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【健康】チートでダメージ無効の俺、辺境を開拓しながらのんびりスローライフする  作者: 坂東太郎
『第十一章 コウタ、開拓や畑仕事を進めて村づくりを続ける』

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第八話 コウタ、広場に戻って仲間と三体のモンスターと模擬戦をはじめる


 コウタとカークがこの世界で目覚めてから九ヶ月。

 スキル【伐採LV.1】を得て喜んでいたコウタだが、木々の伐採はすぐに終わりにした。

 スキルを身につけたことによる変化を観察するため、ではない。

 コウタたちが暮らすクレイドル村に、来客があったのだ。


「北側で何か問題があったのかな?」


「カァ? カァー」


 コウタの質問に、グレイっぽい体色の鹿に乗った幼女がふるふると首を振る。

 見た目は5歳ぐらいの幼女は、すっと前方を指差した。

 ぷくっとした指の先にあるのは精霊樹だ。


「えーっと、遊びに来たってことかな? 精霊樹に挨拶?」


 ふたたびコウタが問いかけると、幼女はコクッと頷いた。

 幼女——ドリアードはれっきとしたモンスターなのに、すっかりコウタと意思疎通できている。さすが【言語理解LV.ex】。


「じゃあ伐採はいったんここまでにして、みんなで広場に行こうか」


 コウタは手にしていた黒い剣を腰の鞘にしまった。

 鹿の背後にいる妖艶な女性がホッとした表情を見せる。


 斬り倒した木はそのままにコウタが歩き出す。

 肩にカークが止まって、ちょっと離れて斜め後ろを鹿&幼女ペアが歩く。

 アラクネは「できればついていきたくないけど仕方ない」とばかりに、鹿の尻尾を掴んで最後尾だ。

 いや。


「アビーはどうする? ここで鑑定魔法の研究を続けてく?」


「そうだなオレはここに一人残って——じゃなくて! ついていくに決まってんだろ! というかボスモンスターが群れで来たのにあっさり受け入れすぎだろコータァ!」


「いやあほら、『いつでも遊びにおいで』って言ったからさ。それにこうやって意思疎通できるし、平気かなあって」


「それは! そうだけども!」


 うがーっと頭を抱えながら、最後尾に逸脱賢者のアビーが続く。

 常識から外れた発想や理論で「逸脱」賢者と呼ばれたのに、クレイドル村周辺の出来事は軽々とアビーの常識を超えていく。

 原因はだいたいコウタである。あとカーク。


 ともあれ。

 二人と一羽は、三体を連れてクレイドル村の中心部に戻った。

 切り株のイスやかまどが並ぶ、精霊樹と小さな湖のほとりの広場へ。




「なんだろ、あれが挨拶、なのかな?」


「さあ、さすがに『逸脱賢者』だからって、精霊樹と植物系モンスターの交流方法なんて知るわけねえからな。クルトはどうだ?」


「我もわからぬ。だが、魔力が流れ込んでいるのは確かであるな。魔力以外も動いているようなのだが……」


「こうして見るとほんとちっこいだな! 強力なモンスターとはとても思えねえだ!」


 コウタが案内した三体のモンスターは、精霊樹に向かってそれぞれ挨拶した。

 ドリアードはぴとっと幹に抱きついて、アラクネは体を丸くして、希望の鹿(ホープネス・ディア)はヒザを折って(こうべ)を垂れる。

 形式はともかく、それぞれ敬意を払っているのは確かなようだ。


「強力なモンスター、か。なあコウタさん、コイツら模擬戦やってくんねえかな?」


「え? そっか、やってくれたら訓練になるかもね」


「おいおいなに言ってんだおっさん、酔っ払ってんのか? ボスモンスターがルールを理解して戦ってくれるわけねえだろ! 殺るか殺られるかしかねえんじゃねえか?」


「カアッ! カァ、カアー」


「ほんと? ありがとうカーク。なんか三体とも乗り気みたい」


「やってくれんのかよ! というか理解できるのかよ! ちゃんと相手を殺したり大ダメージ与えないように——まあ、慣れるまでは相手考えりゃいいか」


「うむ。ではまず我がアンデッドに模擬戦闘の相手を務めさせよう」


「そりゃ過保護だろクルトさん。まずは俺がやる。なぁに、平場で一対一なら負けねえよ」


「エヴァン……最初は俺がやった方がいいんじゃないかな? ほら、俺は【健康】だし」


「コ、コウタさんもみんなもすごいだな……おら、このモンスターたちに勝てる気がしないだ」


荷運び人(ポーター)は戦えませんからね、僕は応援してます! がんばってくださいディダさん、みなさん!」


 乗り気だった三体のモンスターは、最初の相手がコウタだと聞いてすっかり腰が引ける。

 じりじりと後退り、最終的には幼女と女性の上半身にぐいぐい押されて鹿が残った。


「よし、じゃあやろうか!」


「コータ、黒い剣はなしな。あれ使って当てたらスパッと切り落としちまう」


「了解。あれ? けどあの剣は鹿のツノからできてるわけで。希望の鹿(ホープネス・ディア)のツノはそのままでいいの?」


「んー、とりあえずコータとの戦いを見て考えようぜ」


「そっか、俺なら怪我しないしね!」


 余裕である。

 ボスモンスターを相手にしないほど強いわけではなく、女神から【健康】を授かったので。

 鹿の攻撃では傷つかないことはもう何度も証明済みであった。


 コウタが広場の中央に進み出る。

 鹿はすっかり後ろ足体重で、顔を地面に近づけて引きつった表情だ。


「まあ、あの剣じゃなきゃコウタさんの攻撃も効かねえだろうけどな」


「おい、んじゃ勝敗の判定どうすんだおっさん?」


「有効打が入ったか、疲れたらそこまでってことで」


「【健康】なコウタ殿は疲れないのではないか? 時間を決めた方がよいであろうな」


「あー、そうだな。せっかくだし、大丈夫そうならいろんな相手との模擬戦をまわしてえもんな」


「適当だなおっさん! そりゃまあオレもやりたいけども! ダンジョン攻略も北の探索もおいしいところ持ってかれたかんな、『逸脱賢者』の実力を見せてやる!」


「カアッ!」


「おら、強くなりてえだ! みんなを守れるぐらいに!」


「我は見学していよう。自身が戦うよりも、エヴァン殿の義手の出来が気になるゆえ」


「その辺は適当にな! クルトさんにアンデッド出してもらった方が思いっきり殺れるかもしれねえし!」


「うむ」


 アビーたちの呑気な会話の間に、コウタと希望の鹿(ホープネス・ディア)の戦闘ははじまっている。

 鹿の突進も噛みつきも蹴りも、コウタに当たっているのに無傷だ。

 鹿はヤケクソになって捨て身の体当たりをかましても無傷だ。攻略の糸口が見えず半泣きだ。

 一方で、木剣を手にしたコウタの攻撃も効かない。

 ある時はさっと飛び退かれて、ある時はツノで受けられる。訓練の成果で多少はサマになっているが、コウタにはまだ【剣術LV.1】さえついていない。



 コウタとカークがこの世界で目覚めてから九ヶ月。

 モンスターがはびこる絶黒の森で生活してきたが、コウタの剣は強力なモンスターにはまだまだ通用しないようだ。少なくとも、いつもの鹿ツノ剣でなければ。

 もしコウタが【健康】でなければ、コウタの異世界生活はあっさり終わったことだろう。神様様様である。




諸事情によりしばらく更新ペース落ちる&不定期になりそうです。

落ち着いたら戻しますのでご容赦ください!


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― 新着の感想 ―
[一言] 書籍読ませて貰い面白かったので一気読みさせて頂きました。今後も楽しみにさせて頂きます。頑張って下さい。
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