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第75話 私のせいで

 週明けの月曜日——俺は花園の現場を見つけた時と同じくらいの時間に学校に着くために、いつも起きる時間より早くに起きて学校に向かっていた。


 早起きした理由だけど、日和の家から帰る時に流華さんから譲り受けた、小型のカメラを設置するためだ。


 話が出てから一日で用意してくれるのは流石というか……感謝しかない。これで現場を押さえるが出来ればいいんだけど……。


「はふっ……」

「眠そうだな」

「うんっ……まだ眠い……」


 俺の隣を歩く日和は、小さく欠伸をしながら答える。眠くても俺の手を離さないのが、凄く可愛い。


「日和が寝不足なんて珍しいな」

「うん……不安で眠れなくて。またみんなが酷い事をされたり、言われたりするかもって思うと……」

「日和……」


 不安そうに顔を俯かせながら声を震わせる日和を安心させるために、俺は繋いでいた手を離して、日和の肩を抱き寄せた。


「絶対に大丈夫だ。絶対にこんな事は終わらせて、みんなでまた平和な学校生活を送ろうな」

「うん……」


 俺の言葉を噛みしめるように、日和は目を瞑りながら俺の肩に頭を乗せる。


 日和をこんなに追い詰めて、俺の友達の悪口を言った犯人め……ホントに鬼塚なのか、それとも全く別の第三者なのかは知らないが、誰であろうと絶対に許すつもりはない。


 その後、日和と話しながら歩いていると、いつの間にか学校に到着した俺達。教室に入ると、そこには全く想定していなかった光景が広がっていた。


 教室には俺の友達三人が先に来ていたんだが、何故か猿石君の顔に大きなガーゼみたいなのがついている。そして、何故か出雲さんが怒り狂い、それを山吹さんが必死に抑えていた。


「ど、どうした?」

「桐生君! 一緒に咲ちゃんを止めて!」

「放して! 絶対に許さないんだから! ぶっ殺してやる!!」


 ホントに一体何があったんだ……? この怒り方は普通じゃない。事情を聞きたいけど、その前にまずは出雲さんを落ち着かせないと。


「出雲さん、落ち着くんだ。何があったのかは知らないけど、暴れても事態は好転しないだろ?」

「そ、そうだよ……咲ちゃん、落ち着こう」

「だって! 間猿が!」


 猿石君? って事は……この顔のガーゼが何か関係しているって事なのか?


「ワイは大丈夫や。だから落ち着かんかい」

「落ち着いてなんかいられないよ! 待ち伏せして間猿をボコボコにしたなんて……絶対に許せない!」

「どういう事だ?」

「ワイもよーわからん。昨日こっちに戻ってきて解散した後、夜食を買いにコンビニに行く途中、高校生くらいのヤンキー数人が急に絡んできて、ワイが猿石かって確認しおってきてな……そうだっていったら急にボコられたんや。すぐに逃げたから、軽傷で済んだけどな」


 急に殴られただって? しかも猿石君の名前を知っていた……? どういう事だ? なんにせよ、猿石君のケガがそんなに酷いものじゃないのは幸いだ。


「だからあたしがそいつらをボコボコにし返してやるの! だから放して!」

「だから落ち着かんかい。何処の誰かもわからへんのに、どうやって仕返しをするんや」

「そ、それは……」


 猿石君の言葉で少し落ち着きを取り戻したのか、暴れていた出雲さんは大人しくなった。


 俺としてもそいつらは絶対に許せないし、やり返せるならしてやりたい。でも、ヤンキーってだけの情報じゃ、さすがに何処の誰か判断するのは難しいだろう。


「猿石君、ケガはホントに大丈夫なのか?」

「見た目よりは酷くあらへん。これも日頃から酷い目にあって鍛えられてるおかげかもしれへんな!」


 俺たちに心配をかけない様にしているのか、猿石君は軽口を叩きながら笑ってみせる。


 そんな中、俺の隣にいる日和の方から、嗚咽の様な声が聞こえてきた。


「ご、ごめん……なさい……」

「なんで神宮寺さんが謝るんや?」

「また私のせいだ……私が一緒にいるから……! ごめんなさい……!」


 自分が悪いと決めつけた日和は、大粒の涙を流しながら、その場で膝から崩れ落ちてしまった。


 この状況で、日和が悪いなんて理由は無い。でも、日和は自分のせいでみんなが酷い目に合っていると思い込んでる。


「やっぱり……私はみんなといないほうが……!」

「日和は何も悪くない……だから自分を責めるな」

「ひっぐ……あ……あぁ……!」


 俺達が自分のせいで辛い思いをしてしまう事への悲しみや罪悪感、それでも一人でいたくないという気持ち……きっと色んな感情が日和の中にあるのだろう。それを吐き出すように、日和は俺の胸の中で泣き続けた。


「大丈夫……大丈夫だからな……」


 俺は日和を包むこむように抱きしめながら、今回の事件の黒幕の正体をほぼ確信していた。


 自分からは手を下さず、人を利用し続けるそのやり方……そして言う事を聞いてくれる不良が何人もいる人間なんて、あいつしか……鬼塚美織しかいない。


 だが、まだ確証を得たわけじゃない。ホントは本人に直接問い詰めて吐かせるのが一番なんだろうけど、適当に言い訳をして逃げられてしまうのがオチだろう。


 だから、まずはこの小型のカメラで証拠を確保する事から始めないといけない。


 あくまで冷静に……この胸に燃える怒りを今は抑えるんだ。これを爆発させるのは、黒幕を見つけた時だ。


「日和ちゃん、ごめんね……日和ちゃんだって辛いのに、あたしだけ一人で勝手に怒って……」

「ぐすっ……咲ちゃん……ごめんなさい……」


 俺と一緒に出雲さんも日和を慰めてくれているが、日和は一向に元気になる気配は無い。


 やっぱり早く黒幕を見つけて止めさせないと、このままだと日和がホントに潰されてしまう。


「ウチ、絶対に許せないよ! 早く犯人を捕まえよう!」

「ああ。そのためにも、このカメラを早く設置して動作テストをしよう」


 俺は日和が落ち着いたタイミングで、俺達は各自で自分の机にカメラを設置してから、下駄箱へと移動してカメラを設置する。


 このカメラ……受け取った時は、指先ぐらいの大きさしか無くてビックリした。俺の知っている奴だと、カメラといったら運動会とかで親がつかってるような、手で持つやつだったからな……。


 えっと、流華さんの話だと、カメラに映ったものをスマホでリアルタイムで見ることが出来るそうだが……ちょっと見てみるか。


「おお、ちゃんと映ってるな」


 試しに俺の下駄箱の中の映像を見てみると、そこには下駄箱を外から中を見ているような映像を見ることが出来た。これはカメラを下駄箱の横開きである蓋に貼りつけているからだ。


「センサーの方はっと……」


 俺はアプリを操作してセンサーをオンにしてから、下駄箱の蓋を動かしてみると、スマホからピコピコと音が鳴った。


 仕組みはよくわからないけど、オンにしていると事前に映していた映像から動きがあった時に伝えてくれる……らしい。


 このカメラがどういう意図で開発されたのかはわからないけど、何かあったらすぐに伝えてくれるのはありがたい。


「みんな、終わったか?」


 一緒に下駄箱に来たみんなに確認をすると、首を縦に振ったり親指を立てて見せたりと、反応は様々だったが、全員が肯定の意を示してくれた。


 さて、上手く罠にはまってくれればいいけど……俺は若干の不安を覚えながら、再び教室へと向けて歩き出した。

ここまで読んでいただきありがとうございました。次のお話は日曜日のお昼頃に投稿予定です。


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