお昼の準備をしていた
「ねえ瑠璃、お兄さんは?」
「ん?いるよー部屋に。もうすぐお昼だから後で呼ぶけど」
「なんか申し訳ないよね。女子が押しかけてきたら出づらいよね」
「でも妹と住んでるんだから、多少は仕方がないでしょ」
「瑠璃って、お兄さんには厳しいタイプ?」
「え?そんなつもりはないけど」
お昼の準備が整った、二人はドキドキしながら待っている
私はいけないと思いながらも笑いを堪えるのに必死だ
だって、現れるのは歳三兄さんだから あぁ、私ってけっこう黒いのね
そういう部分では総司と似ているかもしれない
トントン
「お昼ですけど、いいですか?」
「・・・」
そんな仏頂面で振り向かなくてもいいと思うのですが
「待ってますけど!」
「分かった、すぐ行く」
私にはその顔は通用しませんので諦めてください
はぁ、という深い溜息は聞こえないふりをした
そして、やっと部屋から兄登場!
かろうじて眉間に皺は入っていない さて二人の反応は




