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魔王は何度も繰り返す  作者: 稲荷竜
十八章 まばゆきもの
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第117話 ドラクロワ王国の起こり

 魔王アンジェリーナが行ったのは手駒を増やすことだった。


 そもそもここがどこなのかというのがわからない。

 いや、時系列はわかる。『アンジェリーナ』が生まれるよりも過去の世界だ。


 だがどうにもドラクロワ王国もないわけだし、地名とか、勢力図みたいなものが、彼女の知るものとはだいぶ変わってしまっているのだ。

 これを整理しないことにはオーギュスト……そしてともにあの『浮島から放たれた黄金の光』に呑まれたエマ、ガブリエル、バスティアン、バルバロッサたちを探すこともままならない。


 もしも探索だの遠見だのという効果がある魔導具でもあったなら、あてもなくこの広い大地を歩き回ることをしなくてもいいのだが……

 そういう便利なものがそのへんに転がっているわけもなく、もともと王であった彼女は、人を操り、遣わす方が、一人でさまようよりも早期に仲間たちを助け出せると考えていた。


 それが国興しに相当するというのはわかりつつも、彼女は断行することにした。


 闇の魔術による人心掌握。


 魔王の力は十全とは言えなかったが、彼女は『力』を多少切り捨ててでも『記憶』を取り戻すことができた。

 ならば戦いの経験はその身に宿っている。……かつてのように魔力撃を放ちまくって物理的に他者を降すというのはまあ無理だったけれど、たいていの組織には『頭』があって、そこを抑えてしまえば手足は従うものだ。


 アンジェリーナは捜索隊の規模を広げていった。


 だが、オーギュストたちは見つからなかった。


 するとまだまだ広げていかざるを得なくなり、やはり大規模な組織を率いる羽目になり、それは国家と呼べる規模までふくれあがっていった。


 この時代にも王国らしきものもあったのだが、それは『でかい豪族』のようなもので、多くの諸侯を組織して統一された意思のもと動かす『王家』とはほど遠いものだった。

 かなり大きな組織を編制してなお誰も見つからないゆえに、アンジェリーナは放っておいても自動的に人捜しをしてくれるシステムとして、王国を興すしかなかったのである。


 ……長い年月が過ぎていく。


 誰も、見つからなかった。


 興った王国の名は『ドラクロワ』とした。

 それはもちろん、仲間たちに見つけてもらうためだ。

 あるいは『クリスティアナ』とか『オールドリッチ』とか、あるいは『アンジェリーナ王国』とかにすべきだったのかもしれないが、なんだかそういうのは悪ふざけに思えてしまって、仲間たちには逆に怪しまれそうな、そういう感触があったのだ。


 同時に、使命にとりかかる余裕もできた。


『始まりの魔王を倒す』


 ……アンジェリーナという肉体におさまった魔王は、きっと、あの時代まで生きることができないだろう。


 また時間移動の手段が見つかれば話は違うかもしれないが、あてはなかった。


 ……いや、術式自体は記憶を取り戻した今だとどうにでもなるのだが。

 肝心の『光の魔力』のあてがない。


 あれは、ある時点から急に人の側に現れたものだったはずだ。

 魔族の侵攻に抵抗するため、人が神に祈った結果授かったというが……


『アンジェリーナ』の生まれた時代にも『宗教』はもちろんあった。

 だが、その宗教とはどうにも、あの『光の魔力を与えた神』を祀る宗教は、色合いが異なる感じがするのだ。


 ……あの浮島。


 島を空に飛ばすまでは、アンジェリーナもどうにでもできそうだが、あそこから放たれた黄金の光で過去に戻されたのはよくわからない。


 ……ともかく、わからないことを考えるよりも、未来に『始まりの魔王への対抗手段』を残すことこそ肝要だろう。


 アンジェリーナはオーギュストたちを探させるかたわら、魔導具に刻むべき術式の構築を開始した。

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