第16話:目的地はどこでしょうか?
目的地はどこでしょうか?
園宮公園
この公園は俺が生まれる10年程前に作られた公園だ。
歴史は精々20と数年程度。
当時の町長が憩いの場所として作ったようだ。
こうして今もハイキング気分で登っている俺たちや、公園を利用しているほかの人たちを見るに、ちゃんと利用されているところを見るといい公園なのだろう。
とはいえ、夏の山登りは舗装された道であっても辛いものがある。
いや、舗装されていてコンクリからの照り返しがある分きついのかもしれない。
山道のあるきにくさとどっこいか……。
「あついー」
「あはは……。もうちょっとだよ」
「夏でござるなぁー。本当に」
「小夜。暑いっていうな。もっと熱くなる」
小夜、桜乃、園田も流石にこの暑さには堪えているらしくぼろっと口にしている。
だが、打って変わって……。
「この程度で暑いか。十分すごし易いと思うがな」
「あはは、僕たちはもっと厳しい環境にいたからねー。でも、こうやって防護壁を利用しないでいると汗ばむねー」
宇宙人たちはこの程度楽なものらしい。
まあ、宇宙ほど生活に厳しいところはないだろうしな。
しかし、話をこうして聞いていると防護壁を利用しなくてもといっているから、生まれ育った環境は意外と似通っているのかもしれないな。
と、そんなことを考えながら山を登っていると、先に登っていた登山客の人たちがこちらを見て挨拶をしてきた。
登山でのあいさつはマナーである。
なので……。
「「「こんにちはー」」」
「学生さんたちでハイキングかい? 水分は取るようにね」
「はい。注意します」
傍から見れば学生たちがハイキングをしているようにか見えないよな。
だが、中身はラノベ作家とオタクと魔法少女とクール系プラモ好きとロリ型宇宙人とイタチ型宇宙人という奇天烈な取り合わせだ。
なんだこのパーティー編成は。
もう俺頭痛が痛いって感じか?
そんなことを考えつつ気がつけば山頂に到着していた。
「うわーすごいね」
「そうでござるな」
「山自体は高くないけど、外に障害物もないから意外と周り見えるでしょう」
「そうだな。宇宙船から見る景色とはまた違った趣があるな」
「そうだね。これが風情ってやつかな」
全員思い思いに山頂から見える風景を楽しんでいる。
俺も自宅がある方向を確認しておく。
特に問題はないようだな。
宇宙船が突き刺さっているとかそういう頭の痛い現象は起こってないようだ。
さて、風景を楽しむのもいいが……。
「みんな。その辺で見学はやめて、光点のヒントになりそうなものはないか? 俺にはここは普通の広場にしか見えないな」
ここに来たのはロフィーがいう変な光点がある場所のはずだが、特に何も怪しい物はない。
あるとすれば、休むためのベンチと記念碑があるぐらいのものだ。
「そうでござるなー。例えば、記念碑に秘密のボタンがあるとか……」
「あ、それありそう」
「え?」
そう言って3人は記念碑を調べ始める。
いや、そんなわかりやすいものがあったらほかの誰かに発見されてるだろう。
まあ、口を挟むのは野暮だし、気が済むまでやらせるとして……。
「誠子はどうだ?」
「私もさっぱりだな。山頂は気持ちがいいぐらいにしか感じない」
「で、ロフィーは? 光点があるっていうなら、もうこの光景は見えてないよな?」
そう、この公園を覆うほどの光点でどこが中心かわからないものだ。
だから視界がホワイトアウトしててもおかしくないはずだが。
「そういわれるとそうだよね。僕の視界ははっきり開けている。見ている。光に包まれて見えないってことはない。なんでだろう? 春香に小夜はどうだい?」
「え? 私も何も。普通に見える」
「私もだね」
「「「……」」」
いきなり詰んだな。
さて、このままだとロフィーはしょっ引かれるのだが、あそこまで言って何もなかったっていうのは何かおかしい話ではある。
それは誠子もわかっているようで首をかしげている。
「ふむ。上下でござろうか?」
すると不意に園田がつぶやく。
「上下って、ああそういうことか。高さが違うか」
「そうでござる。山頂のあるいは上。つまり雲のところや、逆地下というのは無かろうか?」
「え? 上空は分かるけど地下だと光点ってわからなくない?」
「実際に光っているわけではないでござるからな。認識できる者は限られている。それを考えると地下でも特におかしくないでござろう」
「なるほどな。英雄の言う通りだと思う。ロフィーや春香、小夜は私たちが感じることができないエネルギーを視覚的に認識しているというわけだろう」
「うん。よくわかんない」
「ごめんなさい。私もよくわからないな」
まあ、見える見えないの理由を説明しているだけだしな。
矛盾点は探せばいくらでも見つかるが、それでは先に進まないからな。
仮説を立てて調べてみるしかないだろう。
「何もなければそれに越したことはないさ。安全を確認するためにしっかり調べようって話だ。それで、上空の確認はできるのか?」
「うん。その程度なら僕が飛べばいいんだし」
ロフィーはそういうなり、いきなり空中に浮かんで上空へと急上昇していく。
いや、こんなところで飛ぶなよ。
「大丈夫なのか?」
「流石に個々の人たちに見つかるような真似はしないさ。私たちは今のうちにここら辺を探してみるか」
「そうでござるな」
ロフィーが上空に行っている間に俺たちは山頂の広場一帯をよく見てみることにする。
山頂はコンクリートの舗装ではなく芝生が植えられていて気持ちのいい場所になっている。
何か隠れそうなものはない。
あるとすれば柵の向こう側か?
俺はそう思って柵からちょと先を覗いてみることにする。
残念ながら何か見つかることもない。
何より柵の先は断崖絶壁の崖でもない。
多少傾斜はきついが降りてもケガをしそうにないぐらいのレベルだ。
まあ、木々が生い茂って降りるのがつらいぐらいのもんだ。
「こっちは全くめぼしい物はないな」
「こっちもでござる」
「記念碑は記念碑だったねー」
「だよねー。誠子さんは何か見つけた?」
「いや。私もバッタを見つけたことぐらいだな」
「「「は?」」」
妙な返答が返ってきて振り返ると確かにバッタを捕まえていた。
ショウリョウバッタという大型のバッタだ。
最近見ないけど、こうして山にはいるんだなーと思っていると、桜乃がズサササッと小夜の後ろに隠れる。
「あはは。虫苦手なんだ。誠子悪いけど近づけないでくれる?」
「ああ、それは済まなかった。元気にやれ」
そう言って誠子はバッタを逃がす。
バッタの寿命ってどれぐらいなんだろう?
一夏だろうか?
そんな変なことを考え始めたところで、空からロフィーが戻ってきた。
「どうだった?」
「全然みえないね。なんでだろう?」
「いや、それはこっちが聞きたい。あとはマイナス高度だよな。地下ってどう調べるんだよ」
「穴を掘るでござるか?」
「お前わかってて言ってるだろう。この町所有の土地に大穴開けられるかよ。捕まるわ。って、スキャンとかできないのか? この山の構造とか?」
「「おおっ」」
俺がそういうと思い出したように声を出す2人。
お前ら本当に宇宙人かよ。
「ちょっと待っててくれ」
「こういうのって影響でないソナー選ぶのって難しいんだよね」
「おい。なんか不穏な話が聞こえたが?」
「ああ、そこまで気にしなくていい。観察をするには微妙な音波でも影響する動植物がいる。そういう話だ。ソナーした結果生き物や植物が死に絶えたりはしない」
ああ、そういうことか。
相手に絶対影響を与えないスキャンのシステムって言われると俺も想像がつかない。
やはり宇宙は凄いんだなと実感しているとスキャンが終わったようで。
「どうやら、この山頂の真下に空間があるな。約30メートル下だな」
「だね。ここには川が流れているのかな? 水源があるね。何か知っているかい?」
川? そんなものあったかと思っていると小夜が口を開く。
「ああ、あるよ。ほら、この公園って登山のハイキングコースと川が流れている下のキャンプ場所とで別れているのよ」
「あ、そうだ。小さいこと遊んだことがある」
「はて? あったようななかったよな? 叶殿は覚えているでござるか?」
「いや。俺はそういうのはしてなかったからな」
俺の人生は二度目だ。
一度目の子供ならわくわくで冒険に行ったかもしれないが、おっさん子供が冒険に行くことはしていなかった。
ハイキングとか言ってもシート広げて読書だよ。
うわ。今考えるととっつきづらい子供だったなー。
と、今はそういう過去のトラウマはいいとして。
「じゃ、次は川の方に行ってみるか」
「そうだね。でも、またここを降りるんだね」
「ま、当然でござるな。日は高いし捜索はまだできるでござるよ」
「でも、無理は禁物だよちゃんと水分補給と休憩をしてから行こう。軽食も持ってきてるし」
そう言って桜乃は準備している携帯クーラーボックスを見せる。
今回の調査は炎天下のことを考えて補給物資を用意しているのだ。
何が起こるかわからない調査だ。
ちゃんと休息をして向かうのは当然だろう。
「そうだな。是非休憩をするべきだな」
「さんせー!」
宇宙人たちは本当に料理に嵌っているようだ。
こういう食文化が育たなかったのはなんでなんだろうな?
あれか地球は宇宙の中で一番食事が美味しいのか?
そんな漫画みたいなネタはないか。
とりあえず、川の近くまで言って休憩してから本番だな。
一体何があるのやら。




