77 エピローグ 3
「ありすの16歳の誕生日。そこに転移しようと思ったの?」
何の気なしのライトの言葉が、心に刺さる。
私の顔色が優れないのに気付いて、アランが心配そうにのぞき込んだ。
一つため息をつき、続ける。
「私、自分の誕生日に戻れて、有頂天になって家族と笑って話したの。でも、すぐにもう一人の私と遭遇するわけにはいかないと気づいて、あわてて帰ってきた」
「もう一人のありす?」
「そうよ、ガリレの話では私が転移した時に、そこにいたはずの私自身。最悪吸収してしまったか、弾き飛ばして別の並行世界ができたかだって言っていた」
どこかで、あの世界の私がそのままの人生の続きを生きていると信じたい。
そう思うのに、考えれば考えるほど、あの世界の私を自分自身で吸収してしまったのではないかと感じる。
「一番初めに異世界間転移に成功した時こそ、私が二十歳でこちらに落ちてしまった瞬間。この世界に弾き飛ばされた瞬間じゃないかと思うの」
言葉にすると、それは想像から真実に変わった。
今まで、そうじゃないかと思っていたけれど、認めたくなくて、考えないようにしていた。
「同じ空間に、同じ魂が存在してしまった時、弱い方が弾き飛ばされれる。何度も転生した私の魂が、そこにいた私自身の魂を、こちらの世界に弾き飛ばしたんだと思う」
女神でも,神でもなく。
私は私自身で、こちらに落ちてくる原因を作ってしまったのだ。
「そうか、だから卵が先か鶏が先かなんだ」
感心したようにライトが言う。
気の抜けたようなライトのつぶやきは、私を憐れんでも、せめてもいなかった。
「わかった」
にこりとライトが笑った。
「今の話を聞く限り、僕が召喚された瞬間に戻る事ができない場合、何が起こるかわからないから無理という事でしょ。最悪、僕自身もアリスのようにそこにいる僕自身を消してしまうか、どこかの異世界に弾き飛ばすか」
「そうだ」
またしても、アランが答える。
アランの答えに満足したのか、ライトはうんうん、と首を上下に振った。
「僕もアランと同じだ。アリスが僕と僕の召喚されたときに転移するのを試してみるのは反対」
ライトはきっぱりと言った。
あんなに帰りたいと言っていたのに、それがかなうかもしれないのに。
私はライトの迷いのない顔を見た。
「僕も絶対、アリスにはここにいて欲しい」
「ライト………」
「大丈夫、僕は勇者だし。絶対に自分自身で帰る方法を探すよ。それに、ワンチャンアリスみたいに異世界間転移できるようになるかもしれないし」
「それまでここでこき使ってやる」
アランが真面目な顔でライトをからかった。
「ただ、一つお願いがあるんだ」
「お願い?」
「うん、ついででいいんだけど、日本に行くとき、手紙を持って行って欲しい」
「手紙……」
「戻って来ない家族を待つのは辛いから」
ライトはアリシアの事をいっているもしれない。
ごめんね。ライト。
アリシアの事は秘密だ。いつかアリシアを説得するから! それまでは私がお母さんのつもりで頑張るから。
心のなかで決意をして、私はライトと約束した。
「あ、ガリレから通信」
ライトがポケットから通話石を取り出す。
「どうしたの?」
ライトが不思議そうにガリレに聞いている。
いつもは用事があれば直接転移してくるので、滅多に通話石は使わない。
何故か、ライトはガリレのお気に入りなのだ。
どうせ、私と顔を合わせづらいから、ライトに連絡してきたのだろう。
小さい男だ。
「森にまた人間が落ちてきたってアリスに伝えてくれ」
一方的に言うと、直ぐに通信は切れた。
やれやれ、また、お客さんか。
「ねえ、僕も一緒に行っていい?」
ライトは遠慮がちに私とアランを見た。
「アリスを見てるだけだぞ、絶対に余計なことするな」
アランが仕方ないとばかりに、ライトを甘やかす。
「じゃ行こうか」
「ガリレに縛られているかなぁ?」
アランにライトの楽しそうな声が聞こえたのか、苦虫を潰したような顔をしている。
私はアランに軽く手を振り転移した。
さあ、商売といきますか。
読んでいただきありがとうございます。
初めての投稿で、いろいろ至らない点あったと思いますが、最後まで書けたこと本当に皆様に感謝でいっぱいです。それと同時に、毎日最新に追われなくていい安堵と、アリスたちを書かない寂しさとで複雑な気持ちもあります。
取り敢えずは、考えがまとまれば、いくつか番外編書きたいとは思っていますので、見かけたら読んでいただけると嬉しいです。
感想などいただけると嬉しいです。また、ポチッと☆をいただけると励みになります。
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