第79話 黒幕とその一味との対決
「美織ちゃ~ん、面白い事があるって言うから来たけど、こいつらはどうすればいいわけ~?」
「男はボコボコにしていいわ。女の方は、あなた達の好きにしていいわよ」
「うひょ~! 最近色々と溜まってたしラッキー!」
鬼塚に馴れ馴れしい態度で話しかける金髪の男は、嫌らしい笑みを浮かべながら、ペロっと唇を舌で舐める。
くそっ……舐めた態度しやがって。でもこの状況、マジでどうすれば良いんだ? 相手は二十人以上はいるこの状況……その中で、明らかに不良といった感じの奴は、ざっとみても最低十五人くらいはいそうだ。残りはうちの学校の生徒で、大人しそうな奴らだ。
きっと鬼塚に脅された連中で、仕方なく協力をしているんだろう。
一方こっちで戦えるのは、俺と出雲さんだけだ……辛うじて猿石君も戦えない事も無いだろう。確実に言えるのは、日和と山吹さんは戦力に入れられないという事だ。
「お~なにこの銀髪の子? 小柄なのに胸デカすぎ! こっちのちょっと暗めの緑髪の子も、むちっとしてていい感じじゃ~ん」
「「ひっ……!」」
「日和と山吹さんに近づくんじゃねえ!!」
「ふべらっ!?」
不良の一人が、ゆったりとした動きで二人に近づこうとした瞬間、俺は不良にハイキックを入れて一発でKOした。
「二人とも、大丈夫か!?」
「う、うん」
「ありがとう桐生君!」
とりあえず二人にケガは無かったのは良かったけど、状況は全く好転していない。とにかくこの状況は完全にこっちが分が悪い……さっさとこの場は去った方が賢明だろう。
そのためにも……まずは敵の数を減らして逃げ道を確保するのが優先だ。
「くらえっ!」
「ぐはっ!? なんだこいつ! 女のくせにつえーぞ!!」
「女だからって舐めんじゃないよ! 友達の為なら……あたしは全力で蹴る! さあ、蹴られたい奴から前に出なさい!」
少し離れた所から、出雲さんの勇ましい声が聞こえてくる。ちらっとだけ視線を向けると、なんと一人で何人もの不良達と対等以上にわたり合っていた。
俺も……負けていられない! この窮地を何とか乗り切ってやる!
「ようヒーロー、お前の事……ずっと殴りたくて仕方なかったんだよなぁぁぁ!」
「くっ!」
小学校の時から俺をいじめていた、逆モヒカンの男は俺の鼻先を目掛けてパンチしてきたが、俺は身体を屈んで悠々と拳をかわした。
俺だって鍛えてるんだ。こんな不良連中なんかに遅れはとらない!
「奇遇だな……俺もお前に仕返しがしたくて仕方なかったんだよ!!」
「がはっ!?」
逆モヒカンの男の足に目掛けてローキックを入れて怯ませた俺は、そのまま腹に拳をめり込ませて倒した。
少しずつ数は減ってきているが、俺と出雲さんが倒したのを合わせても、まだ半分は戦えそうな不良は残ってる。
とはいえ、この調子でいければ何とかなりそうだ――そう思っていた俺の希望を打ち砕くかのように、俺の視界の端っこで、猿石君が前のめりに倒れこんだ。
「ふー……このサル、ちょこまか動いて面倒だったぜ」
「ホントそれな。このサル顔むかつくし、原形が無くなるくらいボコボコにしてやろうぜ」
「猿石君!?」
「間猿! 今行くから!」
「どこに行くのかな~??」
捕まってしまった猿石君を救おうと、俺と出雲さんが一斉に走り出そうとしたその隙を突くように、不良の一人は背後から出雲さんを殴り、地面へと叩きつけた。
「くっ……後ろからなんて卑怯な……」
「ははははっ! これはスポーツじゃねえんだから、卑怯もクソもねえ! 勝った方が正義なんだよ!」
「くそっ! 今そっちに――」
猿石君の事も勿論心配だが、まずは近くにいる出雲さんを助けに行こうとしたら、背後から羽交い締めにされてしまい、身動きが取れなくなってしまった。
一体いつの間に……!? 誰がこんな事を!!
「なっ……てめえ、昼休みの時の!?」
「ひっ……ひひっ……お前を潰すのに協力すれば、鬼塚さんは今回の件を許してくれる……」
「何ブツブツ言ってんだ! 離せ!!」
「お、大人しくしろ!」
「がはっ……」
俺はなんとか暴れて拘束を解こうとしたが、目の前に立った別の暗い男子に腹や顔を殴られてしまった影響で、身体から力が抜けてしまった。
「そこの根暗三人、ヒーロー君とおサルさんが動かないようにしておきなさい。残りの二人は、周りから誰かが来ないかの見張りよ」
「ふざ……けるんな……がっ!?」
「静かにしろ! 鬼塚さんを怒らせるな!」
根暗な雰囲気で同じ学校の生徒である二人の男子は、俺の顔や上半身をボコボコに殴りはじめる。
こんなの痛くない……痛くない……! だから、さっさとこんな奴らから抜け出して、猿石君と出雲さんを……俺の友達を助けに……!
「まだ暴れるつもりか!」
何度目かわからない攻撃のせいで、俺の身体に力が入らなくなってきた。
ちくしょう……こんな奴らに……負けてたまるか……!!
「なーなー鬼塚ちゃん、もう俺達ガマンできねーよ。もういいだろー?」
「ええ。特に……その銀髪の子を可愛がってあげなさい。あと動画を撮るのを忘れないようにね。うふふふ」
少し離れた所で眺めていた鬼塚の言葉に従う様に、不良達は隅っこで震えている日和と山吹さんを囲った。
あいつら……まさか二人に……ふざけるな、そんなの絶対にさせるか!
「いやぁ!?」
「やめて! 助けてヒデくん!!」
「おほー! 良い身体してんじゃねえか!」
「こっちも中々上玉だぜ!」
「めっちゃ興奮するわ!」
何とか拘束から抜け出そうと暴れている間に、不良達は日和と山吹さんの服を剥ぎ取って下着姿にすると、不良達から歓喜の声が上がった。
別の所では、気を失っている猿石君の胸ぐらを掴んで無理やり起き上がらせたり、出雲さんの頭を踏みつけたりしている。
やめろ……頼むからやめてくれ……! これ以上、俺の大切な人達を傷つけないでくれ……!!
「ふふふふふ……良いわねヒーロー君! その絶望に染まった顔! あぁ……もっと、もっと見せて頂戴!」
「頼む……俺になら何しても構わないから……みんなには手を出さないでくれ……」
「あら、素晴らしい自己犠牲の精神ね。それでこそヒーロー君だわ。でも残念……これも全てあなたが居なければ済んだことなのに」
「俺……俺がいなければ……みんなは……」
「そうよ。ヒーロー君がいたから、彼らはここで永遠に消えな傷を負うのよ」
俺の……俺のせいで……大切な友達が……日和が……俺があの時に死んでいれば……みんなは傷つかずに済んだのか……?
そんな俺の心の嘆きを否定するように――突然俺を羽交い締めにしていた男がその場に倒れ、代わりにそこには清掃服を着た爺さんが立っていた。
「な……急に誰!? それよりも、見張りはどうしたの!?」
「……彼なら眠ってもらってます」
ゆったりとした口調の爺さんの声は、とても歳を取った男の口から出るようなものでは無く、とても澄み切った女性の声だった。
この声……聞いた事がある。いや……この声は……!
「あなた達も……おやすみなさい」
突然の想像もしていなかった乱入者に、その場にいた人間の全員が呆気に取られる中、爺さんは俺を囲っていた残りの二人も一瞬で気絶させた。
は、早すぎて何をしたのかわからなかった……。
「あなたは……!」
「ご無事で何よりです、英雄様。さあ……お嬢様とご友人方を救出しましょう」
爺さんはそう言うと、自分の首元を掴み、べりべりと音を立てながら皮膚……いや、皮膚の様に見えるマスクを外し、それを地面に叩きつける。
そうして外界にされされたその顔は――真琴さんだった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。次のお話は明日の夜に投稿予定です。
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