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Time Trip to Another World ~東雲~  作者: 蒼穹の使者
第二章 もう一度
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第38話 真意とは…

今日は大久保社長の知人の依頼で通訳をしている。

彼らは各国の福祉について学んでいるらしい。

誠は福祉も通訳業務もやっていない。なのに…


「歳三兄さん、今度の通訳はうちの会社とどう関係しているんでしょうか。福祉関係も始めるんですか?」

「いや、なんも関係しちゃいねえよ」

「え、だったら何故」

「仕方がないんだよ。勇さんの知り合いだから断われなかった。それだけだ。悪いな忙しいのに」


大久保社長は頼まれたら断われない人だ。

その大久保社長に頼まれた歳三兄さんも断われない人で、そんな私も歳三兄さんから頼まれたら断われない。


こんな経緯で私は奮闘しているわけです。

聞き慣れない単語に冷や汗をかき、四苦八苦しながら。

無難に午前中の訪問は終わった。

お役所ばかりを回ったので気も使いぐったりしている。

午後は老人ホームと児童養護施設で終わり。


「土方さん、午後もよろしくお願いします」

「はい!こちらこそよろしくお願いします!」



老人ホームではその名の通りご老人達の暮らしぶりや、施設の仕組みなどを学んだ。

私もかなり賢くなった気がする。

そして、最後の訪問先に着いた。


『光の里きぼう園』


18歳までの児童たちが暮らす施設だ。

親や親戚が何らかの理由で育てることの出来ない子ども達が暮らす。

死別や育児放棄、貧困などの理由があげられる。


学校が終わったのだろう、続々と児童たちが帰ってきた。


「お父さん、お母さんただいま帰りましたぁ」


ここでは施設長と寮母さんをお父さん、お母さんと呼ぶ。

みんな兄弟、大切な家族と教えられている。

玄関には大きな額縁に【親愛】という書が飾ってあった。


「しんあい・・・」

「お姉ちゃん教えてあげる。しんあいって意味はね、すべての人に親しみと好意を持ち愛情を育みましょうって事だよ」

「へえ、凄い。素敵な言葉ですね」

「うん!聖兄ちゃんが教えてくれたの」

「聖兄ちゃん?」


小学生低学年くらいだろうか、その言葉の意味を素直に受け止め彼なりに理解している。

ここは子どもたちに温かい、そう思った。


施設長の話を通訳し子どもたちの部屋を見学した。

これでやっと私の仕事も終わりだ。

そう、私は肩の荷が下りた事で完全に油断していた。

誰かが私を見ていてことに全く気づかなかったのだ。


「Thank you,Have a nice day~」


なんて言って、お客様をタクシーで送り出していた。

そして、施設長さんに挨拶をして帰ろう。そう思っていた。


「何故、此処に居る」

「え?」


振り返ると、予想もしない人物が立っていた。


「っ!?さ、サターンっ」

「おい!此処で、この私の姿を見てその言い方はないだろ。場所と機をわきまえてくれ」

「へ?」


身構えていた私はまさかの返答に肩をすかされた気分だった。

そして、何よりもいつも感じていた冷気と嫌悪感が…無い。


「今の私は榊 聖だ。サターンではない」

「えっと・・・何故、ここに?」

「ここに用があった」


見ると榊の手には大きな紙袋が下がっていた。

それよりも私はサターンと普通に会話をしている!


「あっ!聖兄ちゃんだぁ~」


子どもたちが榊目掛けて駆けてくると、すぐに彼を取り囲み話を始めた。

まるで父親に話すように学校であった事、先生に褒められた事を嬉しそうに話している。


うそ…どういう事?まさか子どもたちをっ!?


子どもたちが離れたのを確認し、瑠璃は榊に問う。


「子どもたちを、どうするつもりなんですか!」


榊は瑠璃の言葉を聞くと、不快感を露にした。

瑠璃は反射的に一歩距離を置いた。


「どうするつもりも、ない!」

「・・・」

「子どもには私の運命とは関係ない。ただ、愛に飢えた者同士が支え合っている。それに手を貸している、それだけだ」

「其処に作意はないのですか」

「子どもに、人間に私の運命は交差しない。交差しないものを、どうこうする義理も権利も私にはない」


そう言って榊はため息をついた。

私には理解出来なかった、何が何処までが本当なのか。

だって榊はサターンなのだから。


「どうして私なんですか!私の能力(ちから)を何に使うんですか!人間を宇宙を制服する為なんでしょ。私は死んでも貴方のものにはなりませんから!」


そう叫ぶと、瑠璃を囲うように幻獣たちが姿を現した。

瑠璃に近づくなと、瑠璃に触れるなと威嚇をしている。


榊は自嘲気味に笑みを作ると黙ってその場を去った。

幻獣のお陰なのか榊の意思なのか、其処に不穏な力はなかった。

ただ、榊の背中が寂しそうに見えてしまった事に驚いた。


「どういう事?サターンの運命って何?子どもたちへの支援は彼の善意なの?どうして善意があるの?」


サターンなら前のように誰にも気づかれずに、時間や意識を操り瑠璃を追い込む事が出来たはず。

なのに、何故。


瑠璃は分からなくなっていた。

実際、サターンが誰かを傷つけた所を見ても聞いてもない。

あの幕末の時代、サキュバやインキュバスのような悪事を犯したのだろうか。

彼らの仲間だと言うだけで自分たちはサターンを葬った。

悪だと疑うこともなく、葬ったのだ。

榊はサターンは本当に自分たちの敵なのだろうか。

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