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転校生の美少女が俺にばかり話しかけてくるのに恋愛的な意図は(多分)ない  作者: 森田季節


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11 転校生と女子グループ

 数日後、沙月がクリーニングに出していたブレザーが戻ってきた。放課後、沙月が渡してきたのだ。



 急にきれいになったブレザーを見ると、親が変に思うおそれがあるので、そのブレザーはすぐ自分の部屋にかけた。



 しばらくはブレザーを着ずに出かけて、途中で着ることにしよう。いい感じにくたびれて、クリーニングに出した感じも消えてくれるだろう。



 なお、俺が沙月にどこか案内するのは、いったん休止となった。

 理由はいくつかあるが、一番デカいのは、沙月が女子グループの一つに顔を出すようになったことだ。



 そのために、俺のほうでも少し根回しをした。



 同じクラスの女子の一人、本郷芹香ほんごうせりかは小中高とずっと同じところに通っている奴だった。

 その芹香を休日に近くの公園まで呼び出した。


 まあ、近くといっても軽く一キロ離れてるから、都会人にとったら隣の駅って感覚かもしれないが……。



 俺たちは人気のない公園のベンチの両側に座った。

 直射日光が当たるから、誰も座らないのだ。そこが狙い目だった。



「滝ノ茶屋さんのことでしょ~? そろそろ言われるってわかってたよ~」

 もう慣れたが、芹香はすごくおっとりしている。

 ほかの奴に話すと半分の時間で済むことが倍かかる。なので、別途に時間を設けたほうが無難だったのだ。


 芹香はいわゆるショートボブという髪型で、ほわほわした性格とはよくマッチしている。全体的に子犬っぽいところがある。



「だってさ~、たーくんって昔からお節介だもんね~」

 この、「たーくん」っていうのは芹香の俺の呼び方だ。小学校の中学年の時は恥ずかしいからやめろと言ったこともあったが、矯正はできなかった。



「お節介かどうかは知らないけど、滝ノ茶屋さんがずっと女子から離れたところにいるっていうのは変だからさ、ゆるくでもいいから受け入れろよ。そりゃ、向こうが一人でいいですって態度ならしょうがないけど、そういうのとも違うと思うし」



 内心、俺は自分のことをお節介だと思っていた。

 もしも、沙月の気持ちを無視して行動してたら、はっきり言って、とんだ暴走野郎だ。善意だったら何でもしていいって考えてるような不気味さがある。



 しかし、俺は沙月に「転校生担当係」の役目を仰せつかった。

 だったら、これぐらいのことは越権行為には当たらないだろう。



 それに沙月が女子グループを無視してるわけでも何でもないことは確実だ。ひとまずの籍として芹香のいるグループに所属させたほうがいいと判断した。



「うんうん、わかるよ、わかるよ~」

 こくこくと芹香は何度もうなずいた。こいつは全体的にリアクションがオーバーなのだ。



「わたしもね~、このままじゃよくないな~って思ってたんだけど~、タイミングがわからなくてね~」



「芹香の行動はだいたい三手ぐらい遅れるからな」



「たーくん、ひどいよ~! 事実無根だよ~!」



「事実はある! お前、八月二十五日に『そろそろ夏休みの宿題をやらなくちゃ』って発言したことあるだろ!」

 芹香のペースに合わせて動くと、何かと手遅れになる。小学校の遠足もなぜか芹香が班長になって、集合時刻に間に合わなくなった。



「そんなことあったっけ~?」



「お前、俺の記憶にあるだけでも、夏休みの宿題が間に合わなかったことが三度はあるのによくすっとぼけられるな」

 まあ、本気で忘れてるのだと思うが、それはそれでどうなんだ。



「うん、滝ノ茶屋さんのことはわたしに任せて~。よきように取り計らうから」



「わかった。ほどほどに任せるから、ほどほどにどうにかしてくれ」



「なんか、たーくんの当たりがきつい」



 芹香が多少不服気味になってきたので、コンビニでアイスをおごったら、すごく機嫌がよくなった。性格があまりにも単純すぎる。



 こいつ、将来、悪い男に騙されそうだな……。幼馴染として、それなりに心配になってきた。親御さん、どうにかしてやってください。









 そんなやりとりがあって、週明けには沙月は芹香のグループと弁当を一緒に食べていた。



 あとはどうとでもなるというか、ここから先は沙月とグループの相性もあるし、なるようになるとしか言えない。



 もし、沙月が一人でいることを選ぶなら、それはそれでいい。だいたい、このクラスの女子に沙月を攻撃できるほどの覚悟がある女子などいないしな。



 俺のクラスにもギャルっぽいキャラの女子はいないわけではない。

 でも、それは袿町の女子がどうにかこうにか努力して作っているギャルっぽさだ。



 もし、沙月に面と向かって、「それ、勘違いしてるよ」とでも言われたら、そいつの作ってきたものは崩壊する恐れがある。



 なので、沙月を敬して遠ざけることはあっても、攻撃することはないと断言できる。





 二日連続で芹香のグループと食事をした沙月から、LINEのメッセージが飛んできた。



===

芹香って子、いい意味ですごく変だね。自分の世界を持ってる。

===


 その表現を自分の部屋で見て、俺は思わず笑った。


===

そうなんだよ。芹香は芹香しか持ってない世界がある。あれ、一種の異能だから。

===


 これで沙月もポジションを確保できただろう。

 それで、沙月が「転校生担当係」の俺から距離をおくとしても、やむをえないし、別に構わない。



 転校してきたという事情があるとはいえ、女子の担当を男子がやるというのは、いびつなところがある。やっぱり女子は女子同士で仲良くしたほうが無難だ。ただでさえ、田舎は男女が並んで帰るだけで目立つしな。



 でも、そのあとに沙月からこんなメッセージが来た。



===

今度の休み、変なところ連れていって。東京になさそうなところなら、ちょっと遠くても可。

===



 ちょっと遠いとしても、たいしていい場所がないんだよな。



 俺はスマホで地図を出して、何かいい場所がないか調べだした。

 休みの日なら、遠出にするか。



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