第13話 続・まだ月曜日なのに
取り敢えず副社長がお呼びなので行くとしよう
「副社長室に行ってきます。あ、何階でしたっけ?」
「・・・」
あれ、無反応じゃなくて拝んでる!
そして、行きがけに「10階、無事を祈る」と言われた
冗談を言う時の顔じゃなかったから、ちょっと怖い
トントン 「失礼します」
奥のデスクで難しい顔をした歳三兄さんが居た
「瑠璃です」
「ああ、悪いな仕事中に」
「いえ」
「明後日、アメリカから客が来る。いつも頼んでる通訳が空いてなくてな、勇さんが瑠璃に頼めないかって言って来た」
「明後日ですか」
「午後だから、午前中に仕事の段取ををつけておいてくれ」
「分かりました」
「それから、此処に来る時に何か言われなかったか?」
「え?・・・ああ、無事を祈られました」
「は?」
「電話が鳴った途端、皆さん顔色が変わって何かに怯えていましたよ?もしかして、呼出し説教とかしているんですか?」
「するわけねえだろ。俺はそんなに暇じゃなえぞ」
「じゃぁ何で?あっ、電話の音が副社長からだけ違うんですよ。だから余計そう感じるのかな」
「音が違う?だと」
「はい、副社長だ!って分かるみたいです」
歳三兄さんは「ちっ」と舌打ちをして「あの野郎っ」て
外に向かって言っていた
副社長室を後にすると総司に会った
「あれ?歳三さんに呼ばれてたの?」
「はい」
「ねえ、何でそんなに余所余所しいの」
「だって・・・兄妹ってバレるでしょ!」
「バレるって、瑠璃は隠してるの?」
「え!隠してないの?みんな知らないみたいですけど」
「隠してないよ。ただ聞かれた事がないから言ってないだけ。わざわざ左之さんと兄弟ですって言わないし」
「今朝、思い切って言ったんだけど、信じてくれなかった」
「ははっ、似てないからね僕たち」
じゃあねって、総司は手をヒラヒラさせて行った
なんだ、隠してないんだ
でも、今日みたいに左之兄や総司に仕事で絡むかもしれない
そうしたらどう呼べばいいのだろう
まさか土方さん、土方くんって訳にはいかないよね
ああ!面倒臭いっ!
そして、我が運輸部に戻ってきた
運営課のエリアがざわついているのは気のせいだろうか
「あっ!(左之兄が私の席に座ってる)」
「おっ、戻ってきたな」
「大変よ〜土方さんが来てるぅ」
「・・・ど、どうしたんですか?」
「副社長に呼び出されたって聞いたからよ」
「それが、何か?」
「瑠璃、そんな言い方は駄目でしょ。心配して来てくれたんだから。ねえ?土方さんっ」
左之兄は穏やかな笑顔で「そうなんだよ」なんて言って
えりに色気を振りまいている
いや、無意識に漏れてるんだった
「通訳の仕事を依頼されたので」
「そっか、瑠璃は英語できるんだもんね」
「英語だけじゃねえぞ、中国語もできるんだせ」
「知らなかったぁ、すごーい。え?でも何で土方さんが知っているんですか?」
「何でって、兄妹だからな」
「・・・ええっ!」
そりゃ、そう言う反応になるよね
「瑠璃、言ってなかったのか」
「今朝、言ったんだけど、信じてもらえなかったというか」
「ははっ、俺たち似てねえからな」
妹を宜しくな、なんて言って戻って行った
なんか、月曜からいろいろあって疲れる
「眞子ごめん、えり仕事にならないかも」
「十番組、組長・・・」
「え、眞子?」
もう帰りたい、早く6時にならないかな




