表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/84

第52話 作戦決行

 翌日の火曜日の早朝、俺はいつものメンバーと共に犯人を捕まえるために、六時半という早い時間に俺の家の前へと集合していた。


 流石にこんなに早い時間だと、六月とはいえ少し冷えるな……。


「はくちゅっ!」

「大丈夫か、日和。寒いなら何か上着を着たほうがいいよ」

「うん。ちょっと戻ってカーディガンを着てくる」


 鼻を少しすすりながら、日和は自分の部屋へと戻っていく。その間に、最後の確認をしておくか。


「今日は朝早くに集まってくれてありがとう。確認だけど、相手がなにかしてくるであろう、日和の下駄箱と机を見張り、犯人が来たら捕まえる……間違いないな?」


 俺はみんなを順番に見ながら言うと、キリッとした顔で頷いてくれた。


「ちょっとウチ思ったんだけど、もしかしたらロッカーにもなにかするかもよ?」

「可能性はあるな……」

「じゃあワイが教室の掃除用具入れに隠れて、神宮寺さんの教室を監視するわ。下駄箱は咲、ロッカーは山吹さんでええな」


 それは全然構わないんだけど……どうしてその配置なんだろうか?


「理由やけど、咲は足が速い。だからもし昇降口で監視してるのがバレて逃げられても、走って追いつける可能性が高い。机の監視やけど、まともに隠れて見れる場所が掃除用具入れくらいしかあらへん。そんな所に女子は入れられへんからワイが入る。そして残ったところに山吹さんにお願いするって感じやな」


 なるほど、割と合理的な理由だな……って思ったけど、掃除用具入れは別に俺でも良いと思うんだけどな。そもそも俺と日和はどこにいれば良いんだ?


「俺と日和は?」

「桐生君は隣の教室で神宮寺さんと待機や。ワイが合図を出すから、その瞬間に教室の入口を押さえる」

「なるほど。わかった」


 猿石君の端的な説明に納得した俺は、眉間に力を入れながら頷く。


 すぐにこうやって配置を考えたり、その理由をわかりやすく説明が出来るあたり、やっぱり猿石君って切れ者なんだなって思える。普段からこうならいいんだけどな。


「じゃあ犯人が来たら、あたしもメッセージで合図をするね!」

「わかった。みんな……よろしく頼む」

「さっさと捕まえていつもの平和な生活を取り戻そな! そして……ワイの大活躍を周りに広めて女子達にモテモテに――ふべらっ!」

「ったくこのエロザルは……」

「あはは……」


 結構張り詰めた空気だったのが、二人のいつものやり取りのおかげで少し緩んだ気がする。


 そうだよな、今から緊張していたら本番の時まで持たないよな。


 その後、カーディガンを羽織った日和と合流してから、俺達は学校に向かって歩き出すのだった。



 ****



「みんな大丈夫かな……」


 俺達が所属する一組の隣の教室である二組で待機をしていると、日和が不安そうに服の裾をギュッとしながら、顔を俯かせていた。


 ちなみに作戦については、来る途中に日和に伝えてある。


 ホントは俺が教室の後ろの入り口、日和に前の入り口を任せて逃げられないようにしたかったけど、相手は日和に悪意を持ってる人間……さすがに一人にするのは危険すぎるから、出雲さんに前の入り口を任せる事にした。


「きっと大丈夫だ。日和も俺から絶対に離れるなよ……相手は何をしてくるかわからないからな」

「うん。頼りにしてる」


 教室に誰もいないのをいい事に、日和は安心したように目を閉じながら、俺の腕に抱きついてきた。


 みんな真面目に見張りをしてるのに、こんな事をしてるのは不謹慎極まりないけど……嬉しいものは嬉しい。


 そんな事を思っていると、二組の教室の入り口からひょっこりと顔を出して覗いている人物が目に入った。


「や、山吹さん? なにしてんだ?」

「はぁ……はぁ……誰もいない教室でイチャイチャ……まさに鉄板のシチュエーション!」


 パシャパシャパシャ――


「写真撮るな! しかも連写じゃねーか! いいから持ち場についてくれ!」

「きゃー♪」


 思わず大声で注意をすると、山吹さんは可愛らしい悲鳴を残して走り去っていった。


 ったく……もっと緊張感を持って欲しいな……それとも、俺が緊張しないように、わざとふざけていたのか?


「山吹さんの恋愛沙汰好きには困ったものだな」

「恋愛系の少女漫画が好きだから、仕方ない」


 前に聞いたんだけど、家にはその類の漫画が大量にあるらしく、漫画専用の倉庫まで完備していると言っていた。


 なんでも、母親が大好きで集めていたらしく、その影響をもろに受けた山吹さんもどんどんと購入しているうえ、二人いるお姉さんも例に漏れず好きなようで、今も増えていってるそうだ。


 好きなものがあるのは良い事だけど……だからといって、身近な俺達の恋愛事情を見て興奮するのはちょっと勘弁してほしいんだよな。


「あっ……ヒデくん、スマホ」

「……来たか」


 俺は日和と一緒にスマホの画面を見ると、そこには俺達五人のグループチャットに、『今犯人っぽい女の子が日和ちゃんの下駄箱を漁ってる!』という出雲さんの書き込みがあった。


 性懲りもなく、三日連続で来るとはいい度胸だな……それほど日和に何か恨みを持っている人物なのだろうか?


「あ、またメッセージ」

「なになに……下駄箱から移動を始めたから後をつける、か」


 さて、犯人は下駄箱だけじゃなくて机にもなにかしに来るのか……くそっ、ここで待ってるだけってのは中々にじれったいな。俺が一人だったら、即犯人の元に走って捕まえてるだろう。


「ヒデくん、きっと上手くいく。だからそんな怖い顔しないで」

「日和……そうだな。みんながいるもんな」

「うん」


 日和のおかげで冷静さを取り戻した俺は、大きく深呼吸をしてから、チャンスをうかがう様にスマホをじっと見つめる。すると、今度は山吹さんからメッセージが飛んできた。


『今女子が一組の教室に入ったよ!』

『ワイも確認した。咲、前の入口を押さえる準備出来とるか?』

『おっけー』


 山吹さんのメッセージに続いて、猿石君と出雲さんのメッセージも飛んできた。


 よし……これでもう逃げられない。今こそ犯人の顔を拝ませてもらうとしよう!


「行こう!」

「うんっ!」


 俺は日和の手を取って勢いよく教室を飛び出すと、教室に入らないで待っていた出雲さんと山吹さんと一緒に中に入る。そこには、一人の女子が目を見開きながらこっちを見ていた。


 その人物は――俺のよく知る人物だった。


「そうか……お前だったんだな。花園」

ここまで読んでいただきありがとうございました。次のお話は火曜日の朝に投稿予定です。


少しでも面白い!と思っていただけましたら、モチベーションに繋がりますので、ぜひ評価、ブクマ、レビューよろしくお願いします。


ブックマークは下側の【ブックマークに追加】から、評価はこのページの下側にある【★★★★★】から出来ますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ