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Time Trip to Another World ~東雲~  作者: 蒼穹の使者
第二章 もう一度
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第45話 二度目の誓い

翌日、瑠璃は昼近くになって目覚めた。

長く深い眠りは今までになく、身も心もすっきりしていた。


「ん、あーよく寝たっ」


瑠璃は昨夜のことなどすっかり忘れ、背伸びをしながら部屋を見渡した。

振り返って時計を見ると11時を少し過ぎている。


・・・あれ?此処、私の部屋じゃない!


カチャッと控えめにドアを開ける音がした。

そこに入って来たのはこの部屋の主人でもある斎藤だ。


「瑠璃、起きたか」

「一さん、おはようございます」


瑠璃の屈託のない笑顔に胸を撫で下ろすと、ベッドの脇に座りその顔を覗き込んだ。

昨夜とはうって変わって頬には色が差し、瞳も良く動いている。


「体調はいいみたいだな」

「はい!・・・あの、サターンはどうなりましたか?」


斎藤はゆっくりと瑠璃に昨日の結末を話して聞かせた。

時折、目を潤ませたり眉を寄せたりしていた瑠璃だったが「よかった」と安堵したようだ。


「幻獣さんたちも、みんなの刀も天に帰ったんですね」

「ああ、乾も元の世界へ戻った」

「私は榊さんを人間にしてしまいましたけど、それで良かったのかな」

「榊が瑠璃に”ありがとう”と伝えて欲しいと」

「本当?」

「ああ、嘘は言わない」


人間になった榊はあの子ども達だけでなく、世界中の子ども達の希望となるだろう。

彼には無償の愛というものが備わっていた。

それをこういう形ではあったけれど、彼の言う愛と正義にきっと繋がるだろう。


「そう言えば、元の世界って現代いまの過去ですよね?現代が変ったから過去も変わったりしていないですよね?」

「それが乾から聞いたのだが、俺たちがいた幕末はこの時代の過去とは繋がっていない別のものだと。瑠璃が心配していた歴史を変えてしまうかもしれないと言うのは単なる杞憂だったのだ」


瑠璃は理解できていないのか、首を傾げ斜め上を見たまま固まっている。

目覚めてすぐに言う事ではなかったのかもしれない。


「と言う事は、私たちは神と人間のハーフで且つ異世界人と言う事になるんですね?」

「・・・そういう事だろう」


これについては非常にややこしい案件である。

異世界と言われるとどうも胡散臭いように思えるが、現にそういう事なのは確かなのだ。

自分で説明しておきながら疑問が増えるばかりだ。


「そっか。まあアレですよね、宇宙も果てしなく広いって言いますから、いろんな星でいろんな人が生活していても不思議はないですし。けど神様っていい加減ですよね。あっちこっちで干渉して抗争だの征服だのって。私たちのお父さまだって・・・」


しまった、妙に瑠璃の脳を刺激してしまった所為か開いた口が閉じられる気配がない。

かといって、「そろそろ」と話を折るわけにもいかん。

俺はもともと此処へ何をしに来たのだったか・・・

そうか、山崎に頼まれて薬を持ってきたのだった。

瑠璃はあの一件で能力を使い果たし、治癒能力が使えなくなっていたのだ。


「一さん?」

「ああ、すまない。山崎がこれを飲めと言っていたぞ」


瑠璃は斎藤が差し出した粉薬を見ると途端に大人しくなった。


「どうした?具合でも悪いのか」

「いえ、元気です。飲まなくても大丈夫なくらいに」


瑠璃の引き攣った笑みを斎藤は見逃さなかった。


「そうか、確か瑠璃は薬が苦手だったな」

「へっ、そうでしたっけ・・・」


斎藤はおもむろに薬袋を破り水を口に含むと、開けた粉薬を自分の口内へ流し入れた。

瑠璃はその無駄のない一連の流れを口をポカンと開けてただ見ていた。

斎藤は口を閉じ、瑠璃の方を向くとニヤリと目だけ笑いググッと瑠璃に顔を寄せると、


「えっ」


瑠璃の顎を取り後頭部を反対の手でしっかり押さえ、唇を開かせる。

有無も言わさぬ速さで舌先を差し込み一気に薬を流し込んだ。

ゴクッという音を確かめた斎藤はゆっくりと離れる。


「デ、デジャブだ・・・」


そんな瑠璃を見て斎藤はクツクツと肩を揺らして笑っていた。

瑠璃が言うのも無理はない、過去に斎藤が弱った瑠璃に同じく山崎から薬湯をもらい飲ませた事があったからだ。


「覚えていたか?」

「そうだ!薬湯を飲ませていただいた事があったような・・・」


頬を朱に染め恥ずかしそうに手で顔を覆う瑠璃を見ると、堪らなく愛おしいと思った。


「ではもう一つ、思い出してもらいたい」

「?」

「サターンを葬った今、これから先の未来も俺と共に生きて貰えないだろうか」

「はじ、め、さん?」

「俺と結婚してほしい、必ず幸せにする。生涯、瑠璃を大切にする」


斎藤は函館の五稜郭を見下ろしながら瑠璃に誓った言葉を、再び口にした。

今度こそは何も二人を隔てるものはない。

死を二人が分かつまで。

斎藤の熱い眼差しに瑠璃は全身が焦がされるような思いだった。

忘れたことは一度だってない、離れ離れになってから何度夢に見た事だろう。

頬を熱い涙が一筋伝った。


「はい、喜んでお受けします」


震えながらもはっきりと紡がれたこの言葉は二人の永遠となる。

命を分け合う二人にはこの上ない幸せが訪れるだろう。


「俺は果報者だな」


これからは穏やかに時間が過ぎて行くに違いない。

ずっとこの手を放しはしない。

永久とこしえに・・・


これで、~東雲~本編は完結とさせていただきます。

後日譚として章を追加し~曙~で数話投稿し完全完結とさせていただきます。一気に追加し完結させますので、後日改めて足をお運びいただけますと幸いです。また、ご感想などいただけましたら大変嬉しいです。誤字がありましたらご連絡ください。見直して投稿していますが、自分では気づかない部分が多々ありますので・・・(^_^;)

次回作への糧とさせていただきます。宜しくお願いいたします。

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