第九十一話「聖鉱石ジニア」
しばらく迷宮内を歩いていると、魔物に出くわした。
スケルトンだ。
かなり高品質そうな鎧と武器を身に纏っている。
二体が剣を持ち、後ろの一体が弓矢を持っていた。
果ての迷宮というだけあって、スケルトンでもかなり強そうだ。
後ろの弓兵はニーナとナナの魔法に任せ、俺とルインとアカネで前方のスケルトンと戦う。
剣を引き抜き、《筋力強化》を使う。
ルインも《宝剣エクスカリバー》を手に取り、アカネも身の丈ほどの大剣を構える。
次の瞬間、ニーナの魔法が背後から弓兵に向かって飛んでいく。
しかしスケルトンの弓兵はそれをなんとか避けると、弓矢をニーナに向かって放った。
戦闘開始だ。
俺は剣を握り直し、前方のスケルトン一体に向かって駆け出す。
それに対して、スケルトンは剣を正中線に構えて待ち構えるだけだ。
腰を低く落とし、接近すると同時に、下から上へと剣を振り上げる。
それに合わせるように、スケルトンも剣を振り下ろした。
剣が松明の光を反射して、鈍色の尾を引く。
ガキンッと剣がぶつかり、火花が散った。
そして、俺の真後ろからルインが飛び出した。
俺が対峙しているスケルトンの横を取るように、大回りで攻め込む。
「やぁあああぁあああああ!」
声を上げ、気合いを込めながら、ルインは剣を斜めに振るう。
スケルトンはそれに反応しきれず、簡単に引き裂かれた。
目の前のスケルトンが倒れたことを確認すると、アカネの方を見る。
すでにそっちは大剣の一撃で、スケルトンを叩き潰していた。
ニーナとナナの魔法で弓兵も倒されており、ここにいた魔物は全滅していた。
「案外、あっさりだったな」
俺が思わず言うと、アカネが大剣を背の鞘に収めながら答えた。
「まだ第一階層ですしね。普通のスケルトンよりも強かったと思うので、もっと下ると苦戦するはずです」
「確かにそうかもな。気を抜きすぎない感じで進んでいこう」
俺の言葉にみんな頷く。
そして警戒しながら迷宮を下っていき、呆気なく最下層に辿り着いてしまうのだった。
***
最下層にはボスはおらず、大広間に煌びやかな水晶が敷き詰められていた。
「これが聖鉱石ジニアなのかな?」
チラチラと光を発している水晶を見て、ルインが呟いた。
近づくと、より一層光が増す。
軽く触れてみると、若干の熱を帯びているのが分かった。
「温かいな……」
「本当ですか? ……本当だ、なんか温かいですね」
俺のつぶやきを聞いたアカネも近づいてきて、触れる。
それを見ていた他の子たちも、みんな水晶に触れ出した。
「さて、早くこれを持って帰ってあげよう」
「うん、そうだね! アレバさんが待ってるもんね!」
ナナが元気にそう言って、小さめのツルハシを鞄から取り出した。
そしてサクサクと水晶っぽい聖鉱石を掘削していく。
しばらくして——。
「まあ、このくらいでいいだろう」
袋に詰まった鉱石を見て、俺は言った。
俺がその袋を背負って、みんなと来た道を戻ることになった。
迷宮を出て、再び雪原へ。
「ううっ、寒い……」
「これ持ってると少し温かいぞ」
俺は寒そうにしているルインに聖鉱石を手渡した。
まだ若干の熱を帯びている。
「おお、確かに温かい」
「えっ!? じゃあ私にも貸してください!」
「……私も欲しいです」
ルインの反応を見たナナとアカネも聖鉱石を欲しがる。
そんな様子を見ていたニーナが一言。
「そこまで寒くないと思う」
そんなこんなで、来たときよりかは楽に雪原を歩くことができ、俺たちは聖鉱石を無事に持ち帰ることに成功するのだった。




