第五十八話「新たなる旅立ち」
俺は《宝剣エクスカリバー》を手に、魔王と対峙する。
みんなのためにももう負けられない……!
そう意気込んで、手汗で滑る柄を強く握り直す。
「貴様ぁああああああああ! お前だけは絶対に許さないぞぉおおおおおおお!」
魔王はそう叫び、こちらを射殺さんばかりに睨んでくる。
俺はそれに対してニヤリと無理に笑って言った。
「お前は慢心しすぎた。これで終わりにしてやる」
宝剣を握ると、俺に魔力が、力が漲ってくるのを感じた。
もう、絶対に負けられない。
そして俺は地面を蹴って、魔王と交差して――。
どのくらいの時間が経っただろうか?
一時間や二時間ほどは経ったはず。
そして――激しい戦いの後、最後に立っていたのは俺だった。
「無念か……。どうやら俺は負けてしまったらしい……」
魔王は地に伏せてそう呟いた。
そして彼の身体は砂になっていく。
「だが……最後にこれだけは使わせて貰う!」
全身が消える直前、魔王はニヤリと笑いそう叫んだ。
何をするのかと身構えると、ルルネたち五人の下に魔法陣が展開された。
「なっ……!? 何をするつもりだ!?」
「ふははっ! これでこいつらは超大陸アベルに転移する!」
なんてことを……!?
俺が慌てて止めようとするが、しかし魔法陣は既に展開されてしまっていた。
魔王が消えると同時に、ルルネたち五人は虚空に消えてしまった。
「ああ……! ああああああああああ!」
俺は叫び、地面に蹲るのだった――。
***
魔王を倒してから一年が経った。
すっかりこの大陸アガトスは平和になった。
……が、その犠牲になってしまった少女たちがいる。
「アリゼさん。そろそろ船が出る時間ですよ」
俺の元にルインがやってきてそう言った。
彼女の腰には宝剣エクスカリバーが差さっている。
その後ろからはナナも来ていて、続けてこう言った。
「早く超大陸アベルにニーナさんたちを探しに行かないといけませんからね!」
「……ああ、そうだな。ここまで用意するのも時間が掛かってしまったしな」
アルカイア帝国と、ニーサリス共和国に協力してもらい、俺たちは超大陸アベルに向かう船を用意していた。
「それじゃあ、早く行こうか。――超大陸アベルに」
そうして、俺たちの新しい旅路が始まろうとするのだった。




