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Time Trip to Another World ~東雲~  作者: 蒼穹の使者
第一章 一さんに会いたい・・・
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第23話 七夕

あれから、週末のどちらか1日は道場に通っている

大久保さんの鶴の一声で兄たちも時々やってくる

今日は総司が来ていた


「勇さんって、瑠璃に甘いよね」

「どうして?」

「他の者では相手にならんから、総司たちが交代で来なさいって。勇さんのお願いは断われないんだから」

「大久保さんには気にしないで欲しいって言ったんですけど」

「けど、瑠璃の相手はその辺の人じゃ無理だし?僕たちもそろそろ体作っておかないと試合出来ないから」

「試合?」

「うん、全国社会人剣道大会」

「・・・頑張って」

「なにそれ」


そんなやり取りをしながら、道場を出た

総司が買い物に付き合えと言うのでショッピングモールに寄った

特に見るものもなかったから店の前のソファに座り

ぼんやりと店の様子を見ていた ふと天井を見ると


「わぁ、きれい・・・七夕かぁ、でももう過ぎたよね?」


七夕飾りが天井から下がり、短冊もたくさんぶら下がっていた

そう言えばご自由にお書きくださいってあったな


「お待たせ、そっか七夕かぁ」

「でも、7日は過ぎてるんですけどね」

「この辺りはね旧暦の7月7日まで飾るんだよ」

「へぇ・・・」

「瑠璃もなんか願い事書いたらいいじゃない?」

「え、別にいいよ」

「いいから、ほら。僕は何をお願いしようかなぁ・・・」


総司はオレンジ色の短冊を手に取り私にくれた

どうしよう、何をお願いしよう

願いたいことは只一つ

でも口にすることも短冊にも書くことも出来ない

もし、一さんもこの時代に居るのであれば

どうか元気で幸せでありますように

出来れば、もう一度会いたい


「あれ?皆が元気でいられますようにって・・・小学生みたい。つまらないなぁ」

「もう!見ないでくださいっ」


瑠璃は何か考え込んだように、書く手が止まっていた

結局書いたのはありふれた願い事だ

でも、何となく分かるんだ 短冊には書けない秘めた願いがあるって


「じゃあ僕は、瑠璃の願い事が叶いますようにって書くよ」

「総司・・・ありがとう」


冗談っぽく言ってみたけど、僕の本気が届いたのかな

この子は意外と敏感なんだよね

兄妹の中でたぶん僕の事を一番よく理解している

そう言えば目覚めた時「双子じゃないの?」って聞いたよね

前世があるなら双子だったのかもしれないね



そういう積りはなかったけれど

夕飯に少しそれらしき飾りを施してみた


「おっ、今日はちらし寿司か」

「はい、ちょっと具を贅沢してみました」


夜空をイメージして錦糸卵の上にいくらをばら撒いて

エビやカニのほぐし身を(缶詰ですが・・・)散りばめる

人参は星形に切り抜いて見たけど


「もしかして・・・七夕か?」

「当たりぃ!この辺りは旧暦の7月7日まで七夕飾りするらしくて」


歳三兄さんは、「たまにはいいな」と優しく笑った

夕飯も終わった後、なんとなくベランダに出て見た

七夕だなって思うと気になるのは夜空の天気で・・・

曇っていた


「あ、曇ってる。会えるかなぁ織姫と彦星」


一年に一度しか会えないと言われる二人

私も会いたいなぁ・・・一さん


「おい、こんな街中じゃ星なんて見えねえぞ」

「歳三兄さん・・・」

「おまえは何か願い事したのか」

「え、ふふ。まぁ一応」

「そうか」

「歳三兄さんは願い事しなくていいんですか?」


人に気を使って、妙に頑張りすぎるところがある瑠璃を

過保護だと思いながらも心配でならない自分がいる


「俺の願いは瑠璃の願いが叶う事、だな」


そう言い残して部屋に戻って行った


「もうっ、いつも私の事ばかり。ありがとう」


天の川とか見れたらスマホで写真撮るんだけどなぁ

そう思いながら何気にスマホを見ると、左之兄からLINEがきていた

空一面に光る星 何処?確か今、添乗中だったような


スマホで撮ったわけじゃねえけどなって書いてあった

そうだよね、夜空はどんなに綺麗でもさすがにスマホじゃ無理だ


(ありがとう、待ち受けにしますっ)と返信した


兄さんたちはいつも私の事を見ていてくれる

自分のことは放ったらかしで、どんな時も私の事を気に掛けてくれる

感謝してもしきれないな


普通の兄弟からしたら異常なまでに妹に愛情をそそぐ彼ら

またその妹も兄を想う気持ちは他人には負けない

曾て互いを支え合い、信じ、命を懸けて戦った事を

記憶はなくても体が覚えているのかもしれない

瑠璃が最も愛する者を犠牲にし、生き延びたあの日々を


その最も愛する者が誰なのかを彼らは気づく日が来るのだろうか


「兄さんたちが健康で、幸せで、可愛いお嫁さんを貰えますように!」


瑠璃は待ち受けの星空に向けてそう願った


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