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第11話:物語に介入する

物語に介入する



『……の、……なう殿! 叶殿!』

「おう。どうした園田」


俺は園田の声でようやく我を取り戻す。

俺も相当動揺しているみたいだ。


『どうしたではないでござるよ。そっちは大丈夫でござるか! こっちは小夜殿と合流したでござるよ!』

『叶! 聞こえる!? 春香がいないの! 電話に出てくれないの!』


どうやら無事に小夜とは合流したようで電話をかけているふりをしているようだ。

さて、俺はどう伝えたもんか。

とりあえず、証拠の動画を取りながら……。


「俺の目の前に桜乃がいるから心配するな。とりあえず、事故?が目の前で起こって混乱しているみたいだから電話に出ないんだろう。見たところケガはない」

『本当? よかったー。で、場所どこ?』

「えーと、場所は……」


ここは場所を伝えるべきか?

下手をすれば巻き込まれる可能性がある。

敵も違うんだから全員そろって全滅もあり得る。

そういうのは避けておきたいし……。


「いや、事故現場に来るのはまずいだろう。駅前の喫茶店に集合ってことで。もう警察がきて整理されているし。というか、お巡りさんがこっちに来た」


とっさにそんなウソをつく。

流石にお巡りさんがいるって言われたら話を続けるわけにもいかないだろう。

何よりそこまで嘘でもない。

この交差点は交番があって事故処理に出ているみたいだ。

俺と同じように驚いている人の誘導も行っているから問題はない。


『わかったでござる。そっちで待つでござるよ』

『え、英雄いいの!?』

『いいもなにも警察が来ているなら心配はないでござるよ。というか下手に迷惑をかけると捕まってと夏休みが……』

『よし、喫茶店で待ってるね!』


なんともまあ、切り替えの早いことで。

まあ、小夜はこれで安全だろう。

何せ夏休みがかかっているからな。それを無視して出てくるような真似はしないと、今までの付き合いでわかる。

残念クール系美少女だったな。

と、そこはいいとして、俺は桜乃の様子を伺うと、足元に転がってきたマスコット系小動物を抱きかかえていた。


『その腕に抱えているものを渡せ』

「え? あの、さっきこの子を投げていませんでしたか?」


おーう、流石は主人公。

ちゃんと地球的動物愛護の精神に乗っ取って先ほどの行動を問いただしている。

確かにこの生物が地球内生命体ならその理屈は通じたが、どう見ても地球外生命体なので適応外です!

と、俺の心の叫びが通じるわけもなく、相手のエロい衣装の女性は……。


『投げたことは間違いない。そいつは私たちにとっての敵だ。殺さなくてはいけない』


なぜか普通に?受け答えしてくれている。

あれー、地球人類抹殺みたいな話はどこ行った?

俺の疑問をよそに小動物もどきの殺害を聞いた桜乃は険しい顔をして……。


「そんなひどいことしないでください。この子が何をしたっていうんですか……」


ちょっと弱気ではあるがそう答える。

なんでそこで頑張るんだよ。

とりあえず渡してしまえよとおもうが、それでゲームオーバーという可能性もあるし何とも言えない。

俺はどう動いていいか悩んでいると、彼女はこう告げる。


『この星は私たちのものだ。だからそいつは必要ないし、お前が何か言う権利はない』


ああ、このセリフ聞いたことあるわ。

これを聞いて桜乃は怪人を敵と認めた。

はたから聞いてもただの傍若無人でしかない。

そして……。


「違う! そんなこと!」


そういって桜乃は光りだす。

腕の中にいる小動物が何やら桜乃の顔を見て動き、エロい衣装の女性も驚愕の顔をして……。

閃光となって気が付けば、桜乃は魔法少女の格好をしていた。

なるほど。魔法少女が攻撃されないのってこの閃光のおかげかーとかくだらないことを考えていると、桜乃はマジカル?ステッキを持ってエロい衣装の女性に向けて。


ドンッ!


っと、光弾を放つ。

マジカルバレットっていえばいいのか?

不意を突かれてその光弾をまともに受けたエロい衣装の女性は後ろに吹き飛ぶがすぐに体制を立て直す。


『やはりこの星は危険だ。お前たちは人は根絶やしにしなければ……』


とか物騒なことをいっている。

まずい、このままでは敵対ルート一直線だ。

何か俺には違和感がある。

そして何より敵対するのは俺の今後の生活を考えるとありえない。

だからこそ、迷わず足を踏み出し……。


「その話ちょーっとまった!」

「え?」

『む?』


俺の登場により動きが止まる。


「桜乃落ち着け。いきなり攻撃するとか暴力事件だぞ」

「ふえっ!?」

「そしてそちらの方。いきなり連れが攻撃してしまい申し訳ありません。心よりお詫びいたします」

『ふむ。お前は話が分かるようだな』

「ええっ!?」


俺も驚きだよ。

このまま攻撃してくるかと思えば、意外と話しを聞いてくれた。

何とか話し合いにもっていくんだ!

頑張れ俺! 爺さんまで生きた経験を生かすんだ!


「正直私たちも状況の把握ができていません。一度ゆっくりお話しできないでしょうか? 桜乃が抱えている動物に対してなにかおありなのでしょうが、私たちは事情をしりません。一度ご説明していただけないでしょうか?」

『ふむ。確かにその通りだが、その少女が守る道理もないだろう?』

「いえ、我が国というかこの星では基本的に人に物理的な危害を与えない動物を殺すことは罪に問われることなのです。ですから……」

『ああ、なるほど。確かにはたからみれば動物を嗜虐しているようにみえるか。だから私に敵対したということか? そうなのか少女よ?』

「え、あ、はい」

『ふむ。さすが汚いな。コルペック族が。現地人をそうやって盾にするつもりだったか』

『違うよ。偶然だよ。彼女がこんな力を持っているなんて思ってなかったさ。でも、君の行いは止めてみせる』


なんか聞いたこともない男の声が聞こえる。

多分状況からして、桜乃が抱えている小動物なんだろう。

マジで頭が痛くなってきたが、まだ倒れるわけにはいかない。

俺の平穏な生活のためだ。


「お互いに誤解があったようですし、お話の席を設けてはくださいませんか?」

『君の言う通りだな。コルペック異存はないな?』

『いいよ。今戦いになっても、周りに被害が出るだけだし』

『おっと、そうだったな。ちゃんと修復しなければ』


そういうとエロい衣装の女性は腕を振ったと思ったら、交差点の真ん中に空いた穴が綺麗さっぱり無くなって、衝撃で割れていた窓も俺が見る限り全部もとに戻っていた。

なんだよこのミラクルな状況。

警察官たちや野次馬もぽかんとしている。


『ちゃんと記録も変えないといけないよ』


小動物がそういうとなんか緑の光があたりを包んだと思ったら、警察官や野次馬が一斉に離れ始めた。


『まったく力任せはやめな』

『小細工ばかりのお前たちに言われたくない』


なんか二人の関係はあまりよくなさそうではあるが、いきなりぶつかることもなさそうだ。


「とりあえず、桜乃。その姿変えられるか?」

「え? えええーーー!?」


魔法少女の格好をしていた桜乃はその場でうずくまってしまう。

どうしたものかと思っていると小動物がアドバイスを送って衣装が解除された。

幸い、通行人たちは魔法少女桜乃やエロい衣装の女性の姿は見えていないようで普通に通り過ぎる。

よかったな。見られていたら世間的に終わっていただろう。

まあ、認識阻害は現実でも聞いているようだな。


「えーっと、あなたの格好もどうにかなりませんか? あとなんてお呼びすれば?」

『おお、そうだな。この格好は君たちにとっては不自然だな。ちょっと待ってくれ』


そういうと、すぐに彼女も閃光に包まれたかと思ったら、普通にきれいな蒼髪セミロングの美少女に変身した。

ちっこいが。


「名前だが……。えーとこの星の言語で和野誠子だ。誠子と呼んでくれ」


日本人っぽい名前だなおい!


「私は恋乃宮叶といいます。叶と呼んでください」

「あ、私は桜乃春香って言います。春香って呼んでください。それとさっきはいきなり暴力に訴えてすみませんでした!」


桜乃も気がつけば元に戻っていて挨拶をすると同時にすぐに謝る。

俺の言ったことをちゃんと理解しているようだ。

いやー優等生ってすごいな。

こういうわけのわからない状況でもまともに動けるのか。

俺なら混乱しっぱなしだね。


「いや、気にするな。私もこちらのことを知らな過ぎた。もっと穏便にそのコルペックをやるべきだった」

『ふん。やれるものならってみるといいさ』

「はいはい。その前にちゃんとお話しをさせていただいていいですか?」


ここでドンパチやられても迷惑でしかないので慌てて間に入る。


「そうだな。私は理性ある種族として対話を重んじる。お前とは違ってな」

『いいじゃないか。ちゃんと正式に話し合いで決着しよう。僕だってあれは不本意だったんだし』


ということで、俺と桜乃はこの不可解な地球外生命体を連れて園田と小夜が待つ喫茶店へと戻る。



園田と小夜は俺たちが見てわかる場所でお茶をしていたようで、俺たちを見つけると手を振ってくれる。

しかし、先ほどのことを考えれば店を飛び出してもおかしくないが……。


「すみません。彼らは友人なんですけど、記憶操作がはいっているんですかね?」

『うんこの町、そうだな半径10キロは記憶操作させてもらっているよ』


MIB見たなぴかっとやるよりも広範囲だなー。

まあこれぐらいできないとすぐに宇宙人は露見していることだろう。


「彼らの記憶を戻すことはできますか?」

『できるけどいいのかい?』

「いいです。この話し合いを公平に聞く人は多い方がいいですし」

「しかし、彼らが私たちのことをばらさないとも限らないが?」

「ばらしても誰も信用しないでしょう。記憶をいじれるし、証拠もなくなっているんですから」

『「確かに」』


変なところで仲がいいんだなーと思いつつ。

俺たちは喫茶店に入ってこの2人の事情を聴くことにする。


さーて、なんとか俺に被害が及ばない解決方法があるといいんだがな。

相手の力を見るに俺の力なんてないにも等しいだろうし、話術で乗り切るしかない!

えーい、転生してるんだから何かチートよこせよな!!



対話が大事。

そうです、話し合いこそ!

だってほかに何もできないもん。

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