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第64話 間違いは誰にでもある

「なんだこれ……」


 手紙に書かれていた予想外の内容に、俺達は思わず言葉を失ってしまった。


 万引きって……一体どういう事なんだ? 悪質な悪口か? それとも……事実なんだろうか?


「私と縁を切れって……私のせいで……綾香ちゃんが……ごめんなさい……!」

「日和は悪くないから大丈夫だ。山吹さん、これは事実なのか?」

「その……」


 自分を責める日和を元気づけるために、手を強く握りながら山吹さんに問いかけると、気まずそうに目を逸らされてしまった。


「大丈夫。あたし達は綾香ちゃんを嫌ったりしない。だから、正直に話して欲しいな」

「ううっ……ごめ、ごめんなさい……!」


 出雲さんは、まるで母親の様に優しい声で山吹さんを抱きしめると、山吹さんは子供の様に泣きじゃくり始める。すると、日和も山吹さんの手を取って慰めた。


「よしよし……綾香ちゃん、大丈夫だからね」

「うんっ……うんっ……」


 出雲さんの慰めのおかげで、すぐに落ち着きを取り戻した山吹さんは、真っ赤にした目を擦りながらゆっくりと話し始めた。


「その……ウチ、中学生の時に……どうしても欲しい漫画があって……でもお小遣いが無かったから……万引きしちゃったの。すぐに見つかって……本屋の店長さんは許してくれたけど……学校と親にも知られちゃって、大事になっちゃったの……」

「そうだったんだな」

「ちゃんと反省してるんやろ?」

「うん。最低な事をしたと思ってる……幻滅したよね」


 確かに万引きは最低な事だろう。絶対にやってはいけない事だ……それは山吹さんもわかっているからこそ、こうして俺達に嫌われると思って怯えているんだろう。


 でも……。


「いけない事をして、反省して、相手もそれで許してくれた。それならいいんじゃないかって俺は思う。生きてれば誰でも間違いの一つや二つするものだろ」

「え……桐生君……?」


 俺の言葉が信じられないのか、山吹さんは目を大きく見開かせながら、俺の事をジッと見つめる。


 俺だってヒーローみたいなバカみたいな生き方をするっていう間違いを犯してるし、細かい間違いだってたくさんしてる


「せやな。これで反省しないでまだやってるならあかんけど、やってないなら問題あらへんな」

「万が一綾香ちゃんが間違った事をしそうになったら、あたしが殴って目を覚まさせてあげるから、心配いらないよ!」

「アホか、華奢な山吹さんがゴリラに殴られたら死んでまうやろ!」

「誰がゴリラだ! もういっぺん言ってみろエロザル!」


 気づいたらいつものコントを繰り広げているのは置いておくとして……言っていること自体はその通りだと思うし、乱暴なやり方だけど、間違っても見捨てないって事だし……やっぱりこの二人はとても良い奴だと思う。


「ううっ……みんなぁ……ありがとう……」


 よほど俺達の言葉が嬉しかったのか、山吹さんはまたしても涙をポロポロと零しながら、何度も感謝の言葉を述べた。


 それにしても……一体誰がこんな事をしたんだ?


「猿石君、ちょっといいか?」

「どないしたん?」


 俺は山吹さんの事を女子二人に任せ、猿石君の隣を陣取って小声で話し始める。


「今回の、猿石君はどう思う?」

「そうやな……どう見ても姫宮さんや花園さんがやったようには思えへんよな」

「だよな」


 猿石君の言う通り、今までの二人は俺をおもちゃにしようとしたり、俺との関係を取り戻すために邪魔になっていた日和をターゲットにしていた……。


 なのに、今回は急に山吹さんをターゲットにしてきたのには違和感がある。山吹さんも大切な友達なのは間違いないが、彼女を追い詰めた所で二人に利益があるとは思えない。


「んー……もしかしたらやけど、脅したっちゅー例の黒幕が、動き出したのかもしれへんな」

「その可能性はあるな……くそっ、一体誰が何の為にこんな事を……」

「ワイや桐生君が知らないだけで、よっぽど神宮寺さんを恨んでる奴がおるんかもしれへんな……」

「日和は恨まれるような事をするとは思えない」

「せやけど、恨まれるのは悪い事をしたからってだけとは限らへんやろ? 桐生君が言ってた、あの動画を拡散した連中も、良い事をしていた神宮寺さんをウザがっておったやないか」


 確かにそうだな……日和は可愛いしいい子だから、見る人間が捻くれていたら鬱陶しく見える可能性もあるな。


「前に言ってた三人のうち、一人だけ残ってる奴はどうなんや?」

「鬼塚か……あいつが日和にそんな事をする理由がわからないんだよな」


 鬼塚と仮定するなら、それこそこんな事をしてきた意味がわからない。あいつは元々俺をいじめてた主犯格なんだし、俺にしてくるのが普通だと思う。


「他に神宮寺さんを恨むような奴はおらへんか?」

「それがいないんだよなぁ」


 俺の知らない所で、日和が何かしている可能性があるんじゃないかって思うかもしれないけど、学校でも家でも基本的にずっと一緒にいるから、その可能性はほとんどゼロだろう。


 もしかしたら、俺が一緒にいられない体育の時間とかに何かしてるのかもだけど……体育の時は出雲さんや山吹さんが一緒にいるって言ってたし、いつもと違う事をしたら、日和ちゃんどうしたの? って聞いてきそうだ。


「なら、脅されたっていう花園さんと姫宮さんに聞いてみるとか?」

「さすがに教えてくれると思えないんだが……」


 花園は俺が日和に騙されてると思ってるから、また仲良くなるから教えてくれって言えば可能性はあるかもだけど、姫宮は完全に俺を恨んでそうだしな……。


 そもそも花園のあの豹変っぷりを見た後だと、素直に話してくれるかも怪しい。


「今は情報が少なすぎて、黒幕の判断が出来ないな」

「せやな……」

「黒幕の正体も気になるけど、今は山吹さんの方が大事だ。山吹さん、脅迫状を見る限りだと、日和から離れないとこの事を周りにバラされるって事だ。もしそれが辛いなら、ほとぼりが収まるまで――」

「ううん。ウチが怖いのは、みんなに嫌われる事だから……他の人に知られてなんか言われても大丈夫!」


 山吹さんの事を案じて離れる事を提案しようと思ったら、山吹さんは両目を拭いながら力強く答える。


 山吹さんは強いな……それなら俺達は、山吹さんに何があっても一緒にいてあげよう。それが友達ってものだろ?

ここまで読んでいただきありがとうございました。次のお話は火曜日の朝に投稿予定です。


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