二人乗り自転車で出発!
ライフルも多種多様にあるし、マシンガンの類いまで壁に展示品のように掛けられている!
当然、それぞれに適合する弾丸も、山積みで置かれていた。
「おいおい、バズーカまである上に、手榴弾が無造作にどさっと木箱に入ってる! 取り上げた時、他のと絡まってピンが抜けたらどうすんだよ! 危ないだろうがっ」
「お、お母様が敵に殺されたと聞きますし、ご用心のためでは」
瑠衣がようやく、遅すぎるフォローをした。
ただし、セリフが棒読みである。
「多分、近臣の者とかこの屋敷の使用人の過保護な用心だろ。ロザリーの好みは明らかにこっちだ」
古風な武器が並ぶ右手の壁を見て、貴樹は頷いた。
……まあ、後でロザリーが喜ぶだろうから、刀くらいは借りていこう。しかし、どう考えても、自分に向いているのは左手の壁に並ぶ、銃器の類いの気がする。
「よし、決めた! 右手の壁から業物の刀を一振り借りて、後は銃も一丁持っていく。どうせ、どっちも非常用だけど」
「では……瑠衣はマジックロッドをお借りしますわ」
ようやく固まっていた瑠衣も動き出した。
言葉通り、マジックロッドと……それから、各種魔法石を選んでいた。
「これだけで、とんでもない金額になります……あの方の財力はすごいですわ」
手に山盛り持った魔法石を見やり、瑠衣がため息をついた。
「その杖と石をまとめて売ったら家が建つと聞いても、俺は驚かないな。あいつの金銭感覚は、庶民とは桁が違う」
貴樹は確信を込めて応じた。
昔、本人たっての希望で、夜でも営業してる駄菓子屋に連れて行ってやったことがあるが、その時チロルチョコを買うのに、ドヤ顔で一万円札を出した女である。
当時、まだ八歳だったというのに。
「家どころか、地下を含めたこの屋敷が、丸ごと三棟は建ちますわ」
「……あ、ちょっと驚いたかも」
生活費を除いた月の小遣いが七千円の貴樹は、脱力しそうになった。リア充か、あいつはっ。
ちなみに、ロッドは要は魔法の杖で、魔法の指向性と威力を高める効果があり、青い魔法石には、魔力の元となるマナが多量に含まれているという。他のはあいにく、魔法使い初心者の貴樹には用途不明だ。
武装が終わると、貴樹は最後は瑠衣に断り、一人で地下フロアのさらに奥へ走って、念には念を入れてきた。必要ないとは思うが、用心して悪いことはあるまい。
今入手した最後の保険を使わなくて済むなら、それに越したことはないのだ。
「よ、よし! 準備完了だ」
戻った貴樹は、瑠衣と二人で脱出口まで移動し、気合を入れた。
「……あの、この自転車はなんでしょう?」
脱出口は、魔法陣のかかれたただっ広い倉庫のような場所だが、その隅に前夜から置きっぱなしの自転車を見て、瑠衣が首を傾げる。
「これ? これに乗って空飛ぼうかと」
「つ、つまり、魔力行使の媒体ですか?」
「いやぁ、俺は何もなくても普通に飛べるんだ。でも、これで瑠衣と二人乗りしたら、二人で仲良く飛べるだろ? それに、瑠衣は魔力を消耗せずに済む。飛ぶくらいなら俺はもう余裕だし、良いことばかりじゃないか」
本当は抱き合って飛ぶのが貴樹的理想だが、それはさすがに恥ずかしい。
あと、そんなことを持ちかけた挙げ句、瑠衣に「不潔ですっ」などとケーベツの目で見られた日には、死にたくなること請け合いである。
そこで、ヨハンの買い物用自転車の出番というわけだ……これなら、抱き合って飛ぶよりは、だいぶ瑠衣もオーケーしやすいだろうと。
考えてみれば、女の子と自転車で二人乗りした経験もないので、これはこれでドキドキするが。
「瑠衣だけ楽して、申し訳ないですわ」
「いや、本当に飛ぶだけならもう楽勝なんだって。気にせずに後ろへどうぞ」
貴樹は率先して自転車に跨がり、さりげなく促してやった。
「わかりました。では、お言葉に甘えますね」
瑠衣が後ろの荷台に可愛く横座りして、遠慮がちに貴樹の胴に腕を回してきた。
「そ、そうそう……落ちないように掴まってくれな」
「はぁい」
もういきなり、貴樹が腰砕けになるような返事が返ってきた。
なに、今の可愛さマックスの声でされた返事っ。この子は天使かっ。昨晩、このアイデアを考えた自分を褒めてやりたい!
脳内お花畑状態になってしまったが、もちろんやるべきことは忘れていない。
自転車が、外出用の魔法陣の上にあることを確かめた後、貴樹は短いコマンドワードを発した。
「出発!」
途端に、二人を乗せた自転車が、その場から消えた。




