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Time Trip to Another World ~東雲~  作者: 蒼穹の使者
第一章 一さんに会いたい・・・
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第30話 新入社員研修-自衛隊入隊体験①-

ついにやって来た、新入社員による自衛隊入隊体験

合計20名程が2泊3日で陸上自衛隊の

入隊体験を研修として受けることになる

研修中はスマホは使用禁止のため、受付に預けるらしい


「忘れ物はないか?」

「ないと思います」

「くくっ、やる気のない瑠璃を見るのは初めてだな」

「自衛隊ですよ?よっぽどのマニアじゃないと喜びませんよ」

「ま、あっと言う間に終わるさ」


そう慰められ、集合場所の駅まで送ってもらった

何も知らない同期の人たちは、副社長の登場に驚いていた

誰も私の兄だとは思っていないようだ


「お前たち、しっかりしごかれて来いよ」

「はい!」


おお!さすが歳三兄さん 

たった一言で皆の士気が上がったよ

どんな時も先頭切って指揮を取っていた

こういう姿は本当に恰好良くて自慢の兄です


LINEを見ると、左之兄と総司から

頑張れとメッセージが入っていた

山崎さんからも来ていた「頑張りすぎないように」って

テンションを上げきれないまま、現場に着いた


自衛隊の広報担当者が門の前で迎えてくれた

基地について説明を受けながら

今日から泊まる部屋に通された

2段ベッドで6~8人が寝起きを共にする部屋だ

皺ひとつないシーツ、カチッとたたまれた毛布 

テレビで見たことのある風景だ

一人ずつに陸上自衛隊のユニフォームが渡された

そう、陸自と言えば迷彩服だ これを着るのかぁ

また更にテンションが下がった


「10分後、着替えを済ませて廊下に整列してください」


そう言って広報担当者は去って行った

迷彩服に着替え、廊下に一列に並んだ


「これより入隊式を行う、私は君たちを指導する3等陸曹の甲斐龍二と言う。今後の行動は全て私に従ってもらう。訓練は男女別々に行うが、特別扱いはしない。以上だ、返事!」

「はい」

「声が小さいっ!腹から声を出せ!」

「はい!」

「まだ小さい!命懸けなんだぞ!声を出せ!」

「はい!!」

「もっとぉ!」

「はいっ!!!」


鬼だ、入隊式前からこんな感じでは先が思いやられる・・・


入隊式では偉そうな方々の温かい励ましの言葉をいただいた

そんな偉い方々が神様のように見えてしまう

それくらい出だしが強烈だったのです

そして入隊式が終わったら休憩かと思いきや

息をつく暇も与えられることはなく

運動場に集合させられた


「今から基本行動を訓練する!全員が揃うまで行う!」


運動会前に練習するあれを覚えていますか?

全体!右向け、右! 左向け、左! 

全体、回れ右!前に進め! 駆け足!

これがまた揃わないのですよ 延々と繰り返される

一般人なので時間がかかれば、かかるほど体力は消耗され

腕が上がらない、膝が上がらない、声が出ない

列が歪めば叱られ、罵られ 

終いには動けなくなり座り込む人もいた


「お前の所為でこの訓練は終わらない!責任を感じろぉ!」


これ女子に向かって言っていますからね 本当に怖いです

泣けば、余計に大声で叱られる

そんな私も理由は分からないまま

罰の腕立てを何度もさせられた

指導官の体力も半端ない

かれこれ3時間はずっと怒鳴っているのだから 

日も暮れかけた頃、ようやく基本行動が終わった


でも安心してはいけない ダラダラ歩くと叱られるからだ


「駆け足!!」 


そして待ちに待った夕飯なのですが


「土方さんよく入りますね、私疲れ過ぎて食べれない」


あまりにもキツすぎて食欲がないのです


「でも、少しだけでも食べておかないと、もたないよ?」


あれ?こんなやり取りを昔したような?


そして、お風呂の時間がやって来た!

もう汗で髪もぐちゃぐちゃで早くサッパリしたい

なぜぐちゃぐちゃかというと、帽子を被っていたから


お風呂の説明はあの鬼教官ではなく、女性隊員がしてくれた


「皆さんお疲れ様でした。今からお風呂を開放します。時間は20分です。速やかに行動して下さい。以上です」


20分しかない、急げ!! 因みに本来は15分らしい


遅れたら何の罰が待っているか分からないので

皆、必死だった お風呂で必死ってどうなんだろう

洗ったかどうかよく分からないまま終了

部屋に戻ると就寝時間までは自由らしい

でも、皆疲れ過ぎてそのまま眠ってしまったのです


何とか一日が終わった 明日も早い、確か5時半…

私も直ぐに眠りについた


ウイーン!ウイーン!ウイーン!

緊急事態発生!緊急事態発生!

直ちに隊員は着替えて整列せよ


「はっ!?何!緊急事態!?」


ガバッと飛び起き、明日着る予定の制服に着替えた

見れば皆は爆睡だ まずい!起こさないとっ



「起きてください!緊急事態だそうです、起きてぇ!」


皆を順番に揺すり起こす 事態を把握出来ていないのか

ぼーっと座ったままの人もいた


「しっかりして!着替えてっ!」


すると、ガラッ!とドアが空いた


「整列!!」


あ…よりによって来たのはあの鬼教官だ 終わった


「君は寝ていなかったのか?」

「いえ、寝ていました。サイレンの音で起きましたが」

「着替えも終わっているな。君は確か土方と言ったな」

「はい!」


鬼教官は僅かに沈黙したけれど、次の瞬間


「此処が戦地であれば、君たちは全員死亡だ!何処から敵が攻撃してくるか分からない!肝に命じておくように!」

「はい!」


なんだ、これも訓練ですかっ!正直、質が悪いですよ

素人相手に寝込みを襲うなんて


「それでは全員!腕立てよーい!」


なっ!そ、そう来たか!! 

夜中の一時半、私たちの長い一日が終わった


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