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第80話 決着

「誠司さんが言ってた助っ人って……」

「はい、私です。流華様からお話を聞いて、居ても立っても居られなくなりまして。本日、清掃員に扮して潜入しておりました。遅れてしまい、申し訳ございません」


 流石にこの状況では丁寧にお辞儀は出来ないのだろう……真琴さんは俺に首だけをペコリと下げる。


 礼を言う事はあっても、文句を言う訳もない。とにかく今は、この忌々しいクソ共をぶっ潰して、みんなを助けるための仲間が欲しい。


「英雄様、私は間猿様と咲様を救出致します。英雄様はお嬢様と綾香様を」


 そう言い切った真琴さんは、二人を救出するために目にも止まらぬ速さで接近していく。


 真琴さんはかなり腕が立つような感じがしたが、さっきのひ弱そうな連中と違って、相手は不良――喧嘩慣れしていてもおかしくない。


 そんな連中の元に飛び込むなんて、どう考えても自殺行為だろう。そう思ったが、俺の心配は完全に杞憂に終わる。


 なんと、真琴さんは一人で何人もの不良の攻撃を、いとも容易く捌いていたからだ。


 あの感じなら大丈夫だろう。今のうちに俺は……大切な友達を、そして世界で一番愛している日和に乱暴をしようとしたこいつらに、粛清をしなければならない。


 特に、日和と山吹さんのワイシャツを無理やり脱がせたあいつ……あの紫の髪をした奴だけは、ボコボコにするだけじゃ気が済まない。


「日和……山吹さん……今行くからな!」

「ヒーローの分際で、調子に乗ってんじゃねえぞ!」


 中学の時に俺をいじめていた不良の一人が、雄たけびを上げながら突っ込んでくるのに対して、俺は飛び込んでくるであろう位置を予測して、拳を思い切り振り抜く。すると、丁度不良の顔面を捉える事に成功した。


「このっ……舐めるな!」


 立て続けに、日和と山吹さんを囲っていた不良が襲い掛かってくるが、その攻撃を全てかわし、バランスを崩したところや、足に蹴りを入れてバランス崩してから殴り倒していく。


 あとは……あの紫髪の奴だけだ。


「来るんじゃねえ! この女達がどうなっても良いのか!」

「……てめえ……!!」


 一気に接近して倒すつもりだったのだが、紫髪の男は懐から小さなナイフを取り出して、俺に向けて突き出してきた。


 この……! そんな卑劣な事をするなんて……!


「ははっ! この際だ、この女達の裸だけでも拝んでやるぜ!」

「い、イヤ……来ないで……」


 紫髪の男は、鼻息を荒くしながら、涙を流して震えている日和に向かって手を伸ばす。


 このままでは間に合わない……そう思っていたら、紫髪の男の後頭部に、どこからともなく髪をとかすクシが直撃した。


「いってぇ!? なんだ!?」

「英雄様! 今です!」

「っ……!!」


 クシが当たった衝撃で怯んだ隙を突いた俺は、一気に紫髪の男に接近していく。


 それに対抗するように、紫髪の男は手に握るナイフで俺を刺そうとしているのか、ナイフを突き出してくる。


 だが、それを読んでいた俺は、先にナイフを持っている手にハイキックを入れて、ナイフを強引に叩き落とした。


「な、そんな馬鹿な……!?」

「吹き飛べ!!」


 俺はクルッと回転させて勢いをたっぷりとつけた蹴りを、紫髪の男にお見舞いすると、その衝撃で紫髪の男は後ろに吹っ飛んで、地面をゴロゴロと転がった。


 まだだ、まだ足りない。この程度で……日和と山吹さんを恐怖させた罪を許す事は出来ない。


 そう思った俺は、仰向けに倒れている紫髪の男に馬乗りになって動きを封じてから、ボコボコに殴り始める。


「がっ……やめ……」

「ごちゃごちゃとうるさいのはこの口か? 二人を傷つけようと考えたのはこの頭か?」

「ごめ……ゆるし……」


 必死に謝ってくるが、そんなのお構いなしに俺は手当たり次第に殴り続ける。そんな事を続けていたら、紫髪の男は気絶してしまったのか、ピクリとも動かなくなってしまった。


 正直まだまだやり足りないが……早く日和と山吹さんの無事を確認しないといけないし、出雲さんと猿石君も助けないといけないからな。


「ひ、ヒデ……くん……」

「怖かったよぅ……」

「もう大丈夫だ。よく頑張ったな」


 まるで子犬の様にブルブルと震えながら涙を流す二人を安心させるために、俺は優しく微笑みながら二人を抱き寄せた。


「敵の数はだいぶ減ってる。今のうちに逃げるんだ」

「う、動けない……腰が抜けちゃって……」

「私も……」


 そりゃそうだよな……あれだけ怖い目にあったんだから、動けなくなってもおかしくない。


 なら、一秒でも早く敵を倒してしまわなければ。早く真琴さんと合流しよう。


「俺は真琴さんのところに行ってくる。何かあったらすぐに声を上げるんだ。絶対に助けに来るから」


 俺がそう言うと、二人は何度も頷いて見せた。


 さっきは不覚を取ってしまって、危うく取り返しのつかないことになってしまう所だった……今度こそ、絶対に守ってみせる。


「くそがっ! 強すぎんだろこの女!」

「神宮寺家に仕えるメイドとして、主人を守る術の一つや二つは持ち合わせておりますゆえ」

「真琴さん!」


 あれだけいた不良達のほとんどを一人で倒してしまったのか、真琴さんの周りに立っている不良は、あと三人にまで減っていた。


 その三人は、中学の頃に俺をいじめていた連中だというのは、不思議な運命を感じずにはいられない。


「猿石君と出雲さんは?」

「意識のない間猿様が巻き込まれては危険ですので、咲様にお嬢様のところにまで運んでいただいております。咲様には、お嬢様達の護衛もお願いしております」


 真琴さんの視線の先には、猿石君を日和達のいる場所まで運んだ出雲さんが、二人を抱きしめているところだった。


 出雲さんが近くにいるのなら、こっちは何も気にせずに戦って大丈夫だろう。


「あ、あの人数差を覆すなんて……こいつらバケモノか!?」

「主人やご友人をお守りする為なら、私は喜んでバケモノになりましょう」


 完全に戦意を喪失している不良が相手でも、真琴さんは一切の容赦が無い。言葉通り一瞬で接近すると、そのまま不良を一人気絶させてしまった。


 これで……あと二人!


「舐めんじゃねえ!!」

「くっ!」


 残った不良の二人が、一斉に俺に向かって拳を突き出してくる。それを最小限の動きでかわしていたが、急に俺の右膝が折れてしまい、バランスを崩してしまった。


 くそっ、流石に殴られ過ぎて足に来てるっぽいな……もうちょっとだけ頑張ってくれ、俺の身体!


「どうしたヒーロー! 元気ないじゃないか!」

「それは……どうかな」


 俺はバランスを崩しながらも、なんとか不良の脇腹を目掛けて渾身の蹴りを入れると、不良はうめき声を上げながらその場に倒れた。


 これで……あと一人……!


「そんな……オレ以外全滅……!?」

「ええ。仲間を見捨てて逃げたのを除けば、あとはあなただけです。英雄様、よろしくお願いいたします」

「……はい」

「ひぃ!? 悪かった! オレ達は鬼塚に呼ばれてきただけなんだ! それにお前をいじめてたのもちょっとした冗談だ! だから許し――」

「俺をいじめてた事なんてどうでもいい。てめえらには……俺の大切なものを傷つけた罪を償ってもらう!」


 必死に許しを請うが、そんな事などお構いなしに顔面をぶん殴って地面に叩きつけると、不良は白目を向いて意識を無くした。


 これで……全員倒した。あとは、鬼塚だけだ……!


「……鬼塚、どこに行きやがった……」


 辺りを見渡しても、鬼塚の姿はどこにもない。もしかして……状況が悪くなったから逃げたっていうのか!?


 どこまでもふざけた女だ……さっさと追いかけてぶちのめさないと……!


「くそが……早く、いかない……と……」


 頭では鬼塚を追わないとと思っているのに、それに抗うかのように身体は鉛のように重くなり……そして、俺はそのまま地面に倒れこんで意識を手放した。



 ****



「ふ~……危うく巻き込まれるところだった」


 学校からすぐのところにある駅前の繁華街にまで全速力で走ってきたアタシは、額に流れる汗を拭きながら、大きく安堵の息を漏らした。


 あのままあそこにいたら、どうなるかわかったものじゃなかったし……それにあの状況なら、ヒーロー達はボコボコにされるのが目に見えている。


 ふふっ! ざまぁみろよ! アタシのおもちゃにならないからそんな目に合うのよ!


「あーでも……まだ鬼塚にはやり足りない」


 ヒーロー達に真実を教えたのはいいけど、どうも鬼塚にはあまり効果が無かった気がする。このままじゃ……アタシの復讐は終われない!


「どうすれば、鬼塚に復讐できるか……きゃっ!」


 ブツブツと独り言を言っていると、なにかデカいものにぶつかってしまい、アタシは尻餅をついてしまった。


 いったぁ……おしり、地面に思い切りうったぁ……もう! 人が考え事してるのに邪魔しないでよ!


「ちゃんと前向いて歩きやがれ!」

「なによー! って……あれ?」


 アタシはぶつかってきた奴に文句を言ってやろうと思ったけど、相手の姿を見て思わず言葉を詰まらせてしまった。


 その相手だけど、凄いごつい図体をした金髪のヤンキーで、とても見覚えのある男だった。


「……黒鉄?」

「なんで俺の事を……なんかお前、見覚えあるな」

「姫宮杏奈! 中学と高校が一緒でしょ!」

「……? あぁ、春休みにヒーローをボコす話を持ち込んできた奴か」

「そうよ。で、あんたはこんな所で何してんの? 確か退学になったって聞いてたけど」

「する事が無くてブラブラしてんだよ……美織とも全然連絡つかねーし……あーイライラする……わかったらどっか行きやがれ!」


 吐き捨てる様にそう言った黒鉄は、アタシに背を向けて去っていった。


 連絡がつかないって……そりゃそうよね。鬼塚は黒鉄が邪魔だから排除したって言ってたし。


 ……あっ……良いこと思いついちゃった。これならあの女をズタボロにできるわ!


 そうと決まれば、早く黒鉄を追いかけて話をつけないと!


「見てなさい、鬼塚……あんたの一人勝ちなんて絶対にさせない。アタシと同じように、破滅させてやるわ!」

ここまで読んでいただきありがとうございました。次のお話は明日の夜に投稿予定です。


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