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第13話:解決案

解決案



「何をしに地球にといわれると、普通にそのまま観察だ」

「観察を具体的にいうと?」

「そうだな。何といえばいいのか、地球の全てを調査しに来た。未開惑星だしな。資源とか君たちのこととか。これで通じるか?」

「なんとなく。別に俺たちをどうこうしようって話じゃないんだろう?」

「そうだ。調査という観察が目的だからな。未開惑星に対して手出しは禁止されている。いつか宇宙に飛び出して私たちと交流するのを待っている。そのための観察だな。もう宇宙には進出はしているようだし、いつ接触を図るかというのが議題になっているぐらいだな」


どうやら、地球はもうすぐ異星人との接触が望めるようだ。

凄いことのような気もするが、戦争案件のような気もする。

というか、この世界はやっぱり俺がいた前世の地球とは別物なんだと実感した。

年を取って死ぬまで宇宙人って話は聞いたことないからな。

まあ、政府が隠蔽していたって可能性はゼロじゃないが……。

さて、そこはいいとして……。


「なるほど。二度効くことになるけどそれでそちらのコルペック族のロフィーともめていた理由は?」

「単純なことだ。先ほど言ったように、この地球の調査は私たちロウリィ族が請け負うと星間会議で決定した。なのにそれを反故にして地球に侵入した。だから私は止めたわけだ」

「ふむふむ。先ほど言っていた条約違反ということか」

「その通りだ」


二度聞いたがどう聞いてもこのイタチもどきが悪いとしか言えない。

約束破りというのは日本人というか、国際社会の中で許されることではない。


「この話に何か言いたいことはあるかロフィー?」

『……』


沈黙で返す小動物。


「沈黙は肯定ととるぞ。というか、気になるんだが誠子、このロフィーというかコルペック族っていうのはこういう条約破りをするものなのか?」

「いや、こういうことは初めてだな。だからこそ面倒で戸惑った。まさか春香を巻き込んでくるとはな」

「つまりだ、コルペック族全体かロフィーの単独かはわからないけど、誠子たちロウリィ族が知らない地球の何かを知っているからこそ行動に出たわけか?」

『そんなことないよ』

「ならわざわざ条約違反までする理由がないな。なあ、誠子?」

「確かにそうだな。お互い戦争になりかねない案件だしな。お前は何が目的でこの地球にきたんだ? 私たちが悪影響というのはなしだぞ。接触は避けて見守るといってたんだからな。むしろ接触したのは……」


この小動物だよな。

さて、どうこいつの口を割らせるかなって考えていると、小夜が口をはさんでくる。


「えーっと、詳しいことはわからないけどさ。結局のところ2人は私たちにというか地球に危害を加える気はないんでしょう?」

「それは当然だ。先ほどのトラブルは申し訳なく思っている」

『そうだね。僕も巻き込んで申し訳ないと思っているよ』

「じゃ、ロフィーが無理やり地球に来たのって、何かを感じたからでしょう? このままだと地球がやばいとか?」


ド直球に小夜が聞いた。

おいおい、なんで度胸のあるクール系美女だ。

いや、見た目だけで中身はロボットプラモ大好き男の子だが。

まあ、それはいいとして小夜が聞いたことはある意味こちらも知りたいことだ。


「小夜殿の言う通りでござるな。ロフィー殿がなぜ条約破りしたのか。その理由が地球にあるのは明白でござる。それを教えてはいただけないでござろうか? 誠子殿が把握していない脅威があるのでは?」

「なに? そういうことなら話は別だな。観察しておいて地球が壊滅するなぞ私たちにとっても問題だ。そうならないようにある程度保護するのも私の仕事だ。今回の条約破りについても少しは考えてもやらんぞ?」


よし、ナイスだ園田。

おかげで誠子も条件次第では対応するといってくれた。

ここは畳みかけるべきだな。


「そうだな。俺も地球がピンチっていうなら手を貸す。現地協力者ってやつだ。単独でやるよりましだと思うぞ? 桜乃はどうだ?」

「え? あ、うん。ロフィー君が困っているなら助けたいって思うよ?」


だめだこいつ。

桜乃の基準は善悪ではないのだ。

困っているかどうかなのだ。

まあ、露骨な善悪だとはっきりするんだろうが、決定的な何かが起こるまで相手を悪と断じて敵対することはないだろう。

とはいえ、わかりやすい日本人代表ともいうべきか。

話せばわかる、大事だとは思うが、はっきり断言できないのもまただめなのだ。

いや、桜乃の場合まだ現実に追いついていないっていうのがあるのか?

どのみち、経過観察は必要だな。

オタク文化というかこういうテンプレに慣れていないからこそ、バグりやすいのかもしれない。

そんな評価を下している間に、イタチのロフィーはため息をついて……。


『はぁ、わかったよ。僕一人で調べるのも限度があるからね』


観念したのかロフィーはポツリポツリと条約破りをしてまで地球に侵入したのかを説明し始めた。

まあ、長くなるので簡潔に言うと……。


「不思議な力が地球に存在しているだと?」

『そうだよ。僕にしか感じられないもので、長たちに言ったけど信じてもらえない』

「その感じたというのはどこからだ?」

『君たちロウリィ族がくれた事前調査データの映像の方からだよ』


そういって、空中投影モニターを出して映像を俺たちに見せてくれる。


「すっごい……」

「さすが宇宙でござるな」

「すごいねー」

「……」


園田の言う通り流石宇宙の技術。

物質のディスプレイなど必要ないのだろう。

いつか夢見た技術がここにある。

とはいえ、問題はそこじゃない。


「ロフィーがいう問題の映像はどこだ?」

「えーと、このシーンずっと映っているんだけど?」


ロフィーが出したであろうアイコンには日本のこの町があるところを指し示していた。

だが、俺には何も見えない。


「誠子。何か見えるか?」

「いや、特に何もない。何が見えているのだ? 私たちの多機能スキャンでは何も発見できなかった。今もしてみたが何もない」

『そうだろうね。ほかの皆には見えていない。僕がおかしいって言われたよ。でも、見えるんだ』


一体何が見えていると聞こうと思った瞬間……。


「え? 見えてないの? ここに光の点があるよね?」

「どこ? あー、なんかぼやーっと見えるやつ?」

「いやいや、しっかり光ってるよ?」

「嘘だー。ぼやーっとしているよ?」


桜乃と小夜が何か見えているようだ。

話から察するに光点のようだが、俺にはさっぱり見えない。

園田や誠子に目配せをするが同じように首を横に振る。


「ロフィー。2人が見ているものと同じか?」

『……多分。僕と同じものかといわれると疑問だけど。僕はこの光点を見て物凄く嫌な感じがしたんだ』

「2人はその光点を見てどう感じた?」

「え? ぼやーっとしか見えないし、何かの映り込みじゃないの?」

「私は何か光るものがあったんじゃないかと思ってるけど」


2人はこの光点について特に嫌な感情は持ち合わせていないようだ。

でも、ロフィーはそれを問題だと感じているわけか。


「特定の人にしか確認できないものか……。そういうのはあるのか誠子?」

「いや、今までそういうのは確認できていないが、無視するには……」

「ロフィー殿以外にも桜乃殿に小夜殿がいるから無視できないでござるか?」

「ああ。とはいえ、これを上に行っても与太話として処理されるだけだな。条約破りのコルペック族に現地住民の意見などな」


確かにそうだろうな。

確認できる現象ならともかく、確認できない現象が見つかったから調査の方法を変えるとか言っても頭おかしいんじゃね?としか言われないよな。


「とりあえず、ロフィーの言うことを俺たちだけで調査してみて結果がでればいいんじゃないか?」

「確かにそうでござるな。証拠がないなら証拠を集めるしかないでござる。誠子殿、ロフィー殿の猶予はどれぐらいあるでござる?」

「そうだな……。まだ通報はしいていないから私の裁量なんだが、ロフィーや私がいて地球に悪影響を与えないとも限らない。だが感じが悪いという特定の人にしか見えない光点というのは気になるのは事実だ。しかし、直接調べるのは私たちも条約違反になるのだ。本末転倒もいいところだろう」


確かにな。

見守るっていう話で議決しているのに、それを無視するというのはまずありえない。

となると……。


「おい、ロフィー。お前は条約破りをしてまでってことは違っていた場合は罰を受ける気はあるんだろう?」

『え? ああ、まあね。とはいえ、ばれるつもりはなかったんだけど……』

「はぁ、すでにばれているでござるよ。とはいえ、叶殿の言いたいことがわかったでござる。このまま誠子殿は気が付かなかったことにするということでござるな?」

「園田正解」

「ああ、そういうことね。今回の遭遇はなかったことにして、光点の調査が終わったころに見つけたってことにするわけね?」

「そういうこと」


園田と小夜は即座に抜け道を理解してくれた。


「えーっと、それっていいのかなぁ?」


桜乃はルールが大事ってことだから少し難しい感じだ。

だが、ここでロフィーを処罰して送り返してきても戻ってくる可能性がある。

次は命を落とすことになるだろうな。


「なるほどな。ロフィーにその調査をさせて結果が出れば報告、出なければロフィーを処罰するということか」

「そうだ。まあ、誠子にはロフィーの条約破りを見逃したって汚点が付くことにはなるからそこが問題になるが……」


これは暗に誠子に日本的に言えば法律を犯せといっていることと変わりない。

わかりやすくいえば、泥棒している奴を見逃せと言っているのだ。


「ま、いいだろう」

「軽いな!?」


あっさり了承されて驚いたよ!


「別に監視している星はここだけじゃないんだ。話を聞く限り、現地生物をさらって分解しようという話でもないし、結果次第では特別協力者としてもいい」

「なんで先ほどまであれだけ敵対してたんだよ」

「こいつが攻撃をしてきたからだ。命がかかわれば別だ」


あーなるほどな。


「だが、私としてもこの地球を観察するという義務がある。結果が違った場合はちゃんと罰を受けてもらうぞ?」

『わかったよ』


最初からそれですませろよ。と言いたいが、ロフィー1人だと与太話だったんだろうなー。

そんなことを考えながら不意に時計を見るともういい時間だ。


「はぁー、疲れた。いったん俺の家に戻るか。これからの予定を立てるのにもここだとちょっと不便だ」

「そうなのか?」

「ああ、ここはお店だからなお金を払って居座っているが、飲み物一杯で長いするのはどうもな」


執筆の時でもお代わりとかしているし。


「あ、そうだね。じゃ、移動しよ」

「そうだね」

「そうでござるな」


ということで、宇宙人どもを連れて今度は自宅へと会議場所を移すのであった。

とりあえず魔法少女バトルは回避できたのか?





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