表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王は何度も繰り返す  作者: 稲荷竜
エピローグ そして『いつか』の物語
121/122

第119話 『彼ら』の物語 前

 ドラクロワ王国歴。


 王国樹立から五十年、初代女王がみまかったあと、国の北西部で大規模な反乱があった。

 この反乱は『必要もないのに女王の遺言を理由に軍備を進め、税を重くする国家に対しもの申す』という目的で行なわれた。


『軍備を進めている国家』に『民』が反乱を起こすというのは、ありえない。

 何せ強い者たちは『貴族』として国家側に立っており、しかも軍備を進めているということは、魔力の強くない一般兵さえも手強いということだ。

 絶対に勝てない相手に刃向かうなどという馬鹿なまねはさすがにできない。

 いかに税が重くともそれは『ゆっくり死ぬ』であって、明らかに強い相手に立ち向かって『すぐに死ぬ』のよりはマシと思う者の方が多いからだ。

 それゆえに起こりようのない反乱であったが……


 指導者がいた。


『国家に対しもの申すことは、国民の権利であり義務である』

『主君に忠誠するならばこそ、忌憚なく意見を申し上げねばならない』


 そう述べる指導者は実力と実直な人柄で民を率いて反乱を起こし、一定の戦果を挙げた。


 最終的に国家はこれをうち倒すのではなく、貴族と遇して国家に受け入れなければならなくなった。


 そうして興ったのが『アルナルディ』という名前の家である。

 赤毛の偉丈夫を当主として始まったその家は、ドラクロワ王国の強力な矛となり、いずれ来る戦いにおいて重要な働きをすることになる。



 また十年近くがすぎたあと、王家は『聖女』を見出した。


 属性の数や魔力量により貴族が貴族たるこの国家において、四属性を持つその少女は貴族のように遇されることになった。


 この時期にはもう貴族として一定の権威を持っていたアルナルディ家が後ろ盾に立ち、この少女は貴族として生きていくことになる。

 ……それから、聖女が活躍したという記録はない。

 ドラクロワ初代女王の墓守というのが、聖女の唯一の役割であり、公式に残されたたった一行きりの記述だ。



 その王国に『学園』が出現したのは樹立から百年が過ぎたころだった。

 ひな形はあったのだが、それはまだ『学園』と呼ばれていなかった。というのも、貴族子女を通わせる強制力がなく、家庭教師式の教育を越えるメリットを示すことができなかったからだ。


 貴族界隈においてその学園にかかわるポストはあったものの、それは閑職の扱いだった。

 生徒として来たとして家督継承から離れた三男だの三女だのだけだし、それら人物は就職口を求めてくるのみであり、『より高みを目指そう』などという意思を持つ者は滅多にいなかった。

 いたとして、学園中に蔓延する『勤勉な者を厭う空気』に合わせざるを得ず腐っていく……そういうのが常態化していたのだ。


 これを正す者が出現したのがこの時期であり、その人物は理知的で穏やかで、しかし学園の改革を断行した。


 もちろん、簡単にことは進まなかった。

 けれどその人物はあきらめなかった。


 蔓延する『怠惰という名の強制力』と戦い、革新的な魔術理論を発表していった。

 学園そのものに『貴族が第一子をあずけるだけの魅力』を持たせつつ、その受け入れ体勢を確立していくのに、その人物は一生を費やすこととなったのだ。


 そのかいあって、学園は若い貴族の社交の場となった。


 だがその人物の真の目的は、『多くの貴族に利用される、貴族交流のための重要な場』の提供ではなかった。


 多くの貴族……いや、平民でさえも『家を受け継ぎ、守る』ということが強要される世の中だった。

 人の将来に自由などはない。長子は家のやっていた業務を受け継ぐ。それ以下は婿入りだの嫁入りだの、あるいは領主の兵だのといった仕事をよそで見つけ、長子が病没などした場合には家に戻って家業を継ぐ。


 そういった世の中で、彼の真の目的はとても声高に言えないものだったのだ。


『すべての者に、道を選ぶ自由を』などと。

 ……だが、ほんの一部の者だけが知る、その人物の真の目的には、さらに裏の意味があることは、誰も知らない。


『自由に道を選べる状況にあって、それでも家業を継ぐことを選ぶのならば、それは、ただ言われるままに道を選ぶよりも、よっぽどすばらしいことだ』


 彼の考えは革新的すぎて多くの者には理解できない。

 彼もそれを理解していた。

 だから、何も言わず、仕組みだけは形作ったのだ。



 ドラクロワ王国から東にある砂の大地に一人の男が降り立った。

 その男は砂漠に無数にあった民族をまとめ、王になった。


 簡単なことではなかったはずなのだが、『急に来て、急にそうなった』としか言えないほどの急激さで、その男は砂漠の大地に王国を作りあげてしまったのだ。


 男にまとめられた砂漠の民の中に、こんな話が残っている。


『そのお方は、まるで、生まれついての王のようであった』


『陽光の王』『偶像王』『生来君主』などと呼ばれるその男は、実名よりも異名の方が後世において通りがいい。


 逆に、広大な砂漠に散らばる思想も習慣も違う人々をまとめるという偉業を成した男にしては、あまりにも本名が残っていなさすぎるが……

 それは、砂漠の民たちが『偉大なる者』の名を呼ぶのを畏れ多く感じたからというのが理由だとされている。


 そして時が流れ……


 ドラクロワ王国に二人の王子が生まれ……

 オールドリッチ領に、一人娘が生まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ