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【web版】拾った奴隷たちが旅立って早十年、なぜか俺が伝説になっていた。  作者: AteRa
第六章:エルフの国・ミミア王国編

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第七十六話「旅立ち、そしてドワーフの国」

「結局、残ることにしたんだ、デリア」


 俺たちは王都の端でフードを深々と被ったデリアとダラスク国王たちと対峙していた。


 もうこの街は発って、他の国に行く予定だ。

 他の子たちも探さなきゃいけないからな。


「ああ、色々考えたんだがな。やっぱり血は争えないらしい。私も父の血を——そして王族の血をちゃんと継いでいるみたいだ」


 どこかさっぱりした表情でデリアが言う。

 うん、自分の気持ちに整理がついたなら良かった。


「じゃあ、またな」

「ああ。いつか会おう」


 そう言って俺たちはエルフの国を去った。

 次に向かうのはドワーフの国ガンジア王国。

 エルフの国北東側にあるらしく、俺たちは国王にもらった地図を見ながら上へ上へと上がっていくのだった。



   ***



——???視点——


「なあ、待たせている相手がいるんだろ? だったら老い先短い俺に構ってる場合じゃないんじゃないか?」


 赤髪をポニーテールに結んでいる女性に向かってドワーフの老人が言う。

 もうこの言葉は毎日三回は口にしている。

 しかし女性はキッチンに立ち料理をしながら首を横に振った。


「いや、そう言うわけにはいかない。貴方は私の恩人だ。恩はしっかり返す。師匠からもそう教わった」

「……いい師匠を持ったんだな。だがもう十分恩は返してもらったはずだ」

「私はそうは思わない。【聖剣ジジニシア】——それを作りたいんだろ?」


 女性の言葉にドワーフの老人は視線を逸らした。

 それはやはり彼らがその聖剣を欲していることを如実に表していた。


「それよりも夕飯ができたぞ」

「おお、ありがとう」


 そしてその作ったシチューを口にして老人は言った。


「しかし随分と料理も上手くなったな」

「そりゃあ一年以上ここにいるからな。多少は上手くなるさ」


 そんな会話を少し交わすと、二人は黙って夕食を食べ続ける。

 しかし気まずさはなく、二人の間に信頼関係があるのが分かった。


「……なあ、やっぱり」


 老人が再び口を開こうとした直後、家の戸を叩く音が聞こえた。


「郵便で〜す」

「おっ、ようやく来たか」


 その声を聞いた女性は口元を綻ばせ立ち上がり郵便を受け取った。

 このドワーフの老人には妻も子供もいない。

 最初からいなかったわけではなく、すでに亡くなってしまっているのだ。

 それに彼は友人関係をほぼ絶ってしまっている。

 だからこの家に郵便を届けるような人はいないはずだが……。


「それはなんだ……?」


 女性の手には古めかしい本が握られていた。

 その表紙には【英雄伝説】と書かれている。

 なんだと尋ねたのは別に何なのか分からないわけではなく、何でそれを頼んだと言う意味だ。


「ああ、これに【聖剣ジジニシア】のことが書いてあると思ったからな」


 嬉しそうに言う女性は急いでシチューをかき込むと自室にこもってしまった。

 一人になった老人はぽつりとこう言葉をこぼすのだった。


「……なあ、どうしてアンタは俺にここまでしてくれるんだ。アカネ」

これにて第六章の完結です!

第七章は『ドワーフの国ガンジア王国編』となります!

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