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Time Trip to Another World ~東雲~  作者: 蒼穹の使者
第一章 一さんに会いたい・・・
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第28話 分かち合いたい

あの後、瑠璃から他に同じ記憶を持った人がいると聞いた

それは社長の大久保と瑠璃の主治医の山崎だった

歳三は幕末と新選組について調べ

その中で関わりが有りそうな人物をピックアップした


大久保勇=新選組局長、近藤勇

山南(やまなみ)敬介=総長、山南(さんなん)敬介

※書籍によっては山南(さんなん)山南(やまなみ)と記載

永倉新一=二番組組長、永倉新八

藤堂大介=八番組組長、藤堂平助

斎藤一=三番組組長、斎藤一

山崎丞=監察方、山崎丞


微妙に名前が一致しないが、永倉と藤堂は昔から知っている

左之助は姓が原田、総司は沖田だった

歴史上では殆どのメンバーが戦争で死んでいる

瑠璃の話とは全く異なっていた


どの書籍も大筋は同じだ、しかし歳三は違和感を覚えた

池田屋事件以降の話が違っている

俺たちはは禁門の変に参加していない

いや、禁門の変が起きる前に夜襲で片付けたはずだ


「まて、俺は今何を考えた・・・禁門の変が起きていないって何で言えるんだ。夜襲をかけただと?」


しかし、考えれば考えるほどに頭痛が増す


「くそっ!」


俺にも眠った記憶があるって言うのか


左之助と総司は歳三のマンションを出てから

カフェでコヒーを飲みながら話した


「左之さん、瑠璃の想い人って誰だと思う?」

「あ?ああ、この時代にいるか分からないって言ってたよな」

「でも、僕らと最後まで戦ったんだよね。だったらかなり絞られて来るよね。しかも、その内の三人は兄弟なんだから」

「・・・なあ、それって」

「うん、僕もそうじゃないかと思うんだけど、瑠璃のあの姿を見たら容易に口に出せなくて」

「だよな」

「それに多分、記憶はないと思うから」

「あいつ来年あたり戻ってくるだろ。もしそうだとしたら瑠璃はどうするんだろうな」

「分からないよ・・・」


二人が思うその男は斎藤一

その名前だけ瑠璃の口から出なかったのだ

しかし彼に記憶があるのかと言えば無いだろう

総司と同級生に当たるが、無口で真面目な男だ

よく知る仲間だが、これまで瑠璃とは接点がなかった

今は函館の支店で立上げメンバーとして勤務している

来春あたりに本社勤務になるだろうと噂されていた


「俺らは見守るしかないよな」

「うん」


瑠璃があんなに想うという事は

自分たちには想像のつかない事だった

どれほどの苦難を乗り越え、戦い抜いたのか

その中で育んだ慕情(おもい)の深さを


「僕も思い出したいよ、そしたら瑠璃の苦しみや悲しみを分かち合う事が出来るのに」

「何で俺たちは忘れちまったんだ・・・」


皆、頭の片隅に眠っているだろう記憶を

何とかして呼び覚ましたかった

この世界とは違う、もう一つの世界を



瑠璃は歳三が部屋に篭ってしまったことが気になった

きっと、一人であれこれ考え込んでいるに違いない


トントン


「歳三兄さん、いいですか?」

「ん?ああ、どうした」


歳三はパソコンの画面をパタリと閉じた


「ずっと部屋に篭ってるから心配になって、その」

「何だ、俺が部屋に篭もるのはいつもの事だろ。仕事を家に持ち帰ってしまっているからな」

「そうですけど・・・」


瑠璃は歳三が自分に気を遣っている事を知っていた

だからそれ以上は言わなかった、その代わり


「いつも頑張っているから、ご褒美です」


そう言って瑠璃は歳三の肩を揉みほぐす

肩だけでなく、首筋や腕 

見た目は細みだが、肩から背中にかけて筋肉は引き締り

あの頃となんら変わりはなかった


瑠璃は後ろから覆い被さるように体重を預けた


昔こうして兄の背負う荷物を確かめた事があったな


「・・・」

「瑠璃、いつまでそうしているつもりだ」

「ふふっ。そうですね、ご飯でも食べに連れて行ってくれるなら離れてあげてもいいですけど」


歳三は背に瑠璃の重みと温もりを感じていた

じんわりと広がる安堵感は何処かで感じた事がある

私は大丈夫、そのうち思い出しますよ 焦らないで

そう言っているように思えた

まったく、こいつには敵わねえな


「しょうがねえな、行くか」

「やった!何がいいかなぁ…」


きっと、以前もこうやって瑠璃に宥められたんだろう

いつも助けられていたに違いない


「とんでもないシスコンとブラコンだな」

「えっ?」

「何でもねえよっ」

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