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【コミカライズ企画進行中】召喚世界のアリス  作者: 天野ハザマ
境界線上のアリス

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ちょっと重い

 拠点に帰ってくると、なんだかドッと疲れが襲ってくる。

 あー……すっごいダルい。なんでこんなにトラブルが重なるのよ。私、なんか悪いことした?


「あら、お帰りなさいアリス。お疲れですわね?」


 居間に居たのはアルヴァではなく、リーゼロッテ。優雅に紅茶なんか飲んでるけど……。


「ただいま。万能薬の解析、終わったの?」


 籠ってたリーゼロッテが此処にいるってことはそうなんでしょうね。凄いじゃない。

 そう思っていると、リーゼロッテが自信に満ちた顔でフッと笑う。

 その表情のまま、カップを置いて立ち上がり……ゆっくりと私に近づいて。

 ラグビーみたいなタックルを仕掛けてくる。


「うわあああああああん! アリス! 何ですのあの薬! どの試薬にも反応しないし魔力を通しても何も起こらないし、いっそ『ただの水です』って言われたほうが納得ですわ! あんなのが本物の万能薬だっていうんなら、私には一生かけても同じ物作れませんわああああ!」

「ごめん、試行錯誤したんだろうなってのは分かるけど、どう苦労したのかの部分は全然分かんない」

「馬鹿ですものね! そこは期待してませんわ!」

「このやろう」


 リーゼロッテを引き剥がすと、また抱き着いてくる。ええい、何なのよもう。


「はー……落ち着きますわ」

「私はぬいぐるみじゃないんだけど」

「そんなの知ってますわ。でも誰かに触れると心安らぐんですのよ」

「ほんと、よく今までいろんな意味で無事だったわよね」


 すごくチョロそう。


「それで、アリスは何処行ってたんですの?」

「んー……デート」

「あ、そういえば!」


 私から離れないままに、リーゼロッテは私を見上げてくる。


「あの男は何だったんですの⁉ ていうかデ、デデデ……」

「デデデのデ?」

「デートってなんですの! あんな、あんな腹黒そうな眼鏡の何処が良いんですの⁉」


 胸倉をつかんで揺さぶってくるリーゼロッテ。うーん、超うざい。

 でも言ったら泣きそうだから言えない。一応友達だしなあ……。


「いや、演技だから。ちょっと頼まれてね」

「演技ィ?」


 何かを考えるような表情になったリーゼロッテだけど、すぐにパッと笑顔になる。

 うーむ、感情の切り替わり早いなあ。


「そうですわよね! 私のアリスがあんなのと付き合うわけありませんものね!」

「重いなあ……どんどん重くなってくるの、そろそろどうにかしない?」

「親友でしょう⁉」

「言い様が親友のそれと違う気がするのよねえ……」


 それとも親友ってこういうのだっけ。よく分かんない。


「そういえばリーゼロッテは呪薬って知ってる?」

「呪薬? 当然知ってますわよ。魔女が製薬を習う際に一番最初に学ぶ禁忌ですもの」

「学ぶって……作り方を?」

「まさか。呪薬の生まれた背景や目的、結果などですわ。アレは教材として最適らしいですわよ」

「うーん。じゃあ呪薬を作ったのって」

「人間の国、ノーグランド帝国の『帝国魔法研究所』ですわ。もっと正確には第一研究室長のエイムンド・マウンバッハ。専門は魔法薬学で代表的な論文は人体改造論。人間の国では焚書処分で名前すら残ってないらしいですわね」

「へー」

「でも魔女学院には書籍が残ってましてよ? あんまり内容がアレなものですから精神汚染の影響がないか何度も精査されたという曰く付きですわね」


 詳しいなあ。名前まで出てきちゃったし、もう魔薬の製造元確定じゃないの。

 なーにやってんだか。人間の国……。


「此処で面白いのが魔人エイムンドというおとぎ話が人間の国にはあるという話で……」

「あ、うんストップ。待って。私の理解量を超える前に待って」

「ほんとに馬鹿ですのねえ……」

「しみじみ言うんじゃないわよ」


 黒い私になれば理解できる気もするけど、そっちで理解しても私に戻ると理解できなくなるしなあ。

 そもそも、さっき……えーと、そう。闇魔法。


「ところで話は変わるんだけど」

「さっきも変わったじゃありませんの。で、なんですの?」


 うん、言いながらも聞いてくれるところはちょっと好き。


「なんか人間の国の文化に詳しそうだけど、闇魔法って……人間の国だとヤバい扱いだったりする?」

「別に人間の国に限りませんわよ。闇魔法にヤバい魔法が多いのは事実ですもの」

「ふーん……」

「アルヴァさんのことですの? 確かにあの方はブラックメイガスですけれど……」


 それもなあ……。なんでロストマジックとかいうものらしい闇魔法をアルヴァが使えるのかとか、感染するみたいに私の中に生まれたブラックアリスのこととか。

 色々気になる事はあるけど……たぶん、考えたところで仕方がないし、分かっても事態の進展には役に立たないって気もする。

 一番重要な部分は、今解決したわけだし。


「じゃあさ。闇魔法使えるって奴……アルヴァ以外で居たら、リーゼロッテはどう思う?」

「うーん……アリス以外なら警戒しますわね」

「その私への無条件の信頼は何なの?」


 重すぎて受け止めるのがそろそろ辛い。


「だって、アリスが闇魔法で私をどうにかする気なら、とっくにどうにかなってますもの」

「あー、そういう扱いなわけね闇魔法」


 なるほどなー。そうなるとシーヴァが私をどう思ってるかについて、ちょっと考えを修正しとかないといけないかも。はー……超めんどい。


あけましておめでとうございます。

新年もよろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[一言] >いっそ『ただの水です』って言われたほうが納得ですわ! 普通に『薬品』じゃないだろうからなぁ…分類的には概念付与なのでは?
[一言] 一読者として、ことしもよろしくおねがいします!
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