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Time Trip to Another World ~東雲~  作者: 蒼穹の使者
第一章 一さんに会いたい・・・
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第25話 夏祭り

あっという間にその日はやって来た

浴衣を着れない先輩二人の為に、早めに会社に行った


最初は自分が着ながら教えていたんだけど


「お端折りが太いっ」

「作り帯にすればよかったぁぁ」


と泣き言ばかりが聞こえてきたので諦めて

私が全部着付けることにした

懐かしいな、私は確か総司に教えて貰ったっけ


「はいっ、美人さんの出来上がりですよ」

「ありがとう」

「でも髪を結うのはご自分で。そして私のもお願いします」

「瑠璃って器用なの?不器用なの?」


うっ、それは自分でも分かりかねる所でございます


出店チーム全員で水風船に水を入れて

プールに流し入れて完了!

さて、気合を入れてがんばるぞ


交代で休憩を取りながら店に立った


「いらっしゃいませ、水風船いかがですかー」


小さな子どもが頑張って取ろうとする姿

取れなくて悔し涙を流す姿は微笑ましい


「はい、頑張ったご褒美に好きなの一個持っていって」

「ありがとう!」


笑顔っていいな みんなが元気になれるから

家族連れや仲間とそしてカップルたちの夏のイベントだ


「キャー!!」


突然、悲鳴が聞こえた

声がする方を見ると人だかりが出来き異様な雰囲気だ

隙間から覗くと10代の少年が血を流して突っ立ている

周りに仲間らしき少年が3人 喧嘩のようだった


「クソがぁ!てめぇ、ぶっ殺すぞ!」

「粋がってんじゃねえぞ!」


取っ組み合ったり、殴ったり蹴ったり 3対1は卑怯でしょ

やじ馬は多いけれど誰も止めない

いや、怖くて止められないのだ


えりが警護で回ってる人を探してくると走って行った

直後、やられっぱなしの少年がサバイバルナイフを出した


「ぶっ殺す!」


やじ馬の輪が逃げるように大きく外に広がった

ただの喧嘩で、あれはまずいと思った

思ったと同時に体が勝手に動いていた


やじ馬をかき分けて輪の中に入ると少年は声を上げた


「全員殺してやる!」


サバイバルナイフを振り回しながら威嚇をしている

すると3人のうち一人の少年が


「お前が死ね、卑怯者は去れ!」


と刺激するような言葉を次から次へと吐き捨てる

ナイフを持った少年は刃先を真っ直ぐこちらに向けると

躊躇うことなく突っ込んできた


あまりにも咄嗟のことで、考えるより先に体が動く

少年の腕を払いサバイバルナイフを地面に落とす


「うわぁぁ」


と狂ったように叫び、滅茶苦茶に暴れる

仕方なく、腕を捻り地面に伏せる形で押さえ込んだ


「瑠璃!」


誰かが私の名前を呼んだ

顔を上げると、総司が腕組みをして立っていた

いつに無く厳しい表情をしている

他の少年は駆けつけた警備員に押さえられていた


総司は無言で暴れた少年を引き起こし、私の手を掴むと


「取り敢えず、救護所に連れて行くから」

「はい・・・」


救護所には警察官も何かの為に待機している

何故か私も悪い事をしてしまったような気分だった


少年は救護所の医師が傷の手当をした

その間、私は警察官からいろいろと聞かれたのです

別に悪い事をしたつもりはない

なのに尋問はまるで私が犯人かのように行われる


お名前は?年齢は?身分を証明出来るものを…

仕事は?何処に住んでいるのか、

もう一人の警察官はメモを取りながら無線で何かを確認

きっと、私に前科がないか調べているんだ

気分がだんだん落ちてゆく


「ちょっと、さっきから黙って聞いていれば、まるで瑠璃が何かした様な扱いじゃないですか」

「総司?」

「いえ、あ、すみません。そう言う訳ではないんですよ、皆さんに同じ事を聞いていますから。お気を悪くされたなら申し訳ない」

「本当ならお礼を言われて当然の事をしたと思うんですけど」

「いや…申し訳ない」


総司のお陰で、その後は穏やかな質問に変わった

少年は銃刀法違反に当たるらしく、書類送検となる

私たちは1時間ほどで開放された


「総司、ごめんなさい」

「なんで謝るの」

「だって、心配かけたから・・・」

「そんな泣きそうな顔しない。瑠璃は良い事をしたんだよ?でも、もしまた同じような事があったら、一人で行かない事」

「はい」


総司はそう言うけれど、良い事をしたんだと胸は張れない

やっぱりあんな事はすべきじゃなかった

これが歳三兄さんだったら確実に怒鳴られてる


「瑠璃?」

「ん?」

「ちょっと聞いていいかな」

「はい」

「瑠璃は怖くなかったの?刃物を持っていたんだよ?」

「怖いと思う前に体が、体が勝手に動くの・・・」

「え?」


また同じ事があるかもしれない

その度に皆に心配や迷惑を掛けてしまうかも知れない

いつまでたっても以前の現代での暮らしが思い出せない

だったら、思い切って


「私の話、聞いてくれる?」

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