第14話 大型台風上陸
季節は本格的な夏へと変わった
この頃は異常気象と言われ、梅雨明け宣言もないままだ
台風も秋を待てずに突然やってくる
しかも、今世紀最大の・・・ともう何度目だろうか
「梅雨が明けたのに、今度は台風って最悪だね」
「そうだね、地球大丈夫かな」
昼休みが終わり席に戻ると、全社員向け一斉メールが届いていた
社員各位
日々の業務、ご苦労様です。
御存じの通り、台風16号が接近しております。
夕方から今夜半にかけて最も近づくと予報されております。
各公共機関も運行見合わせや遅延が予測されるため、
各所属長の指示に従い、午後3時までに退社してください。
以上
総務部総務課 山南
「見た?メール」
「見た、見た」
すると部長の佐々木さんが運営課にやって来て
業務の進行状況、締切関係などを確認した
「君たちは問題なさそうだな、3時になったら帰っていいよ。気を付けてな」
幸い今日は落ち着いていたので帰れそうだ
電車大丈夫かな、帰るまで止まりませんように
デスクの端においてあったスマホが光っている
開くとLINEが来ていた
歳三兄さん:(全社員が帰るまで俺は帰れない。どっちかに送ってもらえ)
返信:(はい、分かりました)
左之兄:(悪い、出先でまだ動けそうにない。兄貴か総司に送ってもらえよ)
返信:(ありがとう、そうします)
総司:(博多からの新幹線が止まっちゃって今日帰れないかも、瑠璃は大丈夫だよね)
え・・・みんな大変だね
もともと電車で帰るつもりだったから
返信:(大丈夫です。気を付けてね)
3時を待つようにして会社を出た
えりたちは地下鉄、私は電車なので駅前で別れた
雨はまだ弱いけど、時々吹く風が強くなってきた
壊れた傘があちこちに散乱していた 危ないな
駅の構内が人で溢れている・・・嫌な予感しかしない
電光掲示板を見ると「強風にて電線切断、運転見合わせ中」
駅員のアナウンスも「他の公共機関をご利用ください」とテンパっていた
会社に戻って、歳三兄さんを待って帰った方が賢いかな
外に出たら、横殴りの土砂降りに変わっていた
タクシー乗り場は長蛇の列で出払ったタクシーはいつ戻るか分からない
他の公共機関を調べたらバスがあった!
4時が最後で運行見合わせって!?時計を見たら4時15分
これは不可抗力ということで意を決して歳三兄さんにLINEした
(左之兄も総司も仕事でまだ帰社してないみたいです。
電車も運休になりました。終わったら連絡ください)
忙しいのだろう、待てども既読にはならない
その時、ドドーンッ!!と激しい音がして真っ暗になった
「雷が落ちた」と声が上がる
スマホを見たら通信が出来ない状態になっていた
システムダウンしたようだ
私は今、帰宅難民になった
なんとか全フロア落ち着いたみたいだな
落雷で一時停電したが、予備電力が作動しシステムに影響はなかった
「ん?・・・瑠璃からじゃねえか。っ!あいつなんで早く言わねえんだっ」
電話を掛けるが、しばらく経ってからおかけ直しくださいの繰り返しだ
「ちっ!使えねえなっ!」
こんな事なら会社で待たせておけばよかった
歳三はイライラしながら車のキーを取ると、部屋を出た
地下駐車場のエレベーターを降りてすぐ、ずぶ濡れの左之助に会った
「お疲れ、あれ瑠璃は?総司が送っていったのか」
「いや総司は新幹線が止まって、今日は戻れねえらしい」
「え!じゃあ、瑠璃は」
「たぶん駅で足止め食らってる」
「たぶんって」
「電話が繋がらねえんだよ!」
歳三はそう怒鳴ると車に乗り込み、会社を後にした




