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Time Trip to Another World ~東雲~  作者: 蒼穹の使者
第一章 一さんに会いたい・・・
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第27話 記憶

帰ってきてすぐの歳三は少し不機嫌そうに眉をひそめる


「なんだ」

「そんな怖い顔しないでくださいよ」


総司は今日の祭りで起きたことを簡潔に話す

聞きながら歳三は眉間に皺をぐっと寄せ

ちらりと瑠璃の顔を見た

瑠璃は眉を下げ、叱られた子どものように小さくなる


「そんな顔するな、誰も怒っちゃいねえよ。むしろ、褒めてやらなきゃならねえな。けど、自分の身は大切にしろよ」

「はいっ」


意外にも歳三は怒鳴ることはなく冷静だった


「で、お前が聞きたいことってのは何だ」

「瑠璃は考える前に身体が動くそうですよ。しかも、並の人間の速さじゃない。特別な力だと思えるほどの」

「あ?」

「一緒に住んでいて何か感じませんか」

「・・・」


総司は瑠璃の記憶と自分たちの生い立ちについて話した

歳三は目を瞑り黙ってそれを聞いている

瑠璃はそんな二人をただ、静かに見守るしかなかった


「僕たちの親は本当に事故死なんですか?」

「どう言う意味だ」

「小さい頃に親戚に預けられましたけど、誰も親の顔を知らない。瑠璃に至っては僕たちと暮らした事を覚えていない。それに時々、僕自身が時代錯誤のように思える。この時代に合ってないような・・・」


歳三はじっと何かを考えているようだ

暫くすると、スマホを取り出し


「俺だ、今からこっちに来れないか?ああ、俺のマンションだ」


話終わるとそれをテーブルに置いた


「左之さん呼んだの?」

「あいつ抜きて話すわけには行かねえからな」


1時間ほどすると、左之助がやって来た


「なんだ、皆いるのか」

「左之兄、お疲れ様です」

「瑠璃こそ祭り大変だったろ、お疲れさん」

「悪いな急に」

「いや」


歳三と総司が左之助にも同じ内容を話す

左之助は驚いた様子で瑠璃の顔を見た


「瑠璃、悪かったな気づいてやれなくて」

「そんな謝らないで下さい。私が言わなかったんですから」

「その話を聞くと、合点が行くな。瑠璃の竹刀の構えとか、振る舞い、時折見せる寂しそうな表情とか、な」

「っ、私。寂しそうな顔してました?」

「ああ、皆とっくにに気づいてた」


瑠璃は三人の顔を順番に見た、すると歳三が


「ああ、たまに此処ではない何処か遠くを見て何かを想っているだろ。その顔が傍から見ていると、寂しそうで切ない」

「瑠璃、まだ僕たちの知らない事を知っているんでしょ?」


瑠璃はその言葉を聞くと、涙だけハラハラと流した


「瑠璃っ」


左之助が瑠璃の肩を引き寄せ、後ろ頭を抱えるように撫でた


「もう一人で抱えなくていい、何でも言えよ。瑠璃が悲しいと、俺たちも悲しいんだ。な?」


瑠璃はひとしきり涙を流すと、ゆっくり口を開いた


「実はお話した記憶で、伝えていない事があります。私にはとても慕っていた人がいたんです。その人も私たちと共に戦いました。その人の命と私の命は二人で一つだと神に言われました。最後の戦いで、多分その人は私を生かすために、自分が犠牲になって何処かに眠ったままなんです」


「多分って?」

「一番、肝心な最後の戦いの記憶が無いんですっ!」


瑠璃は胸を掻きむしるように押さえて泣き崩れた

大切な人とどうやって別れたのか

それだけがどうしても思い出せないでいた


「そいつの名前は」

「・・・」

「瑠璃?」

「まだ・・・言えませんっ。もしかしたらこの時代には居ないかも知れない。自分だけ平和な時代で生きているなんて」

「そんなの分からないよ。まだ出会って無いだけかもしれない」

「名前を口にすると、胸が苦しくて会いたくて、会いたくて何も出来なくなりそうで怖いんです。心の中で(おも)うだけでいいんです」


瑠璃は自分に言い聞かせるように、兄たちに話した

そんな瑠璃の姿は痛々しく、また涙を誘うものだった


「分かった、言わなくていい。だが、もう一人で泣くな。寂しい時は寂しいって言え。分かったか?」


歳三はいつに無く優しい声で瑠璃に諭した

自分がなぜ、こうまで固執して妹の事が心配でならないのか

何となく分かった気がした

きっと、俺たちはそいつの事を知っている

だから代わりに瑠璃を守りたいと思ったんだろうと



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