第24話 夏祭りも会社行事?
毎日蒸し暑くてたまらない、でも会社の中は寒い
贅沢な事だと思うけれどクーラーが利きすぎている
営業課の男性陣が出払ったのを見計らって
こっそり温度を上げるのが日課になってしまった
「瑠璃さぁ、最近逞しくなったよね」
「どこが?」
「身体」
「え、身体!?」
「なんかさ、肩周りとか筋肉ついてない?気のせいかな」
「さすがえり!筋肉好きには分かるのね」
「え?眞子どういうこと?」
「えりは建設部の永倉さんみたいな人も好きだから」
「こら眞子っ!」
しまった、ちょっとハードに鍛えすぎたかも
この時代、OLがムキムキってなしだよね・・・
「で、何かしてるの?」
「え・・・まぁ、その剣道を少々」
「剣道やってるの!またなんでっ!」
元々、剣道をしていた事と自衛隊での新入社員研修の事を話したら
笑いながら、女の子はヨガでも十分鍛えられるのにって
笑わなくてもいいと思う
「ま、そこが瑠璃らしくて私たちは好きよ」
「どうも」
今度、差し入れを持って応援に行くからねと言われた
有難いけれどそれって絶対に兄たちが目的だよね
一応、社長もいるよって言ってみたけど
「そうなんだぁ」と気にしていなかった
まあ、二人なら別に兄の誰かとくっついても文句はないけれど
そんなやり取りをしながらパソコンに向かっていると
社内一斉メールが、内容は夏祭り参加についてのお知らせだった
毎年8月前半の週末に開催される地域の祭りに会社として参加しているらしい
地域密着型、社会貢献という観点かららしい
「瑠璃がんばってね」
「何をがんばるの?」
「各課から2,3人づつ集まって、出店とか祭りの警護とかするの」
「基本新入社員は参加だよ。しかも、ボランティアで」
「そんな事までするんだ・・・」
「いいじゃない、浴衣着て女子力上げて来なさいよっ!」
数日後、新入社員の私以外はくじ引きをした
なんと、えりと眞子が当たりくじを引いたんです
「ふふふっ、二人ともご教授願います」
「はぁ、ついてない」
「あー、浴衣なんて自分で着れないよ」
「大丈夫です。二人の浴衣は私が責任もって着せます」
「え!?着付けが出来るの!」
毎日着物を着ていたから浴衣なんて朝飯前
私って意外と女子力あるかもって思った
祭りまで時間がない!
という事で、連日会社に残って準備
うちの部署は水風船釣りをするので
昨年使った屋台?みたいなやつに手を加える
手作りにこだわっているようで、初めてペンキ塗りをした
絵を描くのは苦手だという事に今更気づいた私
散々、言われた
小学生の読書感想画だって・・・どう言う意味?
「ただいま」
と言ってみたものの、兄が先に帰っている事はない
本当に丈夫でよく働くなって感心します
「本当にいいお嫁さんを貰ってほしいよ。ふぅ疲れた」
ソファーにばたりと倒れ込んでみた
あれ?私、電気点けたっけ??
「いい嫁さんってなんだ」
「うわぁっっ!!」
頭の上から声がして、振り向いたら歳三兄さんが居た
驚き過ぎてソファーから転げ落ちてしまった
「居たんですか!」
「あ?居ちゃあ悪いのか」
「悪いとかじゃなくていつも遅いから、びっくりしたっ。心臓がまだバクバク鳴っています」
そんな私の驚き方が可笑しかったのか
歳三兄さんは暫く笑っていた
「本当に飽きねえヤツだな。飯食ったのか」
「まだです」
「そうか、なら食え」
「えっ!?」
なんと、歳三兄さんはキッチンから現れたようで
エプロンを着けていた ご飯が出来ている!!
「美味しそう!いただきます」
「どうだ」
「おひしひです」
「飲み込んでから喋れよ」
驚きと感動と喜びで心はぐちゃぐちゃだ
「帰ったらご飯があるって、幸せですねっ」
「いつもはその幸せを俺が独り占めだからな、こんな時ぐらい味合わせてやろうと思ってな」
今回だけだから次は期待するなって言っていたけど
きっと次もあると思う
兄妹の中でこの人が一番優しいのだから
だから心から、いいお嫁さんを見つけて欲しい
「おい、顔に何か付いてるぞ」
「ん?ご飯ですか?」
口周りを触ってみたけど、それらしきものにヒットしない
「違う、此処だ」
歳三兄さんが親指で右頬を擦るように触った
そんなにしつこいの!?
「ハハッ、これペンキだな落ちねえぞ」
「ええっ!最悪ぅ、満員電車乗って帰ってきたし」
どうかお風呂で落ちますように




