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Time Trip to Another World ~東雲~  作者: 蒼穹の使者
第三章 〜曙〜 幸せになります
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結婚式

後日譚でございます。

あと少しだけ、瑠璃と斎藤の物語にお付き合い下さい。

サターンとの戦いが終わって、半年が経った。


********


婚姻届を出して終わりにするはずだったのを、えりや眞子が許さず。

だったらパティーをしようと提案したものの却下。

どうして結婚する側がこうも気を使っているのだろうか。


「瑠璃、冗談でしょ?ちゃんと教会か神前で誓いをして、滞りなく結ばれましたって披露宴開いて報告するのが当たり前でしょ?今はね二人の為だけじゃなくて、お世話になった人への感謝を示すのよ!」

「だからパーティーで」

「駄目、きちんと此処まで育てくれたお礼も皆の前でするの」

「私、親は居ないから・・・」

「親代わりのお兄様方がいるでしょう。ずーっと心配していたのよ?」

「ま、眞子。助けて・・・」


眞子は苦笑いしながら軽く「無理っ」て言っただけ。


********


こうして神前にて式を挙げ、ささやかな披露宴をするに至ったのです。

神前では身内のみで厳かに式が執り行われた。

黒の紋付袴を身に纏った一さんは本当に素敵だった。

三々九度が行われ、盃が兄たちへ回った。

こうして、土方瑠璃は斎藤瑠璃となった。


そして今は重く閉ざされた大きな扉の前に立っている。

息を吸って、吐いて、吸って吐いてを繰り返し。

激しく高鳴る心臓を抑えるのに必死なのです。


「瑠璃、大丈夫か」

「一さん、緊張しすぎて駄目です」


黒のタキシードに着替えた一さんは、涼しげな顔でにこりと笑う。

因みに私は薄いオレンジ色のカクテルドレスで、胸元に花があしらわれ腰からふわりと広がった小柄体型にはもってこいのドレスを着ている。

幾重にも折り返されたシルク調の生地が足元に向かって大きな花を咲かせている。

恥ずかしいほどにひらひら・ふりふりしている。

髪は高く結い上げられ、これまた恥ずかしいくらに生花が散りばめられていた。


「恥ずかしくて、口から心臓が出そうです!」

「大丈夫だ、瑠璃は綺麗だ。気負う必要はない」


一番こういう場面が苦手そうな人から宥められているんですけど!

ドキドキ・バクバクが止まらない理由は他にもあった。

「お母様、お父様へ」の手紙の代わりに「お兄様へ」という手紙を書かされたからだ。

感謝はしています。もうしきれないくらいに・・・でも、大勢の前で読まなくたって。


「もう、吐きそう・・・」


そんな私の心情を知ってか知らずか、無情にも入場の時がやって来た。


「新郎・新婦のご入場です。温かい拍手でお迎えください」


【兄たちside主に歳三】


穏やかな表情の斎藤と違って瑠璃は緊張しているようだったが、温かい拍手に包まれ斎藤の腕を取る瑠璃は本当に綺麗だった。


「緊張しすぎだろ」

「仕方ないよな、一世一代のイベントだからな」

「白無垢も良かったけど、あのオレンジのドレスも似合ってるよね」


3人の兄は感慨深い思いでいっぱいだった。

この日を誰よりも待ち望んでいたのは、この3人なのだから。


「歳三さん大丈夫ですか?最後に親族代表の挨拶があったでしょ」

「っ、今言うか?始まったばっかりじゃねえか」

「なんだ、兄貴も緊張してんじゃねえか」


そんなやり取りを他所に、山崎は感動に打ちひしがれていた。


社長である大久保勇が媒酌人として挨拶をした。

こういう場面はまるっきり駄目な勇は終始泣きながら二人を祝福した。

(勇さんあんた父親じゃねえんだ、泣きすぎだろ。何を言っているのか全然わかりゃしねえ)


友人代表は結城えりだ。

瑠璃との出会いから、土方兄妹の話を冗談交えて上手く話をまとめている。

強張った瑠璃がやっと笑った。

(やっぱり、こういう時は女友達だよな・・・)

その隣で、永倉と藤堂がおいおい泣いている。

(おいおい、俺たちを差し置いて泣きすぎだろう)


瑠璃の周りにはいつだって駆け付けて来る仲間がいる。

能力はなくなったが心配無いだろう。

何よりも斎藤が側に居るのだから。


********


和やかに披露宴は進み、いよいよ瑠璃が席を立ち感謝の言葉を告げる時が来た。

歳三たちは知らない、それが自分たちに向けたものだと言う事を。


♪~♫♫**##♪...~♪♫^**;#%,,♪~♫♫**##♪...~♪♫^**;#%,,


「それでは此処で新婦様より感謝のお手紙を読んで頂きます。どうぞご注目ください」


瑠璃が静かに席を立ち、スタンドマイクの前に立った。

隣に寄り添うように新郎である斎藤が立つ。

そして、演出の為か照明がゆっくりと落とされた。


『初めての出会いは、あまりにも突然で奇妙な運命を恨みたくなるようなものでした。頼る人が居なかった私を兄妹だと知らないまま、黙って受け入れてくれたあの日を今もはっきりと覚えています』


「おいっ兄貴!これって・・・」

「ああ」

「僕達に宛てた手紙だね」


『ちょっと短気だけど、太陽のように暖かく包んでくれる左之兄。冗談ばかりで困らせるけど、私の心にいつも耳を傾けてくれる総司。そして、時に厳しく時に優しく、私という人間そのものを愛してくれる歳三兄さん。私は、私は、皆に会えて良かったです』


瑠璃の震えた声が、いつしか会場を涙に誘った。

辺りからすすり泣く声が聞こえる。


『ありがとうございました。私は幸せですっ!』


仲間が死んでも泣かなかった男たちがの目を熱いものが覆う。

死と背中合わせで生きてきた人生はもう終わった。

これから先の未来はきっと笑顔でいっぱいだろう。


「くそっ!泣かせやがって」

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