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【健康】チートでダメージ無効の俺、辺境を開拓しながらのんびりスローライフする  作者: 坂東太郎
『第十章 コウタ、また増えた新たな仲間とともに僻地で訓練に励む』

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第三話 コウタ、訓練で戦闘力を高めて森の北側の探索に備える


 コウタとカークがこの世界で目覚めてから八ヶ月弱。

 瘴気渦巻く絶黒の森の中央、精霊樹と小さな湖のほとり。

 五人と一羽が暮らして、ときどきアンデッドの一体が遊びに来る広場で、コウタたちは訓練に励んでいた。


「うおおおおお!」


「そうだコウタさん! 攻撃を恐れるな!」


「コウタ殿の動きが見違えるようではないか」


「指導できる人がいるからな。それに、ここんとこの訓練でようやくスキル【健康】で怪我しないって実感したんじゃねえか?」


「もし初めからこうだったら我は……」


「ははっ、ここにはいなかったかもな!」


「カアッ!」


 広場で戦うコウタを見て、先代剣聖のエヴァンが指導する。

 逸脱賢者のアビーと古代魔法文明の生き残りアンデッド・クルトは観戦しながら会話して、巨人族(ギガント)のディダは静かに見守っている。あとカークも。


 刀身が黒い鹿ツノ剣を持ってコウタが戦っている相手はエヴァン、ではない。


「そうだ! 斬れ味を利用して、素早く広く! 腰なんて入ってない手振りでかまわねえ!」


 コウタが剣を横なぎに振るうと、ガシャガシャと骨が崩れていく。


 相手は、クルトが召喚したダンジョンのモンスター——スケルトンが数体。

 ちなみに、聖霊樹の清浄な魔力に満ちたこの場所では弱体化もしている。実戦であっても訓練に危険はない。

 まして、コウタは怪我も病気もない【健康】を授かっているので。


 スケルトンが持つ錆びた剣を気にすることなくコウタが攻撃を続ける。

 コウタの体に剣が、骨の手が当たってもコウタにダメージはない。


 やがて、コウタの前に動くスケルトンはいなくなった。


「……エヴァン、どうかな?」


「これならいいんじゃねえか?」


「やった! これで探索に行ける!」


「カアーッ!」


「おめでとうコータ! いやほんと見違えたぜ!」


「ベルさんが帰ってきたら出発だべな! おらも準備しとくだ!」


「ふむ、では我は守護役を用意しておこう。この付近は清浄だが……周辺を囲うように配置すれば侵入は防げるであろう」


「ありがとう、みんな。クルトもありがとう」


「なに、素材に協力者と、我が研究にも大事な地であるゆえな」


 笑顔で感謝するコウタに、クルトは照れを隠すように頬をかいた。

 骨の体ではなく痩せこけた人間の見た目なので頬はある。霊体の表面らしいが。


「それにしても、モンスターが群れなす場所に行くってのに、コータがこんなに喜ぶなんてなあ」


「はは、たしかに、いままでの俺なら怖がってるだけかも」


「カア?」


「わかる、わかるぞカーク。異世界に来て成長したってことかねえ」


「どうかなあ。けどやっぱり、『健康で穏やかな暮らし』には安全が大事だと思うから」


「カァッ!」


 その通り、とばかりにカークが鳴く。巣の安全性を大事にするのは動物ゆえの習性か。


 ともあれ、コウタが自ら拠点を離れて、植物系モンスターと虫系モンスターがいる森の北側を探索しようとしているのだ。

 元の世界ではブラックからの鬱ニートで、この世界にやってきてからもほぼ拠点にいたコウタからすれば成長である。

 なおコウタは、異世界生活が八ヶ月近くになってもいまだ最初の街にも行っていない。


「みなさーん! ただいまです!」


 と、街まで往復してきた荷運び人(ポーター)のベルが帰ってきた。


 先代剣聖・エヴァンから、戦闘面でのGOは出た。

 死者の王——ワイトキング——にしてダンジョンマスターのクルトが、拠点の防衛を担当すると宣言している。

 ベルが帰ってきたことで、長期探索に必要な荷物も、人員も揃った。


「おかえり、ベル」


「おー、ちょうどいいところに。んじゃこれで出発できんな!」


「なあベルさん! 酒は!? 酒は手に入ったか!?」


「落ち着いてエヴァン。明日から探索なんだし、今日はお酒を控えめにね」


「ふむ。では今夜のうちに防衛の手はずを整えるとしよう」


「コウタさんもアビーさんもベルさんも、おらが守るだ!」


「なあ巨人族(ギガント)の嬢ちゃん、俺ァそこに入ってねえのか?」


「カア。カァー」


 夕食とともに最終確認を行なって。


 明日、コウタたちは絶黒の森の北側、モンスターはびこる地に向けて旅立つようだ。

 植物系モンスターと虫系モンスターの集団に阻まれた地へ、リベンジである。

 コウタが求める、『健康で穏やかな暮らし』のために。



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