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Time Trip to Another World ~東雲~  作者: 蒼穹の使者
第一章 一さんに会いたい・・・
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第17話 左之助の作戦

事のいきさつを左之兄に話したら

「二人とも素直じゃねえな」の一言で片づけられてしまった

別に意地を張っているつもりは全くないのだけど

ただ、どう謝ったらいいのかが分からない


「謝る必要ねえだろ、言いたい事言って喧嘩すればいいじゃねえか」

「え、わざわざ喧嘩するんですか」

「現に今、話すきっかけを無くしてウジウジしてんだろ?」

「ウジウジしてないですっ」

「いや、兄貴だよ。ああ見えて落ち込みやすいんだ」

「落ち込む?落ち込む理由なんてないと思いますけど」


左之助が言うには、自分の考えが甘かったせいで一人で帰らせたと


「でも、それは私が大丈夫って思って出たから・・・」

「思ったんじゃねえ、思わせたんだろ」

「・・・」

「あの状況なら、そうなるだろ。兄貴は言葉が足りねえんだよ、黙ってたって何にも伝わらねえ」

「でも・・・」

「お前は悪くねえ」

「・・・」

「あ、今日は俺ん家に泊まれ!そうだ、そうしろよ、な」

「え!」

「兄貴には俺から言っておく。こうなったらとことん落ち込めってな」


良いのかな、余計にこじれてしまったりしないのかな

でも、今帰ったとしても夕べと同じ状況だろうし

正直なところ、居づらい


「では、宜しくお願いします」


早速、左之助は歳三に電話をするために席を外した


「兄貴か。今ちょっといいか」

「なんだ、何かあったのか」

「瑠璃の事なんだけどよ、今日は帰らねえって言ってる。そういう事だ、じゃあな」

「おい!ちょっと待て。どういうことだ、説明しろ」

「それは自分で考えたらどうだ。兄貴が一番分かっていることだろ」

「なんだとっ!」

「それから、気づいてねえと思うけどよ。瑠璃は腕を怪我してる、病院は行った。一応報告だ」

「!?」


そう言って、左之助は電話を切った

何事もなかった様に席に戻ると

自分のスマホと瑠璃のスマホ両方の電源を切った


「え!」

「やるからには徹底的にやらなきゃ駄目だ」


何を徹底的にやるのか分からないけど

もう成るように成れ!と言う気持ちになっていった

今日は歳三兄さんの事は考えない

左之兄と少しのお酒に癒やされて眠りについた


「本当は兄貴の所より、俺ん所にいて欲しいんだけどな」


眠る瑠璃に独り愚痴る左之助だった



左之助の奴、電源切りやがって

あれから仕事が手につかない、歳三は予定より早く会社を出た

分かってはいたが部屋は真っ暗で戻った形跡はなかった

キッチンには夕べ見たビニール袋が置かれたままだ


「これで冷やしていたって事か」


車に乗り込んだ時もこれを持っていたはずだ

なんで気づかなかったんだ!

くそっ、役に立たねえ兄貴だなっ!!

すぐに電話を取った、瑠璃の声が聞きたい

だが、電源が入っていないとアナウンスが流れた


「左之助っ!てめえ、明日覚えてろよ!!」


ーーーーーーーーー


窓から朝の光が差し込む


「んー、ん?んんん!?」


あ、そうか左之兄の所に泊まったんだった

いつもと景色が違うから驚いた

時計を見たらまだ朝の6時前だった

リビングに行くと、左之兄がソファーで寝ている

落ちたタオルケットを掛け直してあげた


「トイレ行こっと」


お手洗いを済ませ顔を洗う、まだ右腕は痛かった

湿布を貼り直そうとリビングに戻ると


ピーンポーン♪


「え?早くない?新聞かな、いやピンポン鳴らさないよね」


もう一度時計を見た、確かに朝の6時だ


ピーンポーン♪ ピーンポーン♪


「左之兄!起きて誰か来たみたい」

「あー、何時だ…ろくっ。・・・気のせいだ」


ピーンポーン♪


「気のせいじゃないよ!」


モニターを覗いた、一体こんな朝早くから誰なんだっ

瑠璃はモニターに映る人を見た


「わぁっ!!」


歳三兄さんだ!もの凄く怖ろしく映っているのは気のせい?


「どうした、んな声出して。何かでたか」

「と、と、歳三兄さん!!」

「はあ?」


左之助は瑠璃の後ろからモニターを確認した


「まじかっ!」

「どうするんですか?」

「放っとけ、こんな朝っぱらから非常識だろ」

「え、でも」


ブイーン…エントランスの自動ドアが開いた

誰かが外に出たらしい

勿論、歳三兄さんは入ってくるわけで・・・


「おい、おい」

「あっ」


左之助は、深い溜息をつき瑠璃の顔を見た

何とも言えない表情だ


「仕様がねえな、此処でピンポン、ピンポン鳴らされても迷惑だからなぁ。入れてやるかぁ。瑠璃覚悟はいいか?」


コクリと首を縦に振るのと同時に

ゴクリと唾を飲み込んだ


ガチャッと玄関のドアが開く、靴を脱ぐ音

リビングまでのほんの少しの廊下を進む音

そして、自身の心音がバクバクと耳に響いていた


静かにリビングの扉が開かれた、その先に視線を向けると

もうこれ以上は入りませんっ!

というくらい深い皺が、その眉間に刻まれていた


(ああ、ここに鬼の副長が蘇った・・・)

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