第77話 確証
「もうわかったんですか!?」
やっぱり流華さんにお願いしていた事の報告だったか……わかるの早すぎないか? てっきりもっと時間がかかるものだと思ってたんだが……思わず大きな声が出てしまった。
『ふふっ、速攻で調べてもらったからね~』
「あの……一体どうやって調べたんです?」
『英雄君みたいな若い子は知らなくても良い事よ♪』
こわっ!? これが大人のやり方ってやつなのか!?
「そ、それでその犯人は誰だったんですか?」
『まあわかってるとは思うけど……鬼塚美織って子よ。あとでデータを日和のスマホに送っておくから、確認しておいてね』
やっぱりか……てっきりまた誰かを脅して、そいつにやらせるのかと思ったけど……これに関してはあいつが直接やっていたのか。
『あっ、どうしたの? うん……わかったわ。英雄君、誠司さんに代わるわね~』
え、誠司さん!? 流華さんの近くにいるのか!?
『誠司さんだ。久しぶりだね、英雄君』
「お久しぶりです! 誠司さん、仕事で海外に行っていたんじゃないですか?」
『状況が状況だからね。なんとかスケジュールを切り詰めて帰ってきたよ』
お、おう……さすが誠司さんって言うべきなのか……流華さんもそうだったけど、ホントに日和は愛されているだなというのがよくわかる。
『流華から話は聞いている。ずいぶんと犯人の彼女はやんちゃしているようだね』
「そうですね……絶対に許せないです」
『私も日和や君達を貶めるのは許せない。だから、この事を学校に先程連絡を入れた。なるべく早く対応してくれると言っていた』
え、学校に!? でも……そんな事をしても、学校側なんて大した事はしてくれないと思うんだけどな……。
『それと、なにかあった時の為に助っ人をそちらに送らせてもらった』
「助っ人?」
『そうだ。本人からの強い希望でね。自分も日和を助けたいから行かせてくれって申し出があったんだよ。だから何かあっても大丈夫だから安心しなさい』
よ、よくわからないけど……誠司さんがそう言ってくれるだけで安心できるから不思議だ。
『私達にはこれくらいしか出来なくて申し訳ないが……日和をよろしく頼む。そして、君達が笑顔でまた屋敷に来てくれる日を楽しみにしているよ』
「はい、ありがとうございます!」
その言葉を最後に、誠司さんの声は聞こえなくなった。
二人の期待に応えるためにも……そして、俺の大切な友達や日和の事を守るためにも……絶対にこの騒動を終わらせる。
「電話、誰からやったん?」
「日和のお母さんからだった。途中でお父さんに代わったんだけど……まあそれはいいか。あのSNSに書き込んだやつの正体がわかったみたいだ」
「はやっ!? どうやったんや!?」
うん、驚く気持ちはよくわかる。伝えたのが今日の朝だったから、最低でも一ヶ月くらいはかかるんじゃないかって思ってたくらいだし……。
「神宮寺さんの家って、なんか危ない事でもしとるんか……?」
「流石にそれはないと思うが……大人って怖いな」
「ま、まあ早くわかるに越したことはあらへんな! それで……やっぱり鬼塚やったんか?」
「みたいだ。これで証拠はだいぶ揃った……そろそろこっちから攻める時だと思う」
「せやな。とりあえず戻ってこの事を咲達に伝えよか」
「そうだな」
猿石君の言葉に素直に頷いた俺は、女子三人が待つ教室へと向かって歩き出すのだった――
****
「——とまあ、これが昼休みにあった事だ」
教室に戻ってきた俺は、何があったか知らない女子三人に、犯人との会話の内容や、流華さん達の話を伝えていた。
「これで黒幕がわかったわけだし、さっさと鬼塚って女の所に行ってやめさせようよ! ふんすふんすっ!」
「そうだな、もう昼休みの時間が無いから、今日の放課後に話をしに行こう。あとふんすふんすが出てるぞ」
やや興奮気味に拳をブンブンと振る山吹さんをなだめながら、俺は苦笑いをした。
なるべく早くに鬼塚の所に行くの自体は俺も賛成だ。このままダラダラしていれば、更に酷い事をしてきてもおかしくないだろうしな……。
それに、誠司さんには悪いけど……学校が動いてくれるとはやっぱり思えないしな。
「大丈夫かな……ちょっぴり不安」
「日和?」
「だって、こんな酷い事をしてくる人が、そんな素直に認めて謝るかな」
日和は自分の髪の毛を指でクルクルとさせながら、ぽつりと呟いた。
不安になる気持ちは正直わかる。鬼塚はいまいち掴み所がない女っていうか、いつもニコニコしながら俺をいじめてきていて……なんていうか、狂気っていうのか? そんな危ない感じはする。
「認めないなら、あたしが蹴り飛ばすから!」
「そ、そんなのダメ」
「冗談だってば~!」
「ゴリラ女が言うとガチに聞こえるからやめとき」
「あぁ? 今すぐ謝れば許すけど?」
「すんませんした」
謝るなら最初から言わなければいいのに……あとごめん、俺も出雲さんが言うと冗談に聞こえない。
「なんにせよ、放課後が勝負やな」
「だな……あ、ごめん。そろそろ昼休みも終わるし、ちょっとトイレに行ってくる」
俺は教室を後にしてトイレに行くと、清掃中の看板が置いてあって入ることが出来なかった。
マジかよ、一々別の階に行くの面倒だな……上級生が使ってるトイレとか、気まずくて使いたくないんだよな。
「あ、すみませんまだ掃除って時間かかりますか?」
「すみませんね~もう終わったのでどうぞ~」
「あ、どうも」
トイレの中から、声と共に清掃員のお爺さんが頼りない足取りで出てくると、掃除用具を持って去っていった。
あんな歳になってもちゃんと仕事してて凄いな……そんな事を思いながら、ピカピカになったトイレへと入っていくのだった。
****
「さて、行くか」
帰りのホームルームが終わり、クラスメイト達がそれぞれ帰り支度をする中、俺はみんなと一緒に教室を出て鬼塚が所属するクラスへと足を運ぶ。
どうやらこっちのクラスも丁度ホームルームが終わったみたいだな……鬼塚は……あれ、いないな。もう帰ってしまったのか?
「ちょっといいか」
「な、なにかしら?」
「鬼塚はもう帰ったのか?」
「鬼塚さん? ついさっき帰ったよ」
俺は近くにいた女子生徒に声をかけて鬼塚の行方を尋ねた。
ついさっきなら、急げば間に合うだろう……さっさとみんなに伝えて昇降口へと向かおう。
「ついさっき帰ったみたいだ。すぐに行けばたぶん追いつけると思う」
「じゃあさっさと行こか!」
猿石君の言葉を合図にするように、俺達は一斉に昇降口に向かって走りだす。
間に合うと良いんだが……そんな俺の願いを叶えてくれたのか、昇降口を出てすぐの所でスマホを触っている鬼塚を見つけることが出来た。
「おい」
「あら、ヒーロー君? あなたから話しかけてくるなんて……しかもお友達まで連れて。どういう風の吹き回しかしら」
「話がある」
「お話? ふふっ……なにかしら? 凄く楽しいお話だと嬉しいのだけれど」
くそっ、飄々《ひょうひょう》とした態度を取りやがって……いやダメだ、冷静になるんだ俺。これでこいつのペースに乗ったら負けだ。
「いいからついて来い」
「はいはい、わかったわ。それじゃ人気のない所に行きましょうか」
余裕たっぷりな態度を崩す気配のない鬼塚は、ゆったりとした動きで歩き出す。それについていくと、そこは学校のはずれにある古びた体育倉庫の裏だった。
ここは大きくて新しい体育倉庫が出来てから使われなくなり、そのまま放置されているって聞いた事がある。確かにここなら誰かに邪魔される心配はなさそうだ。
「それで、お話ってなにかしら?」
「……単刀直入に聞く。これまでの日和やみんなへの嫌がらせのすべての元凶……それはお前だな」
ここまで読んでいただきありがとうございました。次のお話は金曜日の朝に投稿予定です。
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