第12話 まだ月曜日なのに
あっという間に週末は過ぎ、今日からまた仕事だ
嫌じゃない、むしろ楽しくて仕方がない
たくさんの人と接したり、メールしたり、電話したり
働いているなって感じが堪らいのです
でも今日はちょっと違った、会社に着くなり
えりたちに休憩室に連れ込まれる
「さあ、取り調べ開始だよ~」
「取り調べ?」
金曜日の夜、皆と別れた後に私が男の車に乗った
それは彼氏なのかという話題
「いや、違います。兄が仕事終わりに通りかかったから」
「お兄さん!?顔は見えなかったけど良い車に乗ってたよね」
何処で働いているんだ、独身なのか、何歳なんだと聞かれ
挙句の果てには紹介しろって言われた
「えりにはイケメン営業部の例の二人がいるでしょ」
眞子の素晴らしい突っ込みを
「あのお二人は神なの!分かる?見ているだけでいいのよ~」
と華麗にあしらう
いや、紹介してもいいけど違う意味で倒れると思う
とってもしつこいので意を決して言った
だって、遅かれ早かれ分かる事なんだしっ
「あのねっ、私の兄はこの会社の土方副社長と営業部の土方二人なの!」
「・・・」
「・・・」
ちらりと二人の顔を見た、時が止まっている
「瑠璃ったら、まだ酔っぱらっているのかなぁ。私たちを驚かせたいならもっと頭を使いましょう」
「そうよ、何を言うかと思へば。ほら仕事、仕事!」
「えーーーー。」
信じてもらえなかった
まだ始業前だというのにドッと疲れたのは私だけか
週末に来ていたメールを片付けたり
団体の座席調整をしたりとバタバタしていた
私の仕事は旅行部が請け負った旅客の座席確保と調整
因みにえり達は貨物の方なので
業務内容は似ているようで異なる
プルッ、プルッ・・・プルッ、プルッ 内線が鳴った
「はい、土方です」
「ねえ、はい土方ですって歳三さんに掛けたみたいで嫌だなぁ」
「そうっ・・・な、何でしょうか」
「あとでメール流すけど、大口団体が入ったから宜しくね」
「はい、分かりました」
「それからさぁ」
「他に何か?」
周りが気になるのでついそっけなく対応してしまう
「瑠璃ちょっと見てよ。ほらっ、こっち」
「え?どっち?」
顔を上げると、向こうの方で誰かが手を振っていた
「なっ!?」
総司っ、何にをしているのっ
後ろで、えりが「キャー、キャー」言っている
「し、失礼しますっ」
カチャリと受話器を置いた 絶対にワザとだ!
幸い私に向けて手を振っていたとは
誰も思っていないようだった
「瑠璃!内線鳴ってるよ」
「えっ、あ、ありがとう」
「はい、土方です」
「おっ、頑張ってるじゃねえか。安心したぞ」
「さのっ、っ!ど、どうしたんですか?」
「総司がさっき手振ってただろ、大丈夫だったか心配でよ」
「大丈夫ですよ、遠くてあまり見えてませんから」
「そうか?久々にこっちの部署来たからよ、つい、な」
「私は大丈夫ですから、お仕事に戻ってください」
カチャリと受話器を置いた
二人とも今日は運輸部の方なの?
どう接したらいいのかそれが今の悩みだ
「瑠璃!わたし今日、すごくツいてる日かも。土方さんも居るし、土方くん手振ってたし」
土方さん、土方くんって…ややこしいよ
誰に手を振っているのかは気にならないのだろうか
有頂天な彼女はそっとしておこう 仕事、仕事
お昼休みは兄二人の事でのぼせてしまったえりが
ぼんやりしていた
私は気疲れのせいでぐったりしていた
「ちょっと二人ともっ、腑抜けの殻じゃない」
眞子ごめんね、今は力が出ないのです
午前中の事がようやく落ち着き始めた頃
内線?外線っぽい音だけど私の電話だけが鳴っている
「瑠璃!その電話っ」
「え?なに、何かあるの?」
「早く取って、ほらっ!」
焦るえりに疑問をもちながら、受話器を取った
「はい、土方です」
「電話取るのが遅えぞ、2コール以内だっ」
「わっ、(歳三兄さん!?)すみません」
「いや冗談だ。すまん、手が空いたらこっちに来てくれ」
「はい分かりました」
ああ、今日は兄たちの件で忙しい
えりが引きつった顔をして私を見ていた
「瑠璃・・・が、がんばってね」
「え?う、うん」
後で知ったことだけど、あの外線のような内線は
副社長からの専用回線で別名「鬼からの電話」
因みにあれが鳴ると大抵の社員は震え上がるらしい
なんで?




