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彼女に好きな人が出来たからと別れたが、どうやらその好きな人は俺の事らしい?  作者: nayaminotake
想いを募らし抑えた想いを解放する者

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第36話 美空の認めし才能

☘優side & 安祐美side & 美空side


「へぇ・・・面白いじゃない私も混ぜて貰おうかしら」


校舎の脇から現れたのは・・・


「美空先輩・・・」「これで役者が揃った訳ね・・・」


美空先輩は腕を組み私らを不敵に見つめる


「先輩私らの話しに混ざるというのは?」「優ちゃん・・無駄よ、あの顔多分先輩も愛と信一君の事は既に知ってるみたい」


「石川さんに・・・え~と・・その顔・・君は愛の妹だね?初めて会うね・・私は美空 雀、まぁ知ってると思うけど一応ね自己紹介だよ」


そう言うと不敵な笑みを消し、軽くウインクをしながら優に自己紹介をする


「いえ、美空先輩の事は良く存じてます、遅くなりました私、水泳部1年の瀬川 優です、仰る通り瀬川 愛の妹です」


雀は優の事を下から上まで品定めする様に見つめると・・・「なるほど・・・」と呟いた


安祐美はそんな雀に先ほど迄の優しい表情から一転冷たい視線で向き直ると


「先輩、先輩も信一君を狙いに来るって事ですか?」


雀は安祐美の鋭い視線を受けても、意に介さない様に優しく微笑むと


「ああ、勿論だ」


「そ、その・・・先輩の噂・・・以前、信ちゃん・・信一君に告白してフラれたって話・・本当なんですか?」


優の失礼な質問にも全く動揺する事無く答える


「ええ、本当よ?」


「そ、その・・・当時絵画コンクールで争っていた、お姉ちゃんの事を貶める為に敢えて信一君に告白したって・・・」


「優ちゃん!!それはっ!!」


安祐美が優の言葉を遮るが、雀は顔色一つ変えずに微笑んだまま目を瞑り首を振る


「そうね・・・・私は周りにどう思われても全然構わないけど、愛の妹の君に誤解されたまま恨まれ続けるのは少し気が重いので話しておこうか・・・」



☘美空side


大和中美術部部室


「凄いじゃないか愛・・最優秀賞だぞ!おめでとう!!」


「そんな・・・先輩こそ知事特別賞なんて凄いです!!」


美術部員や顧問の先生から拍手され私達は絵画の分野で切磋琢磨していた、私の作風は技術に裏付けされ洗練した圧倒的クオリティ


反対に愛の作風は大胆で情熱的、見る人を引き付ける魅力があった、そんなある日私が部活に来ると、愛が荷物を片付けて出て行く所だった


「あ、美空先輩!ご苦労様です!わたしは先に失礼します」


「あ、まってくれ愛」


愛はドアを開けながらキョトんとして此方を振り返る


「また、野球部のマネージャーの手伝いか?確かに君の幼馴染が在籍してるのは知っているが美術部の活動よりも優先する事なのか?」


私は愛の才能を高く評価していて、彼女とより高みで競い合いたいと常々思っていた、だからそんな彼女が美術を疎かにしてまで尽くす、野球と幼馴染が許せなかった・・・


「アハハ・・先輩手厳しいですね・・でも申し訳ありません、信一・・いえ野球部の皆が一生懸命頑張ってる姿を見てると、私なんかでも力になりたいって思うです!」


そう答えた時の愛の表情は幸せそうだった


(何故だ・・・あれほどの才能を磨いてこそ周りも喜ばす事も幸せにする事の出来るだろうに・・野球部のマネージャー足りてない訳ではないだろ?・・・)


この日も愛は「先輩お先です!」と言い残し美術部を後にする・・・私はある人物を呼び出している


【コンコン、失礼します】美術室のドアが開き、高身長で爽やかなイケメンが入ってきた


「ああ、織田君急に呼び出して悪いね、まぁそこに掛けてくれ」


練習前なのか汚れてないユニフォーム姿で恐る恐る座る、信一君と対面ですわりその眼を真っ直ぐに見つめる


「いえ・・それで美空先輩・・お話しとは?」


「ああ、その前に君と瀬川 愛はどういう関係だ?」


「どういう?・・・うーん・・仲の良い幼馴染でしょうか?」


確かに表情にも気配にも揺らぎは無かった・・・そう私は茶道や華道を通じ人の心の変化に機敏になっていた、その私がこの織田君からは純粋な雰囲気しか感じ取れない


「では、恋人とか許嫁とかでは無いだな」


「恋人ぉぉぉ!?許嫁ぇぇぇ!?」


はじめて彼の感情が大きく変わった・・やはり男だ女となれば幼馴染も関係ない性の対象として・・


「いやぁ~確かに小さいときは「結婚しようね!」とか言ってましたけど、いまそんな気持ちはないですよ」


ふむ・・嘘を言ってる様にも思えん・・小細工は抜きでここは正直に話すか


「単刀直入に言おう、愛を野球部のマネージャーとして雑用に使うのは辞めてもらいたい、本来、彼女は美術部員でありそちらで活動するのが筋だろう」


どう反応する、拒絶か承諾かいずれにしろコッチが正論だ意見は押し通す


「はぁ~それって愛が望んでる事なんですか?」


(なんだ?女々しい奴この期に及んで彼女に委ねるのか・・「いや、私は美術部の活動を疎かにだな・・


「疎かにしてますか?愛は毎日部活に顔を出して部内の課題もこなしてる、愛の描いた絵画も評価されて結果も出してる、それでも疎かにしてますか?」


なんだ?この自信と迫力・・この私に対して此処まで反論できるとは・・


「だ、だが愛の負担はどうなんだ?愛は無理しすぎ・・・「だから聞いたんです、愛が美術部に専念したいと言ったのか?と」


コイツの目・・私を見透かす様な・・それいて引き込まれる様な・・いや違う・・この私が圧倒されてる?


「美空先輩、愛は凄い奴なんです美術部も野球部のマネージャー応援もこなしてしまう俺の自慢の幼馴染なんです」


織田君の纏う雰囲気が変わった・・


「あまり愛の事舐めないで下さい、アイツの事は俺が一番良く知ってますアイツの事を馬鹿にする奴は俺が許しません・・お話しが以上であれば部活に戻ります」


私は完全に論破され何も言い返せず唖然としていた、すると何処かで今の話しを聞いていたのか愛が私の元に駆け寄り頭を下げる


「美空先輩、信一が大変失礼な事を!!後でキツク言っておきますので!!」


そう何度も頭を下げ、織田君の後を追いかけて行った、廊下の奥で織田君と言い合いしながら廊下を曲がって行く二人を見ながら私は生まれて初めて自分が負けた事を悟った



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