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【コミカライズ企画進行中】召喚世界のアリス  作者: 天野ハザマ
混迷世界のアリス

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例の赤いヤツ

 翌日……などということは言わず、それからすぐに出発することになった。来たばっかりだから準備するのもすぐってことなのか、それとも性格なのかは分からないけれど。

 とにかく、あっという間にそれなり以上の規模になった一団は魔国に向けて向かうことになった……のだけれど。なんか辺境伯が文句のありそうな顔をしてたことはさておこう。

 今問題なのは、ウトウトしてた私の向こう側に座っているのがレッドアリスだってことだ。

 気付けば馬車もなんかメルヘンなものに変わってる。外の風景も……違うわねこれ。なんかグルグルキャンディーとか刺さってる。地面は……なにこれ。スポンジケーキ? どういう理屈で沈まず走ってるのかしらね。


「面白いでしょう? 貴方が来るから、頑張ったのだわ」

「……倒さないでいるとこうなるってのはよく分かったわ。分かったけど……」

「なあに?」

「ボロボロね」


 そう、前に会ったときと比べると随分とボロボロだ。まるで激戦の後……みたいな。

 ああ、うん。これ、もしかして。


「確かにボロボロよ。分かっていたつもりで侮っていたということかしら」

「ふーん、やっぱりブラック? あいつ消えたみたいなこと言ってたくせに」

「その通りなのだわ。私が強ければ黒も強くなる。当然の理屈だけれど、当然のことを当然すぎて忘れるのは私も同じということだわ」


 黒といい赤といい、簡単に言えばいいことをポエミーに……その辺どうにかならないのかしらね?


「それで? 最後に私と一戦やらかそうってこと?」

「ええ、その通りなのだわ。でないと、また黒が追いかけてくるのだわ」


 レッドアリスがパチンと指を鳴らすと、馬車が消えて。私とレッドアリスはそれぞれケーキの地面に着地する。その手にはそれぞれ、スペードソードが生まれている。

 互いに、地面を蹴って。剣と剣が、何度もぶつかり合う。ああ……やっぱり、レッドアリスのほうが、力は強い。でも。それは私が負ける理由にはならない。


「え……?」


 受け流しからのカウンター。剣先を滑らせて放つ一撃を、レッドアリスはすんでのところで回避する。チッ、外したかあ。


「……驚いたのだわ。古い私は剣をただ振り回すしか能のない猿だと思っていたのだけれども」

「ナメてんじゃないわよ。最近力任せが多かったけど、本来私はテクニカルなタイプなのよ」


 そう、破滅世界のファンタジアは力任せでクリアできるゲームじゃなかった。ボムは数に限りがあって、使いどころを間違えれば詰む。どれだけ強い武器や防具を手に入れても回復剤が山のようにあっても、VRゲームであるからこそ間合いに音、視界に気を張るだけじゃなくて気配読みまで求められ、武器の振り方をミスれば死への直行便みたいなクソゲーオブクソゲー。カマイタチだから透明なのは当たり前だし風を感じて避けろとかふざけてるわよね。さておいて。


「おかげで色々と自分のやり方を見直す機会になったわ!」

「うっ……!?」


 分かる。ブラックもレッドも、私にはないものを持ってる。でも、私には私にしかないものがある。

 この経験。磨き上げたこの技術だけは、簡単に真似できるものじゃない。だって。


「たとえ貴方たちが私そっくりだろうと、私より強かろうと……そういうのは問題じゃないのよ」

「……何を言ってるか分からないのだわ」

「世界を救ったのは伊達じゃないってことよ!」


 レッドアリスの剣を何度も受け流し、何度も押し込んでいく。

 ギイン、と。大きくぶつかった剣の……その勢いのままに、レッドアリスが背後へと飛ぶ。

 そして……スペードソードを下段に構える。


「……なるほど、認めるのだわ。貴方は強い。私にはないものを持ってるのだわ。でも……私たちの決着は『これ』以外には有り得ない」

「ええ、そうね。ブラックともそうだったもの」


 そう、私たちがアリスである以上は。決着はこの必殺技でしかあり得ない。誰が決めたわけでもないけれど……そういうものだと知っている。


「ジョーカースラッシュ」

「レッドジョーカースラッシュ」


 私の剣が輝いて、レッドアリスの剣が炎を纏って。そうして、2つのスペードソードがぶつかり合う。

 お互いの、必殺の剣。その決着は、一瞬。私の剣が、レッドアリスの剣ごとレッドアリスを切り裂いた。


「……そうね。貴方は浄化するべき対象ではないもの。私の負けなのだわ」

「そう。なんとなく、使い方は分かったような気がするわ」


 レッドアリスの姿を振り返ることはしない。この世界が、崩れていくのが分かるから。


「最後に教えてあげるのだわ」

「そう。何かしらね」

「超人計画。過去にそういうものがあったことは事実なのだろうけど。今同じものがあるからといって、過去のものと同一かは分からないのだわ」

「……別物ってこと?」

「過去が違っていても、同じ結果に辿り着くことはあるのだわ。精々、振り回されないようにするのだわ」


 ……よく分かんないけど。今のをアルヴァに伝えればどうにかなる、のかしらね?

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― 新着の感想 ―
[一言] 意味深発言はすべて頭脳労働に投げるスタイル。ただしい。
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